2008年3月31日月曜日

IP High Court Cancels JPO Decision

IP High Court Cancels JPO Decision: 知財高裁が特許無効審決の取消判決(平成20年3月27日):実質的同一性の判断
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 中小企業庁・中小企業経営革新計画の成果公表(2008-3-31記事)

1.先願発明との実質的同一性の判断
1-1  わが国の特許法は先願主義を採るから、特許出願された発明が、先願の発明と同一であれば特許を受けることができない。この「同一性」には「実質的同一性」を含むから、「実質」の判断いかんによって、特許性の有無が左右される。
1-2  今次知財高裁判決(2008-3-27 平19行ケ10279審決取消請求事件)は、特許庁審判が「実質的同一」と判断して無効審決した特許権について、知財高裁が「実質的同一」および「容易想到性」を否定して、特許庁の特許無効審決を取消した事件である。

1. 今次事件
2-1  今次原告・株式会社・富士トレ-ラ-製作所(訴訟代理人・黒田勇治弁理士)「整畦機」発明について特許出願し、特許庁から特許権の設定登録を受けた(2006-4-28)。
2-2  この特許に対して、今次被告・松山株式会社(訴訟代理人・樺澤 襄弁理士ほか)は特許無効審判を請求し、特許庁は無効審決した(2007-6-19)。
2-3  原告はこの審決の取消を知財高裁に請求し、知財高裁は、原告の請求を認容した(2008-3-27)。

2. 特許庁審決の特許無効判断
3-1 先願発明の記載全体から把握される発明には、その回転整畦体の回転機構や駆動軸の配置構成に関して、先願明細書における実施例、および、周知技術による配置構成を備えるものも含まれるというべきである。
3-2 本件発明も結果として、上記先願発明と実質的に同一であり、先願発明から自明である。

3. 原告の主張
4-1 審決には、本件発明および先願発明の各基本構成の認定に誤りがある。(「両持状態」と「片持状態」とは、基本的に技術的意義を異にするなど)
4-2 審決には、相違点に係る認定判断の誤りがある。審決の認定は、先願発明の範囲を上位概念に置き換えてなされたものである。

4. 被告の反論
5-1 原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
5-2 「両持状態」の構成にするか、「片持状態」の構成にするかは、当業者の技術常識の範囲内において適宜決定される設計事項である。先願発明と本件発明とは技術的意義が異なるという原告の主張は理由がない。

5. 知財高裁の判断
6-1 先願明細書の記載からは、その整畦機に「回転軸の一端側に回転伝達機構を連接し、その回転軸の他端側に回転整畦機を設けるようにした配置構成を備えるもの」が含まれるということはできない。
6-2 本件発明の作用効果には、先願明細書に記載されていないものがある。
6-3 従って、「本件発明は先願発明と実質的に同一である」とした審決の判断は誤りである。

6. SANARI PATENT所見
  実施的同一性の判断については、特許審査基準においても結局、主要判決の例示に依存しており、今後、その判断基準の一層の明確化を判決の集積にまつが、「特許付与の段階」と「審決および知財高裁判決の段階」で、判断がそれぞれ相違する場合が発生することは、特許制度の本来の趣旨に適合するものであることを、SANARI PATENTは従来から指摘している。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
IP High Court、知財高裁、特許庁、審決、特許無効

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2008年3月30日日曜日

Government Headquarters for Ocean Policy

Government Headquarters for Ocean Policy:海洋基本計画(2008-3 内閣総合海洋政策本部)における技術政策
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog 東芝が米国原子力発電所建設を主導(2008-3-28記事)

1. 海洋科学技術研究開発の推進
1-1 海洋基本計画(2008-3 内閣総合海洋政策本部)(内容全体についてか後記)は、海洋科学技術の「基礎研究」について、次のように述べている。(SANARI PATENT要約)
1-1-1 海洋科学技術に関する研究開発は、人文・社会学分野も含め多岐にわたる領域に広がる。従って、様々な課題解決のためこれら研究領域を結集して対応することが重要であると共に、研究者の視点により自由で独創的な発想で行う研究活動を充実することが必要である。
1-1-2 また、海洋調査や諸現象解明に必要な船舶やス-パ-コンピュ-タ等、多額の投資と長期間を要し、利用時間には限度があるという、特殊な研究基盤を必要とする。さらに、長期間にわたる調査研究が必要で、短期間のうちに直接的成果に結びつきにくい性格の研究も多いことを踏まえて、長期的な視点をもって戦略的に推進することが必要である。
1-1-3 未解明領域の多い海洋に関する基礎研究は、真理探究と試行錯誤の蓄積の上に実現される。また、既存の知の枠組とは異なる発見・発明を生み出す革新性を育む姿勢が重要である。特に、大学等の研究者が自らの視点に基づいて行う自由な発想による基礎研究については、多様な研究や時流に流されない普遍的な知の探求を推進すべきである。
1-2 「政策課題対応型研究開発」については次のように述べている。
1-2-1 「地球温暖化に伴う海洋大循環の変化や、海面上昇等が生物資源に与える影響の解明」、「メタンハイドレ-ト、海底熱水鉱床等のエネルギ-・鉱物資源開発」など、わが国において積極的に対応することが必要な政策課題が山積している。
1-2-2 他方、わが国の技術水準が十分でない分野については、政策課題に適切に対応するため、政策課題対応型研究開発を重点的かつ戦略的に推進すべきである。わが国独自の海底探査技術による海洋地球観測探査システムなど、科学技術基本計画に基づき精選された施策が着実に目標を達成することを目指す。

2. 海洋基本法の今後
2-1 海洋基本法が昨年7月20日に施行され、内閣に総合海洋政策本部(SANARI PATENT 注:本部員は各省大臣であるが、参与会議メンバ-として、大学教授のほか、財団法人シップ・アンド・オ-シャン財団の秋山昌広会長が加わっている)が設置されて、今次基本計画の策定に至った。海洋基本法は、「わが国の経済社会の健全な発展および国民生活の安定向上を図ると共に、海洋と人類の共生に貢献することを」を目的としている。これらの目的を達成するためには、先ずわが国が管轄権を行使できる海底において、海洋環境の保全と調和を図りつつ、その円滑かつ持続的な活用を促進することが必要である。
2-2 従って、次の3つの政策目標を設定する。
2-2-1 海洋における全人類的課題への先導的挑戦
2-2-2 豊かな海洋資源や海洋空間の持続可能な利用に向けた基礎づくり
2-2-3 安全・安心な国民生活の実現に向けた海洋分野での貢献

3. SANARI PATENT所見
3-1 領海内を先行する方針で、こらは海底鉱物資源・海底エネルギ-資源の開発技術について定説であるが、例えば、東芝等による日米共同の海底光ファイバ回線建設においては、公海底探査とその利用技術が必要である。
3-2 産学連携について、学のイノベ-ション直結が強調され勝ちであるが、海洋技術は長期基礎研究を重要とすべきことが本計画で強調された。これは大学の研究の独自の領域を示すものであり、産学連携の前提基盤を国策・国費をもって構築すべきことを示唆している。
3-3 上記2-1の財団法人シップ・アンド・オ-シャン財団は1975年に国土交通省所管で設立され、超電導電磁推進船、天然ガス改質船舶用エンジン小型高速艇の減音化、船舶用ディ-ゼル機関の排ガス脱硝装置などを研究開発してきた。
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Ocean、海洋基本法、超電導、脱硝、シップ・アンド・オ-シャン財団

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2008年3月29日土曜日

Making Full Use of Exxon Mobil’s Global Network

Aiming for Profitable Growth: Making Full Use of Exxon Mobil’s Global Network: 東燃ゼネラル石油の今次事業報告
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 数学教科書の検定・脱ゆとり(2008-3-28記事)

1. 東燃ゼネラル石油の事業報告(2007-1-1~12-31)(SANARI PATENT要約)
1-1 基本戦略として、エクソンモ-ビル・グル-プの世界的なネットワ-クを最大限に活用し、世界トップクラスの効率性を追求する。日本の石油製品市場は巨大ではあるものの、需要は成熟している。この状況下で、エクソンモ-ビル・グル-プの一員であることの優位性を最大限に発揮し、収益力を向上する。(SANARI PATENT 注:上記「国内需要成熟に関連して、出光と三井化学はベトナムに石油精製基地を建設する)。
1-2 石油精製・供給部門では、世界に35箇所の製油所を有し、各国の市場と直結しているエクソンモ-ビル・グル-プの供給システムを活用し、東燃ゼネラル石油が提供する高品質石油製品を海外の顧客にタイムリ-に提供すると共に、世界各地の製油所と、精製技術や安全性の情報を交換している。
1-3 国内外の需給環境の変化により、国内販売よりも輸出が高採算な製品もあり、当期のガソリン、ジェット燃料、軽油、A重油の輸出量は前期の2倍になった。

2. 東燃ゼネラル石油の差別化戦略(SANARI PATENT要約)
2-1 セルフサ-ビス・ステ-ションについて、「エクスプレス」ブランドの差別化を図り、その結果、店舗数の23%を占めるセルフサ-ビス・ステ-ションの販売量は、サ-ビス・ステ-ション全販売量の51%に達した。
2-2 また、差別化戦略の一環として、エクソンモビ-ル独自の非接触型料金精算ツ-ル「スピ-ドパス」に続き、業界他社に先駆けて複数のカ-ド会社が展開する電子マネ-非接触型Cクレジット決済サ-ビスにも対応するカ-ド読取機を開発・導入している。

3. 原油の選択(SANARI PATENT要約)
3-1 業界平均では、中東87%、アフリカ7%であるが、東燃ゼネラル石油はより低廉な原油調達を目指して取組み、中東70%、アフリカ4%である。同時に、精製が技術的に難しいため価格が割安になっている原油の処理も積極的に行い、さらに、軽質原油の値上がりが特に大きいことから、原油の重質化も進めている。
3-2 当期に各工場に導入した超低硫黄燃料製造装置は、世界的に需要が増大している低硫黄燃料の効率的な生産を通じて輸出を拡大すると共に、より重質な原油の処理を可能にし、コストの低減にも寄与している。

4. 石油精製と石油化学のシナジ-(SANARI PATENT要約)
4-1 組織の一体運営(SANARI PATENT 注:東燃化学が100%子会社)、原材料の相互融通の効率化など石油・石油化学一体型企業としてのシナジ-効果を最大限に追求している。例えば、基礎石油化学品の原料として、従来の主原料であるナフサ以外にも、石油精製設備で産出される成分を活用し、付加価値を向上している。
4-2 基礎石油化学品分野の市況好調に加えて、リチウムイオン電池向けバッテリ-セパレ-タ(正負両極の分離膜)を始めとする特殊石油化学品分野も拡大した。
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Exxon Mobil、東燃ゼネラル石油、リチウム電池、東燃化学、出光、ベトナム

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2008年3月28日金曜日

Innovation Bridge for Functional Materials

Today, JST(Japan Science and Technology Agency) Innovation Bridge for Functional Materials: 本日、科学技術振興機構が機能性材料先端研究発表会
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ NTTコミュニケ-ションズの日中米間・新光ファイバ計画(2008-3-27記事)

1. 学から産へのシ-ズ発表会(2008-3-28)
1-1  科学技術振興機構が日本化学会と連携して、機能性材料に関する先端研究発表会を開催する。大学等の基礎研究に潜在するシ-ズを企業独自の視点で探索する産学出会いの場を提供するものである。発表は、産学共同研究に意欲的な研究者が、イノベ-ション創出の可能性を秘めた基礎研究について行う。
1-2  本日の発表テ-マから、機能性材料に関する先端研究の動向を見ることができる。
1-2-1 水素キャリア:21世紀のクリ-ン燃料ジメチルエ-テルに関連した触媒・装置開発→ 静岡大学
1-2-2 新しいリン吸着剤の開:再生利用可能なリン吸着剤→ 広島大学
1-2-3 酸化チタンを用いた新しいUV吸収材料:周りの化合物を分解しない新奇な機能性材料の創製→ 兵庫県立大学
1-2-4 光触媒材料の高機能化:使い易くて面白い光触媒材料の開発→ 産業技術総合研究所
1-2-5 ホタル生物発光系を利用した多色発光材料の開発:新規発光材料の創成と多彩な発光色の実現・実用化→ 電気通信大学

2. 第3期科学技術基本計画への対応
2-1 平成18年度から22年度に至る第3期計画は、基本姿勢として「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」および「人材育成と競争的環境の重視、モノから人へ、機関における個人の重視」を掲げている。
2-2 また科学技術の戦略的重点化を志向し、4つの考慮事項として「新興領域・融合領域への対応」、「政策目標との関係の明確化および研究開発目標の設定」、「戦略重点科学技術についての横断的配慮(社会的課題の早期解決、国際的科学技術競争における優位確保、国家的基幹技術)」、「分野別推進戦略の効果的実施・活きた戦略の実現」を掲げている。
2-3 さらに「産学官の持続的・発展的な連携システムの構築」について、本格的な産学官連携深化の観点から大学等のシ-ズを活かした従来型の共同研究や技術移転に加えて、産学官が研究課題の設定段階から対話し、基礎から応用までを見通した共同研究に取組むことを目指している。

3. SANARI PATENT所見
上記2-3の実行として上記1-3の各テ-マは、その実用段階への到達が待望される。すなわち、機能性材料は重点4分野の一環であり、「材料がボトルネックとなっている燃料電池関連材料」、「超電導材料」、「有害物質使用量低減材料」、「希少資源代替材料」、「高効率環境浄化触媒材料」、「光スイッチなどの基幹部材用に革新的な高性能を実現できる材料」等の多岐にわたる機能性材料が理由を付して掲げられている。
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Functional material、JST、ジメチルエ-テル、リン吸着材料、多色発光材料

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2008年3月27日木曜日

Reality of U-Shin Management Principles

Reality of U-Shin Management Principles:グロ-バル自動車電装品・ユ-シンの今次事業報告に見る「選択と集中」
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 穀物需給激動下のバイオエタノ-ル(2008-3-26記事)

1. 自動車電装品・ユ-シンの企業理念
1-1 グロ-バルに事業拡大中のユ-シンの経営理念は、「Through respect and
principles, we are global---Respond to dramatic changes---」と掲げられ、他の企業の企業理念と同様に見事ながら、これだけではその実際は分らない。しかし、SANARI PATENTはユ-シンの今次事業報告に、自動車装備品等グロ-バルサプライヤ-として、企業理念の注目すべき顕現を見て、ここに要約・特記する。
1-2 なお、野村證券・東洋経済の会社四季報によれば、ユ-シン(東証1部)は1936年設立、キ-セットなど自動車電装品が主力で、マツダ増に加えてホンダ、スズキの世界戦略車受注も寄与し、増益。中国など子会社も順調な現状で、ハンガリ-工場を拡張し、マグネシウム鋳造設備を導入する。
RHJ(リップルウッド)(SANARI PATENT 注:Ripplewood Holdings
International。日本長期信用銀行、コロムビア、ソフトバンクテレコム,旭テックなどに関与。New Yorkに本拠を置く投資ファンド運営会社)の出資下にあるが、RHJから社長任命権返還を受け、順次RHJ出資引下げを合意した。

2. ユ-シン今次報告の内容(SANARI PATENT要約)
2-1 昨年後半からの、個人消費に水を差す世界経済の状況のもとで、自動車産業は、日米欧の世界主要市場が成熟し伸び悩んでいるため、アジア新興市場の潜在力に注目している。特に経済具体的急成長しているインド市場では自動車の購買層が拡大し、その獲得に諸国自動車メ―カが鎬を削っている。各社ともインドの人件費低廉と税制面の利点を活用し、インドを輸出拠点として小型車の海外販売を進める。
2-2 ユ-シンは早期にインドでの合弁事業を展開し、スズキほか内外の自動車メ―カから受注しているが、中国・タイなどコスト競争力のある地域からの受注活動を進める。また、マツダ・フォ-ド共同開発のグロ-バルカ-共通化の進展により、フォ-ドブランドのステアリングボディ-の受注が確定し、軽量化による燃費改善で環境に寄与する。
2-3 BRICsにおける自動車需要の拡大により装備品の世界的規模の需要拡大が見込まれるが、自動車メ―カの世界最適調達の動向により厳しい環境である。
2-4 ユ-シンは、RHJの資本参加を受け、企業価値の増大に取組んできた。その施策の一つとしてRHJ傘下の部品製造会社の買収案件の提示を受けたが、買収実施後に予想される投資効果があまり見込まれないこと、また、現時点においてユ-シンにとって重要なことは、M&Aなどによる急激な規模の拡充よりも、本業回帰、現地回帰で生産現場のロスを改善し、効率を高めることに軸足を固めるべきであると判断し、RHJの上記提示を採用しないこととした。

3. SANARI PATENT所見
Detroit News等が、「インドのタタ・モ-タ-ズが、Ford Motor傘下のブランド買収の合意に達した旨を報ずる(2008-3-25)など、自動車生産のグロ-バルな企業系列が変動しつつあり、「世界最適調達」(上記2-3)の在り方も変動する情勢下、ユ-シンの国際競争力発揮を期待する。
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U-Shin、BRICs、RHJ、インド、ハンガリ-、自動車電装品

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2008年3月26日水曜日

METI Committee on Information Service

METI Committee on Information Service:産構審情報サ-ビス・ソフトウェア小委員会の4月以降計画
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 技術力と市場力の日米対比(200-3-25記事)

1. 本年度までの検討結果(SANARI PATENT要約)
1-1 情報技術(IT)投資の価値評価について、プライスをベンチマ-クとして示すことは難しい。IT投資価値の指標化に当たっては慎重な検討が必要である。
1-2 IT投資ガイドラインについて、合理化やコストカットのためのベンチマ-クも重要だが、生産性の向上に繋げるためには戦略的意思決定のフェ-ズが重要である。定量的なガイドになじまないのではないか。(SANARI PATENT 注:「定量的ガイド」というのは「定額的価値評価」に等しいと解する。定性的価値評価は可能であっても、「定額的価値評価」にはなじまないという見解は、知的財産全般に共通するが、相対取引やオ-クション的取引など、評価算式を用いない「定額的価値評価」ならば成り立つ)。
1-3 IT業界と建築業界を対比すると、建築業では設計と施工が分離されており、それぞれの事業者の責任による分業体制が確立されている。この点が情報サ-ビス・ソフトウェア業界と根本的に異なる点である。価格についても、建築業界では積算資料を始め多くの刊行物が公開され透明化されており、ユ-ザ-も建築物の価格について一定の相場観を持っている。情報処理・ソフトウェア業界においても、このような取組を開始すべきである。
1-4 ソフトウェアエンジニアリングは国際的にはわが国は弱く、更なる強化が必要である。
1-5 カ-ネギ-メロン大学などにおいては、開発の成果を普及・導入するためのカリキュラムがしっかりと策定されているが、日本の機関にはこれがない。
1-6 電子申請の普及については、内閣のIT戦略本部でも考えるべきことで、継続的な問題提起が必要である。(SANARI PATENT 注:電子納税は計画未達の典型的事例として引用されるが、普及しない理由を具体的に調査検討する能力が内閣本部にも各省のも欠けているようである)。
1-7 SaaS(SANARI PATENT 注:Software as a Service)については、小規模な事業者からイノベ-ションが起こるのではないかと考えられ、コンピュ-タソフトウェア協会においても40社程度が参加して活発に研究している。
1-8 SaaSの普及に当たっては、中小企業のITリテラシ-やビジネスリテラシ-の低さ、経営分析への取組状況などを考えるべきで、単に安ければ使うというものではない。
1-9 SaaSは運用・保守が重要で、例えば、サ-ビス停止の6月前に告知するなどしないと、ユ-ザ-は困る。

2. SANARI PATENT所見
  この小委員会は、情報サ-ビス産業については「ITによる企業等の生産性・信頼性向上の必要性の高まり」、「技術構造変化への対応の遅れ、取引の不透明性による問題の健在化」に対処し、「先導的なIT経営を行うユ-ザ-の出現」、「Webをプラットフォ-ムとした新しいビジネスモデルの出現」等の変革の兆しを支援する政策の在り方を新年度も検討し提言すると期待される。
またソフトウェア産業については、「外国系ベンダによる寡占化」、「輸入超過」、「組込ソフトウェアの重要性の高まり」に対処し、「OSSを始めとするオ-プンイノベ-ションの出現」、「組込ソフトウェアの規模増大とプラットフォ-ム化への動き」等の変革の兆しを支援する政策の在り方を新年度も検討し提言すると期待される。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
SaaS、組込ソフトウェア、ITリテラシ-、IT投資、中小企業

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2008年3月25日火曜日

Economics of Information Technology

Economics of Information Technology:経済産業省産業構造審議会の「情報経済」諸発言
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 日本型イノベ-ション(2008-3-24記事)

  本年初来、標記情報経済分科会の活発な検討が進んでいる。注目すべき発言内容をSANARI PATENTが以下に要約する。

1. 情報システム・製品の「汎用」と「特注」
情報のシステムや製品は、多数人が使うコモディティであるものと、個々のユ-ザ-の特性に応ずる特注のものと、2つに分かれ、戦略も大いに異なる。情報システムは、多数人に使われる中間レベルにおいては共通の標準化が重要で、世界で同じものであるところで世界的にパワ-をもつこと、標準化の取得とか、ナンバ-ワンであるとか、様々なことが重要になる。
個々の様々なアイディアを出していくという部分については、自由に色々な繋がりを創ることが重要である。
わが国の強いところの一つは、特注の分野で、各国の文化に適合するシステムづくりをなすことは、米国等と異なるグロ-バル化の大きな力として永続する。
2. 環境と情報技術の関係
情報技術自体の負荷が消費電力の中で著増していくので、電力消費を節減する必要があるが、同時に、情報技術の効率的な活用によって生産・流通・業務・ 家庭の各分野で社会全体の環境負荷を低減できる。これを加速するためクリ-ンITプロジェクトを検討している。
3. 情報技術の「公的インフラ」性
中小企業が電子納税や財務会計ソフトを簡単に実用できるアプリケ-ションとプラットフォ-ム、課金システム、そのネットワ-ク、これらを含めて公的インフラと位置付けている。
4. 汎用機におけるわが国の優位性
特注の情報技術のみならず汎用のそれについても、外国人の9割は日本をイノベ-ティブと見ている。複合コピ-機、すり合わせ、モジュ-ル化など非常にイノベ-ティブであり、わが国製品に依存している。(SANARI PATENT 注:上記1の観察を疑問とする意見)。
5. サムスンとの対比
標準品をサムスンは製造しているという面があるが、いずれかと言えばサムスンはハイエンド製品に非常に強く、海外では極めて高級品と位置づけられている。日本のメ―カよりも高級品、特注品を製造しているというイメ-ジを持たれている。必ずしも標準品イコ-ル・サムスンということではない。特に中国のケ―タイでは、ハイエンド商品イコ-ル・サムスンということになっており、いずれかと言えば標準品は日本メ―カ、従って、わが国は撤退という事情がある。
  プリンタについては、サムスンはヒュ-レットパッカ-ドに次いで第2位のシェアを持ち、キャノンはシェアで負けている。
6. SANARI PATENT所見
  産業界の要人を集めた審議会であるが、認識の相違もかなり鮮明にされ、その意味で有益な検討内容である。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
サムスン、キャノン、公的インフラ、情報技術、ハイエンド

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2008年3月24日月曜日

Technology Strategy Map by METI

Technology Strategy Map by METI:経済産業省「技術戦略マップ」(2008-3版)の問題点
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 角川クロスメディア事業(2008-3-23記事)

1. 経済産業省産業構造審議会の「技術戦略マップ」(SANARI PATENT要約)
1-1 技術戦略マップは、国家的に重要な産業分野における中核技術のロ-ドマップを俯瞰するもので、各分野の産学官専門家・延べ数百人の英知を集めてロ-リング(逐次改訂)している。技術戦略マップは3つの層、すなわち、「導入シナリオ」、「必要となる技術の俯瞰マップ」、「中核技術のロ-ドマップ」の3層構造をもって成る。産学官が主要分野のイノベ-ション・シナリオを共有し、技術的課題と目標の俯瞰、異分野、異業種の連携を促進する。
1-2 対象技術分野は、次の25分野である。
1-2-1 情報通信の6分野→ 半導体、ストレ-ジ・不揮発メモリ-、コンピュ-タ、ネットワ-ク、ユ-ザビリティ、ソフトウェア
1-2-2 ライフサイエンスの4分野→ 創薬・診断、診断・治療機器、再生医療、癌対策技術
1-2-3 環境・エネルギ-の5分野→ CO2固定化・有効利用、脱フロン、化学物質総合管理、3R、エネルギ-
1-2-4 ナノテクノロジ-・材料の2分野→ ナノテク、部材
1-2-5 ものづくりの8分野→ ロボット、航空機、宇宙、MEMS、グリ-ンバイオ、超電導、人間生活、ファイバ-
1-3 3層構造は次の内容をもつ。
1-3-1 導入シナリオ→ 研究開発の成果が、製品・サ-ビスとして社会・国民に提供されていく道筋と、そのために取組むべき関連施策
1-3-2 技術マップ→ 技術の体系図で、技術的課題、要素技術を俯瞰すると共に、その中で重要技術を選定
1-3-3 技術ロ-ドマップ→ 研究開発への取組による要素技術・求められる機能の向上・進展を時間軸上にマイルスト-ンとして表示

2. 産業構造審議会における論点
2-1 技術戦略マップの分野の整理については、シ-ズ軸とニ―ズ軸の2次元で、俯瞰図として表現することも考えられる。
2-2 分類学ではないので、個々の分野の中味が重要である。サ-ビス工学分野の追加は評価できるが、サ-ビスの分野は将来的には、工学だけではなく製造業のサ-ビス化などへも広く発展する可能性を意識してほしい。
2-3 クリ-ン・サステナブル・ケミストリ-分野や、サステナブル・マニュファクチャリング技術分野は、日本にとって新しい分野であるから、今はカタカナ表記もやむを得ないが、一般人に向けてどのような用語が適切か、吟味を要する。
2-4 生活の質の向上という用語が出てくるが、生活の質についてのイメ-ジづくりをしておかなければならない。
2-5 技術戦略マップは、今のままではカタログである。カタログを踏まえて、政策的にどにょうな方向を目指すのか、考えるべきである。

3. SANARI PATENT所見
技術戦略マップは、経済産業省が構成した技術グル-プの討議の叩き台になっていると共に、業界各分野の議論を促す契機になると考える。しかし、産業構造審議会の内部に、釈然としない発言が多いことの方に、知財専門家として注目すべき要素があると考えられる。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
METI、技術戦略マップ、ストレ-ジ・不揮発メモリ-、再生医療 

ラベル:

2008年3月23日日曜日

Internet Strategy By Clinton & Obama

Internet Strategy By Clinton & Obama:若年層におけるインタ-ネット時間とテレビ時間、そのユ-ザ-主体性格差→ 
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 知財流通市場の活性化(2008-3-22記事) 

1. 米国大統領選におけるインタ-ネット利用
  米国民主党オバマ候補の若年層人気の高揚が報道され、オバマ氏が先ずそのインタ-ネット・ホ―ムペ-ジを魅力的に活発化し、クリントン氏の後発ホ―ムペ-ジのクリック数を遥かに凌駕していること、「Face book」というブログへのオバマ支持投稿が若年層によって激増していることも放映されている。
  若年層、特に学生はテレビ時間よりも遥かに多いインタ-ネット時間を過ごし、更に中高年層にとっても、テレビ画像の受動性に対してブログ投稿の能動的創作参加性は、強い魅力をもつ。
 政治家や企業にとっても、インタ-ネットの活用はテレビ活用よりも遥かに低コストである。
  わが国においても、インタ-ネット特に動画のネット配信が活発化することは必至である。

2. 内閣知財戦略本部の動画ネット配信政策
2-1 内閣知財戦略本部のコンテンツ・日本ブランド専門調査会は、次のように述べている(2008-3-13)。(SANARI PATENT要約)
2-1-1 ネット上で自分が創作したコンテンツを発表したり、他人が創作したコンテンツを閲覧したりすることができる動画投稿サイト等のコンテンツ共有サ-ビスの利用者が急増している。また、このサ-ビスを個人の楽しみの場として利用するだけでなく、宣伝用の動画や放送番組を提供することにより、新たな宣伝や視聴者獲得の方法として商業的に利用する企業が増加している。
2-1-2 一方、投稿コンテンツの中には著作権侵害などの違法コンテンツも含まれ、動画のネット配信による新しいネット市場発展を阻害するおそれもある。従って、違法コンテンツを排除し、サ-ビスを通じて得られる利益を権利者に適切に還元する環境を整備して、新サ-ビスを展開する事業者を萎縮させないことが重要である。
2-1-3 特に、技術革新やブロ-ドバンド化の進展により、大容量・高画質の送信が可能となり、パソコン主体であったネットワ-ク経由の動画配信が、テテレビやケ―タイに拡大している。テレビ、パソコン、ケ―タイで総合的にサ-ビスを展開することは、消費者にとってそれぞれのメリットを活かしたサ-ビスの選択が可能となり、動画コンテンツの市場を急速に拡大する可能性を秘めている。

3. SANARI PATENT所見
  テレビ、パソコン、ケ―タイの総合的動画配信による消費者利便が上記に強調されているが、企業発信動画の消費者受信に対して、消費者発信の動画についてテレビの即応は容易であるのか、また、発信企業のコスト比較はどのように見られるか、内閣知財戦略本部」の計画にも示されることを望む。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Clinton、Obama、動画配信、Face Book、ブログ

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2008年3月22日土曜日

IP Strategies of Japanese Enterprises

IP Strategies of Japanese Enterprises:企業知財戦略の日米対比と今後の方向性
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 米国におけるオ-プンイノベ-ション(2008-3-21記事)

  先ず内閣知財戦略本部資料(2008-3-13)の標題に関する記述を要約する。
1. 日米対比
わが国においては、業種・企業間で差はあるものの、米国に比べて、オ-プンイノベ-ションに対する企業の取組とその社会的基盤が不十分であり、経済社会全体のオ-プンイノベ-ションによる好循環が実現していない。
2. わが国企業の自社開発志向
わが国企業は全般的には「ものづくり精神や自社開発志向が強く、必要な技術は基本的に内部リソ-スを用いて開発する戦略に重点を置き、外部リソ-ス活用ン必要性を感じつつも経営戦略の流出を懸念して、自らのニ―ズを外部に提示すること自体を躊躇する。
3. 研究費の社内外配分
総研究費のうち社外支出割合は1割程度にとどまり、外部リソ-スの活用に積極的でない。また、取得した特許は自社事業の実施やクロスライセンスする以外は未利用特許として保有され、その割合は5割を超えている。(SANARI PATENT 注:現在特許期間中の特許権総数に占める未利用特許の総数を引用している。真の防衛特許や待機特許もあるから、必ずしも的確な割合ではない)
4. クロ-ズドモデルの知財戦略
既に有する市場支配力や技術の優位を維持・強化すべく、基本的に自社単独で市場で優位となる新製品を開発し、競争力ある事業展開を続ける戦略である。例えば、事業防衛や、将来のクロスライセンス交渉に備えてバ-ゲニングパワ-を確保したり、他社参入阻止のため知財ポ-トフオ-リオ形成用の知財権を取得する戦略である。
5. オ-プンモデルの知財戦略
有力競争者への対応、投資規模拡大によるリスク軽減等のため、外部リソ-スの活用、戦略的提携の形成、仲介事業者への売却や技術移転による事業資金確保により社内外のリソ-スを最大限に活用し、収益を最大化する戦略である。例えば、
5-1 内外のベンチャ-、異業種企業、大学等との共同研究、ライセンス取得、M&Aなどにより、知財創造の所要時間と資金を節減する。
5-2 事業化を他社に委ね、投資資金を回収する。
5-3 異業種の企業にライセンスアウトする。
5-4 相互接続性が必要な分野において、新分野開拓や新市場創出のため、知財権を戦略的に提供し、デファクト標準化を指向する。
5-5 中核的技術と周辺技術に対するパテントポリシ-を使い分ける。すなわち、自社の営業力のみでは市場の拡大が困難な場合、市場参入に必要な周辺技術については無償で開放し、他社の営業力も活用して市場を拡大するが、差別化技術である中核的技術は独占して収益を最大化する。
5-6 複数製品の併用により機能する製品について、一方を低廉なライセンス料により市場拡大し、他方は高額ライセンス料により収益を最大化する。(SANARI PATENT 注:デジタルプリント機器メ―カが、プリント機器本体については包括クロスライセンス契約により市場拡大、かつ低価格販売し、インクカ-トリッジについては特許権・ノウハウを独占実施して収益を最大化するのも類似例である)。
5-7 自社知財を実施化し、優位を確保した後、ライセンス供与を開始し、自社知財の迂回技術を開発する他社を牽制する。

6. SANARI PATENT所見
いわゆる多国籍企業は、世界200国の大多数のGNPを上まわる生産・販売額を有するものが多い。これらがクロ-ズドおよびオ-プンの両戦略を駆使してグロ-バルに企業グル-プを拡大し、国際標準化のデファクト形成など、国単位の知財政策を超える支配力を構築してゆくことが想定される。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
IP Strategies、オ-プンイノベ-ション、デファクト標準化、多国籍企業

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2008年3月21日金曜日

IP Strategy for Open Innovation

IP Strategy for Open Innovation:「オ-プンイノベ-ションに対応した知財戦略」内閣知財戦略本部資料(2008-3-13)の考察
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 知財侵害物品税関差止め件数の増勢 (2008-3-20記事)

  平成20年度内閣知財計画の策定に向けて、内閣知財戦略本部・知的財産による競争力強化専門調査会」標記報告がなされたので、その内容(SANARI PATENT要約)を考察する。

1.オ-プンイノベ-ションについての考え方
1-1 報告
いま世界経済は激動し、技術革新はいっそう高速化して、新ビジネスモデル構築の企業間競争を熾烈にしている。新技術開発や新事業創出には市場ニ―ズの変化を機敏に捉え、イノベ-ションを効率的に進めなければならない。このためには内部リソ-スのみならず外部リソ-スをも積極的に活用することが適切である。
1-2 SANARI PATENT考察
「外部リソ-スの活用」は従来、ライセンシ-契約、包括クロスライセンス契約、パテントプ-ル、M&Aなど、多様な形態でなされてきた。従って、今後の「新たなオ-プンイノベ-ション」の在り方が課題である。

2.オ-プンイノベ-ションと知財戦略の関係
2-1 報告
オ-プンイノベ-ションの考え方を採る場合は、知財戦略においても、知財を自己事業の「守り」に活用するクロ-ズドモデルの知財戦略に加えて、知財を外部との積極的なやりとりで「攻め」に活用するオ-プンモデルの知財戦略を採ることが必要である。しかし、この場合、他社と差別化する独自技術については、知的財産権を先ず獲得し独占実施による防護壁の構築が重要である。すなわち、クロ-ズドとオ-プンの適切かつ応変的な組合せによる高度な知財戦略が重要である。
2-2 SANARI PATENT考察
知財戦略については、一方において「国際標準化戦略」が強調されるが、デファクト国際標準化によってデジュ-ル国際標準化を取得するためには、企業グル-プの構築によってグル-プ内のオ-プンイノベ-ションを達成し、グロ-バルな市場占有を取得することが必要である。複数グル-プによって複数国際標準化がなされる場合(ITUのファミリ-コンセプトなど)もあるが、このような場合に各グル-プのクロ-ズドイノベ-ションが、差別化をもって作用し、世界市場の占有度を競うこととなる。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Open Innovation、IP Strategy、国際標準化、知財戦略、内閣知財戦略本部

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2008年3月20日木曜日

President of TAKEDA Medicine Mr.K.Hasegawa

President of TAKEDA Medicine Mr.K.Hasegawa Comments on Patent Policy:内閣知財戦略本部にて同本部員・武田薬品・長谷川社長意見(2008-3-13)
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://sanaripatent.blogspot.com/ 内閣知財戦略本部が意見公募(2008-3-19)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 東芝・岡村会長のコンテンツ政策意見(2008-3-19)

平成20年度内閣知財計画の策定が進捗しているが、従来の年次計画と異なり、事業分野別の知的財産政策の在り方を示す内容となる。平成18年度まで内閣知財戦略本部のメンバ-に、医学者はいたが、業界は電子機器分野に偏していた。平成19年度から始めて、薬品製造業界の長谷川閑史社長が本部員に加わったが、特許政策について電気通信機器業界と医薬品業界の立場の相違が日米ともに顕著な面があり、長谷川本部員の発言が注目されてきた。以下これを考察する。

1. 問題の背景
1-1 武田薬品工業長谷川社長意見(SANARI PATENT要約:以下同)
技術創造立国実現のためには、世界に誇る新技術を次々に創出し、実用化することが必須である。京都大学・山中伸弥享受のiPS細胞(SANARI PATENT 注:Induced Pluri-potent Stem Cell:人工多能性幹細胞:マスコミでは「万能細胞」と呼んでいるが、京都大学では「多能」である )は、世界に誇る最先端技術で、実用化研究がスタ-トした段階にあるが、既に米国では日本以上に強力なパワ-で取組んでいる。今後は実用化研究が重要である制度が、それにも増してこれをサポ-トする知財戦略等の環境整備も併せて、国際競争上、重要な課題である。
1-2 SANARI PATENT考察
ヒト胚幹細胞以外の幹細胞については、ヒト幹細胞を含めて、わが国においても臨床医療に用いられている。医療行為そのものの発明に特許を付与することについて、3-2に述べたように、付与する場合には他の分野と全く異質な独占権制約(差止請求権排除など)を米国では課している。
  特許制度全般について、日米欧の制度調和が協議されているが、健康保険制度の相違を含めて、医療関係の特許制度調和を優先課題とすることが、特許庁のいわゆる「南北問題」の見地からも重要である。

2. 産学連携
2-1 武田薬品長谷川社長意見
米国では、大学が画期的な発明や基礎研究を行い、シ-ズを産業化に繋げる社会の仕組みが確立している。例えば、RNA干渉(SANARI PATENT 注:Ribonucleic Acid Interference 任意の遺伝子の発現を抑制するなどの方法として用いられ得る)の基幹技術(2006年ノ-ベル賞受賞)の産学連携では、RNAi分野のパイオニアである大学や研究機関が起点となり、ベンチャ-を介してトランスレ-ショナルに産業に結びつけるプロイノベ-ション体制が構築されている。
2-2 SANARI PATENT考察
産学連携をTLO体制のもとでの連携に限定すると、日米間では極めて大きな規模格差がある。しかし、大学の医薬研究室が企業と直結して特許取得、臨床使用に至っている事例、特に大学教授によって医薬ベンチャ-が設立され、野村證券などの助言で増資資金取得など実行している例も顕著である。米国大学の研究資金調達構造からも考究すべきである。

3. 先端技術の特許保護と資金支援
3-1 武田薬品長谷川社長意見
日本では医療行為に対して特許付与が認められていない。米国では治療法が特許対象になっている。欧州では弾力的運用がなされ、韓国においても広く特許を認める方向に動いている。わが国においても、特にiPS細胞から分化された細胞の使用方法(治療法の発明)等について、早急に米国と同レベルの特許保護を与えるべきである。
iPS細胞の研究成果については、従来の日本型の典型的な知財戦略でなく、米国を考慮した新たなパタ-ンの知財戦略の構築と実践が必要である。
3-2 SANARI PATENT考察
内閣知財戦略本部の発足当初から、医学畑の本部員によって、医療行為全般に特許性を認めるべき旨が強調され、専門調査会も設置されて、暫定的結論が報告された段階にある。わが国の特許法に「医療関連発明」を特許対象外とする規定はなく、「産業上利用可能性」の「産業」非該当認定による画定で特許付与対象を「特許審査基準」の改正によって拡大してきた。一方米国は、医療方法の特許権に対して、特許権の独占力を制約する「差止請求権の排除」などの措置を講じて、医療福祉と両立させている。SANARI PATENTは上記専門調査会の即時再開を、内閣知財戦略本部に要請している。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Stem Cell、iPS、特許審査基準、武田薬品工業、医薬特許、野村證券

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2008年3月19日水曜日

Strategy Headquarters Requests Pubic Comments

The Intellectual Property Strategy Headquarters Requests Pubic Comments for IP Strategic Program 2008:内閣知財戦略本部が2007計画見直意見公募
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ ソニ-の新PCテレビ局2008-4-1発足
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ KDDIと中部電力協力の通信インンフラ構築体制革新強化体制発足(2008-4-1)

1. 毎年度計画の策定時期
1-1 内閣知財戦略本部が、来月3日を提出期限として、「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見(新たに盛り込むべき政策事項)を公募している。2週間後には2008年度が走り出すから、2007計画を今、見直し始めて、5月ごろ新計画を決定するころには、既に2008年度政策予算が実行に移されている。
1-2 従って、意見の内容は次の各項目と解する。
1-2-1 予算の新規または増額計上を要する知財政策事項について、2009年度予算に計上するよう、2008年度(現実的には2008-8末の概算要求提出期限まで)知的財産推進計画に盛り込むべき事項
1-2-2 内閣知財戦略本部・知的財産による競争力強化専門調査会報告「オ-プンイノベ-ション(Open Innovation)に対応した知財戦略の在り方について」(2008-3-13)に提言されていない「オ-プンイノベ-ション」関係事項
1-2-3 内閣知財戦略本部・コンテンツ・日本ブランド専門調査会報告「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」(2008-3-13)に提言されていない「コンテンツ・日本ブランド」関係事項
1-2-4 上記のほか、「新たに盛り込むべき事項」

2. 経済産業省が内閣知財戦略本部に提出した資料(2008-3-13)(SANARI PATENT要約)
2-1 変化に対応したイノベ-ション促進のための知財システムを構築すべきである。
2-2 情報技術の進展によって特許の検索環境は進化つつある。すなわち、「経済のグロ-バル化」と「技術の高度化・複雑化」により、「世界的ま特許権システムの危機」、「技術の高度化・複雑化に伴うオ-プンイノベ-ションの進展」、「特許を巡る企業間競争の激化と不確実性の増大」という背景が強い影響力をもって顕在化つつある。
2-3 上記2-2の「世界的ま特許権システムの危機」は、「世界の特許出願の急増」、「知財をめぐる南北の対立」に顕現している。
2-4 上記2-2の「技術の高度化・複雑化に伴うオ-プンイノベ-ションの進展」
は、「垂直統合型の研究開発体制に加え、オ-プンイノベ-ション体制の出現」、「研究開発の主体の多様化」、「知財の地理的分野横断的広がり」に顕現している。
2-5 上記2-2の「特許を巡る企業間競争の激化と不確実性の増大」は、「不確実性とビジネスリスクの増大」、「知財訴訟コストの高額化」、「パテントトロ-ルによるビジネスリスク」に顕現している。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Open Innovation、内閣知財戦略本部、ブランド、ビジネスリスク、知財訴訟

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2008年3月18日火曜日

Multi Synergy of 21 Brands in NTT Cell phone

Multi Synergy of 21 Brands in NTT Cell phone New Series:ドコモ新ケ―タイに各社トップ21ブランドの融合
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/  マヨネ-ズ・ドレッシングの定義改正・農林水産省案(2008-3-17)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 農産物商品市場の日米格差(2008-3-17)

1.NTTドコモ通信Vol.36
1-1 ケ―タイは、あらゆる種類の知的財産の結晶形で、外貌も麗しく変容するので、新シリ-ズの内容は知財専門家も望む情報である。丁度、ドコモ通信Vol.36が届いた。
1-2 905iと705iの登載機能は、次のように紹介されている。(SANARI PATENT要約)
1-2-1 常用のケ―タイが世界で使える。通話エリアは日本人渡航先の99.8%をカバ-している。
1-2-2 ケ―タイに話しかけると翻訳してくれる「しゃべって翻訳」機能もある。
1-2-3 ワンセグ対応で実況、ニュ-スのテレビ、デ―タ放送を視聴できる。
1-2-4 番組録画ができる。
1-2-5 音楽デ―タや動画のダウンロ-ドが高速である。
1-2-6 GPS機能で現在地情報、目的地に到るル-ト、相手方の人やケ―タイの所在確認ができる。
1-2-7 ケ―タイクレジットに対応している。
1-2-8 災害・避難情報を入手できる。
1-2-9 バイオ認証機能によってセキュリティが確保される。

2.関係各社トップブランドのシナジ-
  上記の機能については、次の各社ブランドが引用されている。
2-1 「BRAVIA」「WALKMAN」→ ソニ-
2-2 「+JOG」→ ソニ-・エリクソン・モバイルコミュニケ-ションズ
2-3 「Dolby」「ドルビ-」「ダブルD」→ 松下電器産業
2-4 「 Cyber-shot」「 Cyber-shotロゴ」→ ソニ-
2-5 「VIERAケ―タイ」→ 松下電器産業
2-6 「アクオス」「AQUOS」「アクオスケ―タイ」「AQUOSケ―タイ」→ シャ-プ
2-7 「My Signal」→ NEC
2-8 「ワンプッシュオ-プン」→ 松下電器産業
2-9 「ウォ-タ-プル-フスリム」→ 富士通
2-10「Shine Phone」→ LG電子
2-11「amadana」「amadanaロゴ」→ リアル・フリ-ト
2-12「Style Up」→ ソニ-・エリクソン・モバイルコミュニケ-ションズ

3.SANARI PATENT所見
  素材のブランドまで注記すれば、その数は機能ブランド数を遥かに上回ると考えられる。ブランドの注記によってブランドのシナジ-効果が高まり、注記された各社にとっても、関連ブランドシナジ-の効果が考えられる。含有諸知的財産を明示してブランド価値を高めることも、知財学会などで提案されている。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Cell phone、NTT、ドコモ、松下電器産業、富士通、LG

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2008年3月17日月曜日

Internet Newspaper by Netizens

Internet Newspaper by Netizens:市民発信インタ-ネット新聞「JanJan」の全国・在外人から中国(簡字)に及ぶ動画等速報の活発な発展
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 経産省・情報第航海情報大航海プロジェクト(2008-3-15)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 新年度予算41億円で次世代情報検索の国産構築(2008-3-16)

1. 次世代ネットワ-ク(NGN)で国民総発信
1-1  コンテンツ創出のコラボレ-ションが、Wikipediaや「電車男」など内外で発祥し、ブログの増殖を経て、NGNの多様かつ高度なメディア開発によって更に急速に活発化しつつある。
1-2  ひところネットワ-ク市民を「Network Citizen」すなわち、Netizenと呼び慣らわしていたが、NGNはグロ-バルに進展するから、グロ-バルネット市民として、「ネチズン」の語を広く常用させたい。

2. 竹内 謙・前鎌倉市長の先見
2-1 すでに5年ほど前、朝日新聞(2003-8-16)紙上に、竹内 謙氏の「視点」が次のように掲載されていた。(SANARI PATENT要約)
2-1-1 市民メディアで、みんなが発信する社会を作ろう。そこで「JanJan」という名前のインタ-ネット新聞をこの2月(2003)に創刊した。この新聞の最大の特徴は、普通の市民が記者になってニュ-スを書くことである。
2-1-2 JanJanは、韓国のインタ-ネット新聞「Oh My News」からヒントを得た。「市民記者が書く」という発想に、私は「これこそ21世紀のメディアだ」と感じた。

3. JanJanの現状
  今、JanJanを開いて見る。(SANARI PATENT要約・考察)
3-1 全国各地の選挙ニュ-スは、メディア間におけるJanJanの特徴で、熊本県議会議員補欠選挙(2008-3-28)の立候補者3名の紹介と、討論会映像が予告されている。全国各地にほとんど間断なく行われている選挙は、地元だけでなく、地元出身者にとって懐かしいニュ-スであり、速報や動画と共に、地元ネチズンから速報・入力され、全国・在外の同郷人によってクリックされるから、ニュ-ス性は抜群である。
3-2 愛知県設楽ダム建設計画の県議会委員会承認(2008-3-14)に対する「ダム建設自己目的化」への反対意見(2006-3-16)も、今朝のJanJanに詳述された。
3-3 トウモロコシ・大豆など、世界的食物争奪戦がマスコミされているが、JanJan読者の山崎パンとイト-ヨ-カ堂インタビュ-のレポ-トも、すぐさま入力・掲載されている。
3-4 日中交流の中国語欄は、速報性と共に、特に注目される。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Internet Newspaper、Netizen、ネチズン、JanJan、NGN、中国

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2008年3月16日日曜日

METI Information Grand Voyage Project

METI Information Grand Voyage Project:平成20年度は「経産省・知的情報アクセス技術=次世代検索・解析システム」開発3年計画の中間年度
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 次世代情報検索・解析システムの国産(2008-3-15)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 三井鉱山国内石炭の新開発(2008-3-15)

1. オ-プンイノベ-ションと検索システム
1-1 「イノベ-ション」が単に(技術革新)と括弧書されてきたために、「オ-プンイノベ-ション」も技術開発の共同化に局限して理解されているが、イノベ-ションは、ライフイノベ-ション、ソ-シャルイノベ-ション、マネジメントイノベ-ションなど、社会・経済・生活の全てにわたって知的財産を共用・開発するオ-プンイノベ-ションを指向することが、グロ-バルな趨勢である。
1-2 このような広汎なオ-プンイノベ-ション推進の基盤として、インタ-ネット検索システムは既に「グロ-バルインフラ」であると、SANARI PATENTは考えるが、Googleなど米国発の検索システム対して、平成19・20・21の3年度にわたる情報大航海プロジェクトを経済産業省が推進中である。
1-3 率直に言って、「情報大航海プロジェクト」という呼称は一般に馴染んでいない。むしろ「経産省・次世代検索・解析システム」と名付ける方が良い。
 少なくとも「大航海」を「大宇宙」と改称すべきである。

2.「経産省・次世代検索・解析システム」プロジェクトの必要性
  情報大航海プロジェクトについて、次のように述べている。(SANARI PATENT要約)
2-1  現在、Web上では、画像・映像を含めた多種多様な情報が急増し、他方では、医療分野、流通分野など、Webに限らないあらゆる分野で、これまで活用されなかった大量の情報が蓄積されたままになっており、これら多種多様性大量の情報を有効に活用するニ―ズが高まっている。
2-2  このプロジェクトは、情報の種類に依らず大量の情報からユ-ザ-が求める情報を的確に検索・解析する共通技術(知的情報アクセス技術)の開発を目的とする。
2-3  このプロジェクトによって、あらゆる情報の活用への途が拓かれ、新たな製品・サ-ビスが創出されれば、わが国産業の競争力が向上するほか、市場規模の拡大、ユ-ザ-の利便性向上、社会的コストの低減など、様々な波及効果が期待される。

2. SANARI PATENT所見
  上記2-3の「競争力」は「国際競争力」であり、「市場規模」の「市場」はグロ-バルマ-ケットであるが、国際競争力と世界市場制覇のための「経産省・次世代検索・解析システム」すなわち、「情報大航海プロジェクト」の開発は、オ-プンイノベ-ションの対象として、グロ-バルにオ-プン開発するのか、明示されていない。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Google、検索、イノベ-ション、オ-プンイノベ-ション、経産省

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2008年3月15日土曜日

Internet Service Providers Agreement on Illegal Copy

Internet Service Providers Agreement on Illegal Copy:「違法コピ-常習者はネット切断:プロバイダ業界が合意」とYOMIURI ONLINE報道
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ クリエイティブオフィス(コクヨ・経済産業省)(2008-3-14)
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ エアテックのエアクリ-ンシステム(改正薬事法対応など)(2008-3-14)

1. インタ-ネットサ-ビスプロバイダの社会経済機能
1-1 ISP、または単にプロバイダと呼ばれているが、その機能なくしては現在のインタ-ネット社会経済も、次世代ネットワ-ク(NGN)も、ほとんど機能できない。「ほとんど」というのは、プロバイダを介さないコンテンツ流通も発達が想定されるからである。
1-2 いずれにせよ本日早朝(2008-3-15:03時01分)のYOMIURI ONLINE「違法コピ-常習者はネット切断:プロバイダ業界が合意」の報道は、極めて大きい反響と波及効果をもつと、SANARI PATENTは考える。
1-3 その理由は次の5点である。
1-3-1 「違法」が「現行著作権法に対する違法」を意味しているが、著作権とデジタルコンテンツの流通権、特許権など他の権利との調整が当面の課題であり、「違法」の構成要件が流動的である。
1-3-2 米国著作権法の「公正な利用」(Fair Use)が、わが国著作権法第1条で認容されているか、不明確のままに経過している。
1-3-3 わが国著作権法の「私的利用に対する著作権制限」の範囲が確立していない。
1-3-4 デジタルコンテンツのグロ-バルな流通において、外国プロバイダの機能との関係が明確でない。
1-3-5 社会悪的なインタ-ネット利用(迷惑メ-ルなどを含む)総体を含めて、プロバイダの社会経済的な責任限界を国民および国際社会が合意すると看做され得ることが必要である。

2. YOMIURI ONLINEの今次報道〔SANARI PATENT要約〕
2-1 インタ-ネット上でファイル交換ソフト「ウィニ-」などを通ずる映像・音楽等の違法コピ-増大対して、国内のプロバイダ4団体が、違法コピ-女囚者について、ネットへの接続を強制的に停止することで合意した。
2-2 この合意については、利用者の排除が「通信の秘密」「通信の自由」に抵触するとして慎重意見が強かったが、著作権団体と連携して悪質な利用者を特定し、その利用者に限れば権利停止・契約解除が可能と判断した。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Internet Service Provider、Illegal Copy、YOMIURI ONLINE、NGN、Fair Use

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2008年3月14日金曜日

Expansion of Self Medicare Medicine Market

Expansion of Self Medicare Medicine Market:来年施行の改正薬事法によるセルフメディケア薬品の市場拡大:エスエス製薬今次事業報告の考察
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 工業高校の人材育成に経産省新規委託事業(2008-3-13)
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 経産省サ-ビス工学研究所4月発足(2008-3-13)

1. 改正薬事法対応
1-1 エスエス製薬の今次事業報告(007-12期)を受信したが、今後の事業展開について次のように述べた項目がある。(SANARI PATENT要約)
「平成21年6月までに施行される予定の薬事法の大幅改正は、特に流通面で大きな変化を引き起こすことが想定される。規制緩和や国民の利便の観点から、一定の許可要件を満たせば一般小売業などの店舗販売業でも、ほとんどのOTC医薬品(SANARI PATENT 注:Over The Counter:現在薬局で販売する一般薬)の販売を可能とする。施行後すぐにダイナミックな変化は起こらないかも知れないが、エスエス製薬としても今後の動向を注意深く見守り、環境変化への対応を検討してゆく。」
1-2 SANARI PATENTが理解するところでは、改正薬事法の医薬品流通面の要点は、次のようになる。
1-2-1 一般医薬品の効能と副作用を評価し、消費者に提供すべき情報に対応する販売資格を定める。
1-2-2 すなわち、その医薬品の効能・効果、副作用、他の医薬品との相互作用などの項目によって、リスクの高低を評価し、薬剤師、登録販売業者の各対応必要性を分画する。従って、コンビニ等で容易に購入できる薬品の範囲が今後の課題となる。
1-2-3 製薬業界の側から見ると、改正薬事法には次のような用語が新設されている。
1-2-3-1 製品(自社ブランド品)の効果・安全性と、製造管理・品質管理体制の「認証」(GMP)
1-2-3-2 輸入する場合の外国製造所の製造管理・品質管理体制の「認定」
1-2-3-3 「製造販売業許可」
1-2-3-4 「品質保証体制」(GQP)、「安全管理体制」(GVP)、「製造管理・品質管理体制」(GMP)

2. 製薬業界の企業類型分化と、エスエス製薬の選択・集中
2-1 エスエス製薬は今次報告で次のように述べている。(SANARI PATENT要約)
2-1-1 Boehringer Ingelheimグル-プと決算期を同一とした。(SANARI PATENT 注:Boehringer Ingelheimは、45国に152の拠点を有する国際製薬企業)
2-1-2 医薬品分野に特化し、「その他部門」を切り離した。
2-1-3 昨年末Boehringer Ingelheimが商品化した去痰成分を新たなスィッチOTC成分(SANARI PATENT 注:医療用のみに使用が認められていた成分のうち、副作用が少なく安全性が高い成分について一般薬への配合を許可した成分)として配合した総合感冒薬を発売した。
2-1-4 研究開発、設備投資、最適ビジネスモデルの構築を進めている。

3. SANARI PATENT所見
  製薬業界の分野特異性が、特許制度の国際調和を契機として明確に認識されつつあるが、製造・流通を含めて、各国の医療保険制度、薬事法の変遷に即応する各企業行動の「選択と集中」が見られる。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Self Medicare、Boehringer Ingelheim、エスエス製薬、改正薬事法、製薬業界

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2008年3月13日木曜日

EPO Raises Patent Fees

EPO Raises Patent Fees:欧州特許庁が4月から特許出願料金を値上げする背景
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 次世代高効率照明 08/3/12
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 電動自動車の電池革新 08/3/12

1. 欧州特許庁の特異状況
1-1 わが国や韓国は特許出願関係料金(手数料と同義)低減の方向にあるが、欧州特許庁は4月1日から請求項料金を始め、特許出願関係の料金全てを約5ないし10%値上げする。
1-2 欧州特許庁の料金を含めて、特許取得に要するコストの増高は欧州諸国の大きな課題となっている。しかし、その緩和策も考究・措置されつつある。
1-3 London Agreement が今年5月1日に発効し。翻訳経費が節減される(2-3参照)。
1-4 英国は、今年2月に始めて、コンピュ-タプログラムの特許性を認めた(審査基準変更通達)。媒体特許とプログラム特許を含むが、日米とテンポが著しく相違している。

2. 前特許技監・小野新次郎弁理士による欧州特許事情の解説(パテントVol61)(SANARI PATENT要約)
2-1 現在欧州で企業が最も懸念している問題は、特許取得に要するコストである。産業界としても非常に懸念している。基盤にある大きな問題としては、EPC(欧州特許条約)の加盟国が急増し、質の維持が困難になってきた。翻訳負担も急増する。(SANARI PATENT 注:昨年11月に、クロアチアが欧州特許条約(EPC)に加盟した)。
2-2 現ドイツ政府は、EPLA(European Patent Litigation Agreement:欧州特許訴訟条約)の実現によってEU内の特許訴訟の一本化を強調している。
2-3 また現ドイツ政府は、London Agreementの実現を強調してかたが、これによって欧州特許条約(EPC)加盟国間は、請求項の翻訳のみで足り、全文翻訳する必要がなくなる。
2-4 従来、欧州では特許取得の初期コストの4割が翻訳費であったが、London
Protocolによれば、欧州特許庁で特許された場合、欧州特許庁の手続言語(英独仏)以外の公用語を使用している指定国においても、全文の翻訳でなく、請求項の翻訳(公用語)で足りるようになった。

3.SANARI PATENT所見
わが国では一般的に、「欧州特許庁は、加盟欧州諸国特許庁の束(たば)である」と解説されてきた。欧州特許庁と各国特許庁とが並存しているので、これらの各特許制度と審査基準、運用を究明しないと、欧州特許の現実を理解できない。
特に現在、世界関心の的である幹細胞関係特許など、生物:医療関係の特許性に関する考え方と制度には、字句のみでは 把握できない三極間相違がある。
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EPO、EPC、欧州特許庁、クロアチア、幹細胞

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2008年3月12日水曜日

UNITIKA Wins TORAY at IP High Court 3/6

UNITIKA Wins TORAY at IP High Court Decision 2008-3-6:東レ特許権「エア-フィルタ-用不織布・エア-フィルタ-装置」の無効訴訟にユニチカ勝訴
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 第3世代太陽電池 (08/3/11)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ マイクロソフトのITインベ支援事業 (08/3/11)

  「発明の詳細な説明」の適否に関する知財高裁の最近の判決を考察する。

1. 知財高裁が東レの請求を棄却(2008-3-6): 審決取消請求18-10448事件判決)
1-1 今次原告東レ(訴訟代理人・岩見知典弁理士ほか)は、「エア-フィルタ-用不織布およびそれを用いてなるエア-フィルタ-装置」の特許権者であるが、今次被告ユニチカ(訴訟代理人・奥村茂樹弁理士)は、東レを被請求人として本件特許をの無効とすることを求めて、特許庁に対し、特許無効審判を請求した(2004-12-2)。
1-2 特許庁は、本件特許の請求項1~7発明についての特許を無効と審決した(2005-9-27)。
1-3 東レは、知財高裁に1-2審決の取消訴訟を提起した(2005-11-1)。
1-4 東レは、1-3の訴訟提起後、90日の記間内に、特許請求の範囲の縮減等を目的とする訂正審判を請求し、知財高裁は、1-3審決を取消す決定をした。
1-5 このため特許庁はさらに審理し、1-2特許は無効と審決した(2006-8-28)。
1-6 東レは、1-5特許無効審決の取消を知財高裁に求めたが、知財高裁は東レの請求を棄却した(2008-43-6)。

2. 特許庁が本件東レ特許権を無効と審決した理由(SANARI PATENT要約)
2-1 本件1-4訂正明細書の「発明の発明の詳細な説明」には、当業者が本件訂正発明を実施できる程度に明確・十分に記載されず、また、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであること、および、特許を受けようとする発明が明確であることに適合しない。
2-2 すなわち、「くぼみ」「うねり」「表面粗さ」「測定方向」「平均値算定方法」などの語義等が明確でない。

3. 東レの主張(SANARI PATENT要約)
3-1 「くぼみ」が、「不織布表面に熱圧着によって部分的に形成されたくぼみ」であることは、明らかである。
3-2 「被測定面において、表面粗さが最も大きく現れる方向に測定すること」は技術常識である。
 (以下略)

4. 知財高裁の判断(SANARI PATENT要約)
4-1 本件訂正発明においては、圧着部の形状、深さとして各種のものを含み、また、圧着部が規則的に配置されるものに限られず、不規則に配置されるものを含むと認められる。
4-2 東レは、エンボス加工によって圧着部の深さが均一であると主張するが、本件訂正発明は、エンボス加工によると限定していない。
(以下略)

5. SANARI PATENT所見
知財高裁は、争点ごとに、「実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとまでは直ちには言えない」、しかし、「別の理由によって、特許を受けようとする発明の詳細な説明を記載したものではないと言わざるを得ない」など、ユニチカおよび東レの主張と、特許庁審決の理由を、工業標準規格等を引用しつつ精査された結果を述べている。「明確な記載」の参考とすべきである。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
東レ、ユニチカ、エア-フィルタ-、不織布、知財高裁

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2008年3月11日火曜日

Harmonization of Patent System

Harmonization of Patent System and Patent Examination:特許制度の調和と特許審査の調和
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ リサ・パ-トナ-ズのファンド事業(2008-3-10)
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 新年度新規予算で経済産業省が中小企業のITシステム構築を支援(2008-3-10)

10.(承前3/10)特許制度の調和と特許審査の調和
10-1 特許庁資料(SANARI PATENT要約)
10-1-1 WIPOとは別に、特許制度調和のための先進国会合が非公式に設立され、協議が進められているが、先進国間でも米欧間では制度の溝が大きい。
10-1-2 また日米欧三極においても実務上の運用調和の取組が進められており、これらの調和の取組は、日米欧三極に中国・韓国を加えた五大特許庁においても議論されている。(SANARI PATENT 注:この記述について注意すべき点が2つある。第1に、「三極の欧」は欧州特許庁という意味で、欧州諸国という 意味ではない。第2に、「実務運用」の特許審査について、特許審査ハイウェイ協定は欧州の特定国との締結が進んでいる段階である)。
10-1-3 特許制度の調和を進める上では、WIPOおよび先進国間の両面での議論が必要である。世界全体の知財制度が錯綜している中で、急増する特許出願に各国の力を合わせて対処するためには、先進国間の制度調和議論を進展させると共に、WIPOにおける議論を活性化させ、世界全体での取組を進める必要がある。(SANARI PATENT 注:先進各国の国内で、特許制度の改革に対立意見が明確化しており、それを跳躍して各国間調和が可能な制度調和の範囲を先ず見極める必要がある)。

10-2 パテント資料(SANARI PATENT要約)
10-2-1 従来技術検索と審査が世界一であると自負していた欧州特許庁(EPO)でさえ最近は、先進国間の審査資料・審査結果の共同利用に大きく転換しようとしている。(SANARI PATENT 注:EU官僚の意図と各国の意図の整合がどうか、問題である)。
10-2-2 グロ-バル出願のうち、三極だけで23万件ぐらい重複している。この重複をできるだけ排除するため、他特許庁で審査した出願については、第2庁ではできるだけ同じ検索を繰り返さないという方向性が合意された。その枠組は次の3点である。
10-2-3 相手国の審査結果を利用し易くするため、米国特許商標庁(USPTO)EPO、日本特許庁がどのような審査をしているかを各特許庁で見られる情報システムを構築すること
10-2-4 審査をハ-モナイズすること
10-2-5 審査基準を同一化すること

11.SANARI PATENT所見
  特許法体系の特殊性は、各国の特許性の仕組みが異なっていても、審査基準は実質的に接近できるし、審査結果としての特許付与の有無、すなわち、特許付与の判断結論は、同一であり得るということである。これは特許制度の本質に根ざす特徴で、キメ細かい観察を要する。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
USPTO、EPO、PATENT、特許審査、従来技術

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2008年3月10日月曜日

Crowd Sourcing, Open Innovation

Crowd Sourcing, Open Innovation, Open Source Software:クラウドソ-シング、オ-プンイノベ-ション、オ-プンソ-スソフトウェア
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ KDDI Comments on NGN (2008-3-9)
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ Innovation Project for Cool Energy (2008-3-9)

8.(承前3/9))「不特定多数者による知財開発」と「オ-プンイノベ-ション」
   テレビ東京WBS(2008-3-8)が、クラウドソ-シングという用語のもとで、ルビ-やJAVAなど、オ-プンソ-スソフトウェアの成功、マイクロソフトの一部オ-プンソフトウェア化発表などを放映した(商品開発の視聴者提案オ-プン化による低コスト開発と、これを通ずる販促のネットシステムをクラウドソ-シング、不特定多数者による商品形成として紹介の後)。

  SANARI PATENTは、「クラウドソ-シング」は「オ-プンイノベ-ション」とほぼ同義と解するが(ともに「不特定多数のユ-ザ-による共同開発・共同革新」を意味するから)、クラウドソ-シングにおいては、このビジネスモデルによる「市場の急速な拡大による受益」と「不特定多数のユ-ザ-の無償創案による開発コストの皆無化」を特に強調したことが、特許庁資料およびパテント資料と異なる点として、極めて高く評価する。
8-1 特許庁資料〔SANARI PATENT要約〕
8-1-1 技術の高度化・複雑化や、知識の世界的広がりを背景として、イノベ-ションの形態がオ-プンイノベ-ションへとシフトしている分野もある。
8-1-2 製品のライフサイクルが短縮化する中で、企業が自社の研究開発を高速化し、競争力を強化するためには、自社の力だけでなく、外部の力を有効活用することも重要になっている。
8-1-3 また、インタ-ネット等の情報通信技術の進歩により、かっては大企業の企業内研究所に独占されていたような技術に関する知識に、世界中の技術者が容易にアクセスできる環境が整備されてきた。企業外部に有用な知識が豊富に存在する状況が生じ、クロ-ズドイノベ-ションからオ-プンイノベ-ションにシフトしつつある分野もある。
8-2 パテント資料(SANARI PATENT要約)
8-2-1 欧州では、Linuxというオ-プンソ-スソフトウェアの開発が盛んに行われ、技術開発のためには特許権の縛りが無い方が良いということで、現実にそのLinuxは成功を収めてきた。
8-2-2 米国ではコンピュ-タプログラムについて、1998年のストリ-トバンク事件を契機として、いわゆるビジネス方法発明に特許を付与することを始め、媒体特許からプログラム自体も特許するというガイドライン変更を1996年に行った。
8-2-3 しかし、欧州においては、ソフトウェアに関しては特許付与に対する非常に反対が非常に強い。

9.SANARI PATENT所見
平成20年度内閣知財計画策定の原案として「オ-プンイノベ-ションと知的財産を巡る現状等」(内閣知財戦略本部・知的財産による競争力強化専門調査会 2008-2-5)は、オ-プンイノベ-ションの重要性を強調しており、近く内閣として決定することが確実と考える。類似の諸用語間の語義の異同、さらにはオ-プンイノベ-ションという用語自体の内包範囲や、その国民経済的意義の理解についても完全に整合していない面があるが、日米欧共通の趨勢として、オ-プンイノベ-ションへの指向がIT分野を始めとして進みつつあることは疑問の余地がない。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Crowd Sourcing、 Open Innovation、 JAVA、Linux

ラベル:

Crowd Sourcing, Open Innovation, Open Source Software

Crowd Sourcing, Open Innovation, Open Source Software:クラウドソ-シング、オ-プンイノベ-ション、オ-プンソ-スソフトウェア
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ KDDI Comments on NGN (2008-3-9)
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ Innovation Project for Cool Energy (2008-3-9)

8.(承前3/9))「不特定多数者による知財開発」と「オ-プンイノベ-ション」
   テレビ東京WBS(2008-3-8)が、クラウドソ-シングという用語のもとで、ルビ-やJAVAなど、オ-プンソ-スソフトウェアの成功、マイクロソフトの一部オ-プンソフトウェア化発表などを放映した(商品開発の視聴者提案オ-プン化による低コスト開発と、これを通ずる販促のネットシステムをクラウドソ-シング、不特定多数者による商品形成として紹介の後)。

  SANARI PATENTは、「クラウドソ-シング」は「オ-プンイノベ-ション」とほぼ同義と解するが(ともに「不特定多数のユ-ザ-による共同開発・共同革新」を意味するから)、クラウドソ-シングにおいては、このビジネスモデルによる「市場の急速な拡大による受益」と「不特定多数のユ-ザ-の無償創案による開発コストの皆無化」を特に強調したことが、特許庁資料およびパテント資料と異なる点として、極めて高く評価する。
8-1 特許庁資料〔SANARI PATENT要約〕
8-1-1 技術の高度化・複雑化や、知識の世界的広がりを背景として、イノベ-ションの形態がオ-プンイノベ-ションへとシフトしている分野もある。
8-1-2 製品のライフサイクルが短縮化する中で、企業が自社の研究開発を高速化し、競争力を強化するためには、自社の力だけでなく、外部の力を有効活用することも重要になっている。
8-1-3 また、インタ-ネット等の情報通信技術の進歩により、かっては大企業の企業内研究所に独占されていたような技術に関する知識に、世界中の技術者が容易にアクセスできる環境が整備されてきた。企業外部に有用な知識が豊富に存在する状況が生じ、クロ-ズドイノベ-ションからオ-プンイノベ-ションにシフトしつつある分野もある。
8-2 パテント資料(SANARI PATENT要約)
8-2-1 欧州では、Linuxというオ-プンソ-スソフトウェアの開発が盛んに行われ、技術開発のためには特許権の縛りが無い方が良いということで、現実にそのLinuxは成功を収めてきた。
8-2-2 米国ではコンピュ-タプログラムについて、1998年のストリ-トバンク事件を契機として、いわゆるビジネス方法発明に特許を付与することを始め、媒体特許からプログラム自体も特許するというガイドライン変更を1996年に行った。
8-2-3 しかし、欧州においては、ソフトウェアに関しては特許付与に対する非常に反対が非常に強い。

9.SANARI PATENT所見
平成20年度内閣知財計画策定の原案として「オ-プンイノベ-ションと知的財産を巡る現状等」(内閣知財戦略本部・知的財産による競争力強化専門調査会 2008-2-5)は、オ-プンイノベ-ションの重要性を強調しており、近く内閣として決定することが確実と考える。類似の諸用語間の語義の異同、さらにはオ-プンイノベ-ションという用語自体の内包範囲や、その国民経済的意義の理解についても完全に整合していない面があるが、日米欧共通の趨勢として、オ-プンイノベ-ションへの指向がIT分野を始めとして進みつつあることは疑問の余地がない。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Crowd Sourcing、 Open Innovation、 Open Software、JAVA、Linux

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2008年3月9日日曜日

Patent Prosecution Highways (PPH)

Patent Prosecution Highways (PPH) for International Work Sharing:各国特許審査の新たな取組
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ Contents Derived from Soft, Hard and Brand Synergy(3/8)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ NTT Comments on NGE(3/8)

7.(承前)
7-1 特許庁資料(SANARI PATENT要約)
7-1-1 元米国特許商標庁(USPTO)長官B.A.Lehmanは、「世界特許の危機と、共通の特許システム」と題して次のように述べている(2007)。
7-1-1-1 国際的な特許出願の急増によって、世界の特許システムは危機に瀕している。国際的な出願のほとんどが重複しているから、各国によるワ-クシェアリングの取組や、実体的な制度調和が必要となる。
7-1-1-2 さらに、「アジア太平洋特許庁」を創設して、効率性や審査の質の向上を目指すしてが望まれる。
7-1-1-3 WIPOに「仮想的世界特許庁」を設立し、各国特許庁が審査を分担することも一案である。
7-1-2 ワ-クシェアリングは、審査の様々なレベルにおいて考えられるが、日本では、グロ-バルな出願について国際的な連携を図り、効率的な審査を行うためにワ-クシェアリングを推進している。特に、
7-1-2-1 先行技術のサ-チ結果を活用するのか
7-1-2-2 特許性判断のロジックまでを活用するのか
7-1-2-3 最終判断まで全てを活用するのか
 など、連携には様々なレベルがあるが、様々なサ-チ・審査レベルについて相互利用を図ることで、ワ-クシェアリングを効率的に実施している。具体的には、7-1-2-3のレベルの特許審査ハイウェイ、7-1-2-2のレベルの第1庁の早期審査結果発信(JP-Fast Information Release Strategy)などが提案されている。(SANARI PATENT 注:末尾の「提案」という用語はかなり控え目で、特許審査ハイウェイの協定が既に実施されつつあるが、その「影」の部分が発生するか否か、今後の推移を見なければならない)。

7-2 パテント資料(SANARI PATENT要約)
7-2-1 特許審査ハイウェイは、いずれかの協定国で特許が付与されれば、第2庁では早期審査が自動的に受けられるということである。一つの請求項でも特許付与されていれば、その出願自体は、第2庁ではその国の仕組みに合った早期審査が受けられるという協定である。
7-2-2 米国の場合、早期審査は有料であるが、通常の早期審査の場合は、自分で先行技術を調べて比較検討して特許性を主張しなければならないが、後にプロセキュ-ションエストッペル(SANARI PATENT 注:禁反言事由)になるから、出願人が好まない場合が多い。特許審査ハイウェイの 最大の利点は、特許付与されていれば、その請求項等を提出すれば、自動的に早期審査のコ-スに入れてくれるということである。(SANARI PATENT 注:この辺の叙述は実務に即していて、官庁自体の解説には少ない特長である)。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
PPH、USPTO、世界特許、WIPO、ワ-クシェアリング

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2008年3月8日土曜日

Different Standpoints to IP Innovation

Different Standpoints to IP Innovation Between Pharmacy and Information Technology: 業種毎に異なるイノベ-ション創出構造への対応
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ SOFTBANK Comments on NGN (3/7記事)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ RAKUTEN Comments on NGN (3/7記事)

5.(承前)分野別特許政策
5-1 特許庁資料〔SANARI PATENT要約〕
5-1-1 グロ-バル化、技術の高度化・複雑化という変化に伴い、知財システムが各分野のイノベ-ションに果たす役割についても、新たな課題、すなわち、「特許制度・特許政策のカスタマイズの適否」が発生している。(SANARI PATENT 注:平成20年度内閣知財計画の策定においては重点4分野について分野別知財政策が策定される)。
5-1-2 しかし、TRIPS協定(知的所有権の貿易関係の側面に関する協定)は、加盟国に対して、技術分野に基づく特許の付与に関する差別を禁じている(27-1)。

5-2 パテント資料〔SANARI PATENT要約〕
5-2-1 米国特許商標庁(USPTO)の課題の一つとして、産業界の分離の問題、特に、情報技術(IT)業界と製薬業界の分離、すなわち、特許制度・政策による利益の大きな差異が出てきたという問題がある。
5-2-2 IT産業の場合は特許の質が最大の問題である。本来ならば、従来技術の存在により無効になるような不安定な特許権でも、それによって権利行使、特に仮処分で差止命令が出されてしまうと、止められたITビジネスには致命的である。「日本においてもジャストシステムに対して松下が差止めた途端にマスコミに報道され、クライアントが逃げてしまうという現象が起き、裁判所で争ったら、実は先行技術があって権利がつぶれた。しかし、1回でもビジネスが停止すると、クライアントが逃げてしまうということがあり、IT産業にとっては致命的である。」(SANARI PATENT 注:「 」内は原文通り)。
5-2-3 一方、医薬産業の分野では、特許取得に際し、巨費を投じて権利関係をサ-チしているから、特許庁に出願する段階でその特許の本質、特許付与の有無はほとんど知られ、請求項記載の在り方を考えるものの、特許の有効性の本質は既に判明している。
5-2-4 IT産業と製薬産業、いずれも大きな政治力を有し、共和党の大スポンサ-である。両産業界の利益が相異し対立することによって、パテントリフォ-ムが一本化できないという大きな問題になっている。

6.SANARI PATENT所見
  上記は情報技術と製薬とを対蹠しているが、「医薬品は情報のかたまり」という、中山信弘前東大教授の叙述がある。すなわち、「医薬品は単なる化合物であるが、それにのような薬効と副作用があるか、あるいはどの投与方法が最も効果があるかなどの情報が付加されて始めて医薬品になる。この情報部分を保護するのが特許制度である。」(Capsule No.82:SANARI PATENT要約)
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Pharmacy、TRIPS、松下、共和党、医薬品

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2008年3月7日金曜日

Problems for USPTO

Problems for USPTO:米国特許商標庁の課題
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ SANYO Releases Lithium Battery Bicycle(3/6)
ご参考:2005-3-5 本サイト Global Innovation五極特許出願

4.USPTOの課題(その2:特許出願の滞貨処理、訴訟コスト)
4-1 特許庁資料(SANARI PATENT要約)
4-1-1 米国特許商標庁(USPTO)は、2002年から2006年の間に3672名の特許審査官を採用したが、2028名の審査官は辞職するか他のポストに移動したため、増加したのは1644名にとどまった(米国会計検査院)。
4-1-2 世界の特許システムは危機の時代を迎えている。これは、係属中の出願の増加、審査の質の低下、諸国特許庁による重複事務、出願コストの増加によって特徴付けられる。現在USPTOには47万5千件の滞貨が残存し、この傾向が継続すれば審査待ちの特許出願件数は数年中に(SANARI PATENT 注:特許庁資料原文には2008年までに、とあるが早過ぎると考える)、100万件に達するであろう。その時には多くの技術について、USPTOは出願から特許登録までに5年以上を要することになるであろう(SANARI PATENT 注:わが国は現在約2年半)。同様の状態が世界中の特許庁で発生するであろう。(元USPTO長官)
4-1-3 USPTOは毎年1200人審査官を採用しているが、その採用・維持が困難で、経験の少ない審査間がシニアと見られるような状態である。従来USPTOは、特許弁護士(SANARI PATENT 注:米国では出願代理資格が、弁護士で特許出願代理資格を認められた者と、特許出願代理人資格者の計約3万人で、わが国弁理士数約7700名の4倍である)に丁寧に応対し、比較的迅速に審査してきたが、それが難しい時期になっている。(米国外有識者)

4-2 パテント資料(SANARI PATENT要約)
4-2-1 米国における特許問題は、次のように2大別される。
4-2-1-1 訴訟コストが過大になった。例えば、マオイクロソフトは毎年70億ドルの研究開発をしているが、訴訟において毎年1億ドル以上の、主として防御訴訟費用を必要としている。その原因は、USPTOにおける審査の質の問題、パテントトロ-ル、特許権者による差止請求、ディスカバリ-制度などである。
4-2-1-2 付与される特許の質と、これに関連してパテントトロ-ルが増加した。
4-2 USPTO自体の問題は滞貨である。米国は2007年度に出願が40万件を超えて世界最大の特許出願大国になった。
4-3 対USPTO特許出願の半数を外国出願が占める。外国出願増大の最大の理由は、経済のグロ-バル化による世界市場の形成・拡大において、最大の市場が米国であるということである。

5.SANARI PATENT所見
5-1 上記4-3の「世界市場の拡大」が、米国のみならず世界諸国の市場占有のための対諸国特許出願著増をもたらしている。
5-2 上記4-2-1-2の「特許の質」の課題は、日米ともに「質」の評価基準自体が定立されていないから、「米国審査官の質」と分別して検討すべきである。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
USPTO、特許審査、特許審査官、特許弁護士、マイクロソフト、パテントトロ-ル

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2008年3月6日木曜日

Situation of USPTO

Situation of USPTO:Valuable Materials for IP Prospects (2):USPTOが直面している状況
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
ご参考 2008-3-5 本サイト「Global Innovation:五極特許出願」
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ Global Development System of ASTELLAS 2008-3-5記事

3.USPTOの課題(その1:特許出願急増への対応)
3-1 特許庁資料〔SANARI PATENT要約〕
 米国における特許出願は居住者・非居住者ともに急増し、1995年20万件から2005年40万件、2006年42万件に達した。
3-1-1 対USPTO特許出願急増の要因
3-1-1-1 研究開発投資の増加が特許出願を牽引している。
3-1-1-2 米国を生産拠点・市場とする戦略が、米国における権利取得および行使のニ―ズを高めている。
3-1-1-3 米国の特許制度の特異性、すなわち、外国からの出願について優先権の効果が制限されるため、第二国出願についても早期に特許出願することとなる。優先権の効果が制限されなければ、優先権主張が可能な期間(第一国出願から1年間)において、外国出願の必要性について十分吟味できる。換言すれば、外国企業にとって、米国に出願するインセンティブがある。
3-1-1-4 米国の特許庁審査が、ソフトウェアやビジネスモデルの分野で、他国に比べて特許を取得し易い。
3-1-1-5 米国企業は、特許の巨大なポ-トフォリオを形成することにより、対他社有利性の構築を意図する。
3-1-1-7 特許の金融資産価値に対する関心が高い(SANARI PATENT 注:米国では特許権の定額的価値評価に関する方法論の著作が著増してきた。それらは例えば、回帰方程式によって将来予想収益を現価・元本化計算するものや、その修正方程式など数多いが、決定的なものはない。パテントトロ-ルやパテント促進業者の活動も起因していると考えられる)。
3-1-1-8 米国の一部の州では、権利者に対する有利な判決が出易いことから、促進地として米国が選定され易い。

3-2 パテント資料〔SANARI PATENT要約〕
3-2-1 対USPTO特許出願急増の要因
3-2-1-1 最大の理由は、中国の模倣品問題である。米国の輸出企業の8割以上が中小企業で、中国で製造し、米国に輸入し、中国内でも販売している。模倣品に対抗するために中小企業の特許取得が活発になっている。
3-2-1-2 大手企業も、IT産業、化学産業など、中国・インド等に事業展開し、これら外国から出願する。(SANARI PATENT 注:非居住者出願に算入される)。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
USPTO、特許出願、インド、ソフトウェア、ビジネスモデル、模倣品

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2008年3月5日水曜日

Global Innovation:Valuable Materials for IP

Global Innovation:Valuable Materials for IP Prospects(1):新年度開始に臨む特許政策の考え方(その1)
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ Finance Risk Management (2008-3-1記事)

1. グロ-バル・イノベ-ション
1-1 わが国の「イノベ-ション」、米国の「CHANGE」、ロシアの「エネルギ-大国」、中国の「科学的発展観」を始め、イノベ-ションが多様性をもってグロ-バルに展開する4月のわが国新年度を迎える。
1-2 イノベ-ションが知的財産の開発によって起動されることから、特許権の在り方についての多様な考え方が、グロ-バルに展開されてゆく。その動向を考察するための貴重な資料として、SANARI PATENTは先ず次の2資料を掲げる。
1-2-1 「イノベ-ションと知財政策に関する研究会・検討資料」(2008-1-23:特許庁)(以下本稿で「特許庁資料」)
1-2-2 「知財の世界事情の現状と今後」(2008-1-15:前特許技監・小野新次郎・
  弁理士;パテント誌Vol.61)(以下本稿で「パテント資料」)

2. 世界特許出願の急増と五極(日米欧中韓)
2-1 特許庁資料(SANARI PATENT要約)
2-1-1 先進国、新興国、途上国を問わず、世界の特許出願は急増している。1995年時点では年間約100万件程度であったが、2005年には166万件(SANARI PATENT 注:年増加率5%強)、うち約4割が非居住者出願である。
2-1-2 急増の一般的原因は、
2-1-2-1 研究開発の増大と経済のグロ-バル化
2-1-2-2 特許の金融資産としての価値の認識
2-1-2-3 特許取得目的として「競合他社への牽制」の付加
2-1-3 急増の各極・各国別原因は、
2-1-3-1 米国: 
2-1-3-1-1 米国特許制度の特異性のため、外国企業にとって米国に出願するインセンティブがある。
2-1-3-1-2 米国の特許審査が、ソフトウェアやビジネスモデルの分野で、他国に比して特許付与され易い。
2-1-3-1-3 米国の一部の州では、権利者に有利な判決が出易いことから、訴訟地として米国が選ばれ易い。
2-1-3-2 中国
2-1-3-2-1 経済成長に伴って、1995年出願件数2万件が、2000年7万件、2005年17万5千件と急増している。
2-1-3-2-2 2006年7月には専利法の改正案が示された。
2-1-3-3 途上国
他国からの出願急増による増加が主たる要因である。
2-2 パテント資料 
  2005年の世界特許出願総数166万件のうち、五極について、
2-2-1 日本から:
  日本に367,960件、米国に71,994件、欧州特許庁に21,461件、中国に28,897件、韓国に18,488件。
2-2-2 米国から:
  日本に23,811件、米国に207,867件、欧州特許庁に32,738件、中国に
  18,000件、韓国に10,507件。
2-2-3 欧州から:
  日本に23,616件、米国に53,993件、欧州特許庁に83,850件、中国に
  20,381件、韓国に10,049件。
2-2-4 中国から:
  日本に397件、米国に2,127件、欧州特許庁に538件、中国に93,485件、
  韓国に145件 (SANARI PATENT 注:特許関係の国際統計は、集計が遅く、資料の1と2ともに2005年の数値であるが、中国と韓国は、2006年以降の急増率が極めて高いと考えられる)。
2-2-5 韓国から:
  日本に8,845件、米国に17,217件、欧州特許庁に3,853件、中国に9,697件、韓国に122,188件。

  パテント資料には、米国における特許出願増大について詳述しているが、別途考察する。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Innovation、米国、欧州特許庁、中国、韓国、特許出願

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2008年3月4日火曜日

Project Reorganization of MITSUBISHI Elec.

Project Reorganization of MITSUBISHI Elec.:三菱電機の事業再編と、その携帯電話特許開発の活況
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ オリックスのインド事業展開

1. 三菱電機の事業再編発表(2008-3-3)(SANARI PATENT要約)
1-1 三菱電機は、「携帯電話端末事業を終息し、経営資源の戦略的シフトによって成長戦略を加速する。」
1-2 すなわち、三菱電機は、「強い事業をより強く」の方針に基づく成長戦略を一段と加速すべく、携帯電話端末事業を終息し、同事業の経営資源を、通信関連事業を始めとする、三菱電機がより注力し強化していく事業に戦略的にシフトする事業再編を行う。
1-3 三菱電機は、1983年に電電公社に自動車電話の納入を開始以来、NTTドコモ向けを中心として、国内の携帯電話端末事業に取組んできた。
1-4 しかし、携帯電話の市場が成熟化し、携帯電話端末の需要の伸びが見通せない中で、ユ-ザ-の嗜好が益々多様化するという環境において、この事業については、足元の出荷台数が減少すると共に、今後の業績改善を見通すことが困難になった。
1-5 このような状況下で、三菱電機は、あらゆる角度から携帯電話端末事業の方向性に関し検討した結果、この事業を終息すると共に、この事業の経営資源を、三菱電機がより注力・強化していく事業にシフトし、三菱電機全体の持続的成長と、企業価値の一層の向上を目指すこととした。
1-6 これに伴い、現在NTTドコモに納入し、販売中の機種をもって、三菱電機は、携帯電話端末の新規開発機種の投入を終了する。
1-7 携帯電話端末のアフタサ-ビスおよび電池パックD06の回収には、引続いて対応する。
1-8 NTTドコモと三菱電機とのパ-トナ-シップについては、三菱電機が今後強化拡大する通信関連事業によって、パ-トナ-シップを一層発展させる。
1-9 経営資源の戦略的シフトは、具体的には、携帯電話端末事業で培った技術・ノウハウを、次世代Network(NGN)関連機器や携帯電話基地局等の通信インフラ事業、閉回路TV(CCTV)等のト-タルセキュリティ事業、カ-マルティメディア事業、ファクトリ-オ-トメ-ション事業、鉄道車両情報通信システム事業等における活用によって行う。
1-10 本件による一時損失は約170億円の見込みである(SANARI PATENT 注:野村證券・東洋経済の会社四季報によれば三菱電機の今期営業利益は、
2350億円の見込み)。

2、SANARI PATENT所見
  上記1-9の「携帯電話端末で培った技術」の一環として、三菱電機の特許公開855件(2008-3-3現在)がある。最近の特許公開事例を挙げる。(SANARI PATENT要約)
2-1 電子機器(特許公開日2008-2-28)
周囲の人に不快感を与えない携帯電話を得る。
2-2 携帯電話機(特許公開日2008-1-24-)
実装面積が増加せず、コスト的に有利なタッチパネルの振動とバイブレ-タの振動を実現する。
2-3 携帯電話(特許公開日2008-1-24)
個人認証機能を付してもサイズが大きくならない携帯電話を得る。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)

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2008年3月3日月曜日

Assessment of Sleeping Patent:休眠特許の評価

Assessment of Sleeping Patent:休眠特許の評価:特許権の質、有用性、産業上利用可能性、進歩性
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ リスク管理(2008/3/3)

1. 朝日新聞の「休眠特許」紹介
1-1 特許権を休眠させておく理由は多様に想定できるが、防衛特許、待機特許などは、いわば積極的な特許戦略的意義を有する。実施やライセンスによる活用を希望こといるのにできないでいる特許権を、ここでは「休眠特許」と呼ぶことにする。
1-2 朝日新聞が毎週ないし隔週の日曜日紙面で、「休眠特許」と題する欄を設け、具体的事例を解説している。昨日の日曜日には、「靴に装着、つまづき防止」という理解し易い例示解説が掲載された。
1-3 この掲載によってライセンス希望企業が現れ、休眠特許が活用特許になることが望まれるが、紹介記事を書かれた渡辺知二氏も、「難点は外観。発明者は、電車に乗れば前の人が気づく、というが、繁華街に出かけるには勇気が要る。ファッション性をどう兼ね備えるか、そこが課題だ」と批評しておられる通りで、「商品性に先ず問題がある」と考えられる。
1-4 紹介記事には、次のように書かれてある。(SANARI PATENT要約)
「高齢になって体の動きが鈍ると僅かな段差でつまずき転ぶ。Gさんは偶然、右足の靴底のつま先部分が剥がれ、「舌」のように垂れ下がってしまった。靴底のペラペラが地面に引っかからないように気を付けていたら、その後、普通の靴をはいても、つまずかなくなった。歩き方が微妙に変わったからときずいた。Gさんはそこで、剥がれた「舌」「ペラペラ」を普通の靴の底に付けることを発明した。」

2. この「発明」のその後
2-1 Gさんは、発明の名称を「転倒回避爪先上げ警告具付き歩行活性具、ならびに前記警告具付き履物」として、特許出願し(2005-6-1)、登録査定を得て登録した(2006-4-21)(2006-334353)。
2-2 特許請求の範囲は、3請求項から成るが、請求項1は、「履物裏面爪先部に、弾性素材による舌状薄圧小片の踵方向部のみを着脱自在に装着し、この舌状薄圧小片の爪先方向部は垂れ下がり状態を保つことによりなる転倒回避爪先上げ警告具」で、請求項2は舌状薄圧小片を重ねて接合するなどした警告具」、請求項3は、請求項1と2の警告具体を各着脱自在に備えた履物」である。

3. SANARI PATENT所見
  特許登録から約2年を経て休眠特許と紹介されたので、紹介者の心配のように、商品性に問題があると考えられるが、「舌」状のものが「つまずく原因」にもなりそうで、それをわざわざ普通の靴の底に付けるのであるから、素人には理解が必ずしも容易でないと考えられる。
  知財専門家としては、発明の進歩性、非自明性(Non Obviousness:米国)、産業上利用可能性、有用性・商業的成功(MPEP:米国特許審査基準)、容易想到性などを論ずる際の引用資料として活用すべき事例であると考える。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Sleeping Patent、休眠特許、Obviousness、MPEP、進歩性、有用性

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2008年3月2日日曜日

Marine Finance by IBJ 興銀リ-ス

Marine Finance by IBJ 興銀リ-ス: 複合金融会社が見る世界海運需要
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
(関連 http://blogs.yahoo.co.jp/patenttrend China Money (2008/3/2) 

1. 興銀リ-スの船舶ファイナンス(2008/3/1記事ご参照)
1-1 世界の海運需要と興銀リ-スのファイナンス
1-1-1 同社社長説明(SANARI PATENT要約)
1-1-1-1 世界の海上輸送量は、ほぼ一貫して増加している。1996年50億トンが2006年70億トンに達した。その要因として、
1-1-1-1-1 中国、東南アジアが世界の工場として台頭した。
1-1-1-1-2 東欧、ロシア等の新興諸国の消費財需要が増加した。
1-1-1-1-3 中国の鉄鉱石輸入量が伸長した。
1-1-1-2 海運市況は、2003年以降、公共が持続している。新造船の建造需要は引続いて強く、造船所は2012~13年までの受注残を有する。
1-1-1-3 興銀リ-スの船舶ファイナンスへの取組
1-1-1-3-1 旺盛な船舶投資への資金ニ―ズに対応し、ファイナンス残高は2007年末635億円に達し、船舶の建造スケヂュ-ルに合わせてロ-ンを実行している。
1-1-1-3-2 船舶融資の保証や船舶ファンドへの出資にも対応し、取組を多様化している。
1-1-2 SANARI PATENT考察
   複合金融サ-ビスの拡大について、船舶ファイナンスの経験が役立っている。傭船者の信用力、プロジェクトの採算性、為替リスク、船舶自体の担保価値、船籍国などをめぐる情報ネットワ-クの活用と総合判断が必要であり、他分野の大型ファイナンスに取組む素養を経た。

2.興銀リ-スの不動産関連ファイナンス
2-1 社長説明〔SANARI PATENT要約〕
2-1-1 不動産関連ファイナンスは、都心の優良物件取引が活況を呈するなどの環境変化を踏まえ、銀行、証券と協働して取組を積極化している。
2-1-2 都心(主要5区)オフィスの空室率は、2000年3.6%、2003年7.0%、7004年5.7%、以降、3.6%、2.3%と推移し、2007年1.7%に至っている。なお上記5区は、千代田、中央、港、新宿、渋谷。
2-1-3 海外のオフィス賃料(2007-12)と比較すると、Aクラス物件で、東京丸の内・坪41,930円、ロンドン58,970円、ニュ-ヨ-ク32,879円、シンガポ-ル33,394円であるが、東京は、5区平均では13,680円である。対前年比高騰率は、上記順に、45.3%、24.9%、22.6%、96.1%、7.1%。
2-2 SANARI PATENT考察
   同社は、八重洲リ-ス(建物)および丸の内商事(中古物件売買)を100%子会社としている。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Marine Finance、IBJ、興銀リ-ス、空室率、オフィス賃料

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2008年3月1日土曜日

Lease, Finance, Fee 物融、金融、フィ-

Lease, Finance, Fee 物融、金融、フィ-:興銀リ-ス(IBJ LEASING CO)の総合金融サ-ビス
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
ご参考 http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ リ-ス業界2/29記事

1. 興銀リ-スの事業
1-1 同社社長説明(SANARI PATENT要約)
1-1-1 企業のニ―ズの例
1-1-1-1 設備投資に必要な初期の資金負担を軽減したい。
1-1-1-2 管理事務を合理化・省力化したい。
1-1-1-3 資金調達手段を多様化したい。
1-1-1-4 不要になった機械設備を売却したい。
1-1-2 これらニ―ズに応える多様な商品とサ-ビス
1-1-2-1 物融: リ-ス、オ-トリ-ス、レンタル、割賦 など
1-1-2-2 金融: 事業金融、債権買収、保証、船舶ファイナンス、不動産ファ   イナンス など
1-1-2-3 フィ-ビジネス: 中古物件売買、生命保険、投資物品販売 など
1-1-3 総合リ-ス会社としての興銀リ-スのポジション
1-1-3-1 これまでの純利益額順では、三菱UFJリ-ス、芙蓉総合リ-ス、興銀リ-ス、東京リ-ス、センチュリ-、リコ-リ-ス、NECリ-スであるが、最近の純利益伸び率は興銀リ-スが高い。
1-1-3-2 外部格付けにおいて興銀リ-スは、日本格付研究所でJ-1およびA、格付投資情報センタ-でa-1を得ている。
1-2 SANARI PATENT考察
Wikipediaは、次のように解説している。(SANARI PATENT要約)
「リ-スは、機械などの物品を利用者に代わる別の企業が購入して、利用者に一定期間の契約で有料で貸し出すビジネスである。物品の所有権はリ-ス会社にあり、契約期間は減価償却期間より短い設定が可能で、貸し出し料金は経費扱いになるから、主に産業機械、航空機、船舶などやパソコンなど技術進歩の速い情報通信機器などに利用されている。」
さらにWikipediaは、「リ-スとレンタルとの違い」について、次のように解説している。
「レンタルはリ-スと全く異なる賃貸システムである。リ-スはリ-ス会社が契約企業のために新品を購入するのだが、レンタルの場合はレンタル会社が既に所持しているものを様々な所に賃貸するシステムで、新品とは限らず、基本的にリ-スはレンタルよりも期限が短い。」
Wikipediaの性格は周知の通りであり、興銀リ-スの社名はリ-スでも、レンタルのみならず広汎な金融および金融機能的業務を含めて、同社は選択的機能的に営業していることが理解される。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
Lease、 Finance、 Fee、 物融、興銀リ-ス、三菱UFJリ-ス、芙蓉総合リ-ス

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