2008年3月22日土曜日

IP Strategies of Japanese Enterprises

IP Strategies of Japanese Enterprises:企業知財戦略の日米対比と今後の方向性
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 米国におけるオ-プンイノベ-ション(2008-3-21記事)

  先ず内閣知財戦略本部資料(2008-3-13)の標題に関する記述を要約する。
1. 日米対比
わが国においては、業種・企業間で差はあるものの、米国に比べて、オ-プンイノベ-ションに対する企業の取組とその社会的基盤が不十分であり、経済社会全体のオ-プンイノベ-ションによる好循環が実現していない。
2. わが国企業の自社開発志向
わが国企業は全般的には「ものづくり精神や自社開発志向が強く、必要な技術は基本的に内部リソ-スを用いて開発する戦略に重点を置き、外部リソ-ス活用ン必要性を感じつつも経営戦略の流出を懸念して、自らのニ―ズを外部に提示すること自体を躊躇する。
3. 研究費の社内外配分
総研究費のうち社外支出割合は1割程度にとどまり、外部リソ-スの活用に積極的でない。また、取得した特許は自社事業の実施やクロスライセンスする以外は未利用特許として保有され、その割合は5割を超えている。(SANARI PATENT 注:現在特許期間中の特許権総数に占める未利用特許の総数を引用している。真の防衛特許や待機特許もあるから、必ずしも的確な割合ではない)
4. クロ-ズドモデルの知財戦略
既に有する市場支配力や技術の優位を維持・強化すべく、基本的に自社単独で市場で優位となる新製品を開発し、競争力ある事業展開を続ける戦略である。例えば、事業防衛や、将来のクロスライセンス交渉に備えてバ-ゲニングパワ-を確保したり、他社参入阻止のため知財ポ-トフオ-リオ形成用の知財権を取得する戦略である。
5. オ-プンモデルの知財戦略
有力競争者への対応、投資規模拡大によるリスク軽減等のため、外部リソ-スの活用、戦略的提携の形成、仲介事業者への売却や技術移転による事業資金確保により社内外のリソ-スを最大限に活用し、収益を最大化する戦略である。例えば、
5-1 内外のベンチャ-、異業種企業、大学等との共同研究、ライセンス取得、M&Aなどにより、知財創造の所要時間と資金を節減する。
5-2 事業化を他社に委ね、投資資金を回収する。
5-3 異業種の企業にライセンスアウトする。
5-4 相互接続性が必要な分野において、新分野開拓や新市場創出のため、知財権を戦略的に提供し、デファクト標準化を指向する。
5-5 中核的技術と周辺技術に対するパテントポリシ-を使い分ける。すなわち、自社の営業力のみでは市場の拡大が困難な場合、市場参入に必要な周辺技術については無償で開放し、他社の営業力も活用して市場を拡大するが、差別化技術である中核的技術は独占して収益を最大化する。
5-6 複数製品の併用により機能する製品について、一方を低廉なライセンス料により市場拡大し、他方は高額ライセンス料により収益を最大化する。(SANARI PATENT 注:デジタルプリント機器メ―カが、プリント機器本体については包括クロスライセンス契約により市場拡大、かつ低価格販売し、インクカ-トリッジについては特許権・ノウハウを独占実施して収益を最大化するのも類似例である)。
5-7 自社知財を実施化し、優位を確保した後、ライセンス供与を開始し、自社知財の迂回技術を開発する他社を牽制する。

6. SANARI PATENT所見
いわゆる多国籍企業は、世界200国の大多数のGNPを上まわる生産・販売額を有するものが多い。これらがクロ-ズドおよびオ-プンの両戦略を駆使してグロ-バルに企業グル-プを拡大し、国際標準化のデファクト形成など、国単位の知財政策を超える支配力を構築してゆくことが想定される。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
IP Strategies、オ-プンイノベ-ション、デファクト標準化、多国籍企業

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム