2008年3月31日月曜日

IP High Court Cancels JPO Decision

IP High Court Cancels JPO Decision: 知財高裁が特許無効審決の取消判決(平成20年3月27日):実質的同一性の判断
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 中小企業庁・中小企業経営革新計画の成果公表(2008-3-31記事)

1.先願発明との実質的同一性の判断
1-1  わが国の特許法は先願主義を採るから、特許出願された発明が、先願の発明と同一であれば特許を受けることができない。この「同一性」には「実質的同一性」を含むから、「実質」の判断いかんによって、特許性の有無が左右される。
1-2  今次知財高裁判決(2008-3-27 平19行ケ10279審決取消請求事件)は、特許庁審判が「実質的同一」と判断して無効審決した特許権について、知財高裁が「実質的同一」および「容易想到性」を否定して、特許庁の特許無効審決を取消した事件である。

1. 今次事件
2-1  今次原告・株式会社・富士トレ-ラ-製作所(訴訟代理人・黒田勇治弁理士)「整畦機」発明について特許出願し、特許庁から特許権の設定登録を受けた(2006-4-28)。
2-2  この特許に対して、今次被告・松山株式会社(訴訟代理人・樺澤 襄弁理士ほか)は特許無効審判を請求し、特許庁は無効審決した(2007-6-19)。
2-3  原告はこの審決の取消を知財高裁に請求し、知財高裁は、原告の請求を認容した(2008-3-27)。

2. 特許庁審決の特許無効判断
3-1 先願発明の記載全体から把握される発明には、その回転整畦体の回転機構や駆動軸の配置構成に関して、先願明細書における実施例、および、周知技術による配置構成を備えるものも含まれるというべきである。
3-2 本件発明も結果として、上記先願発明と実質的に同一であり、先願発明から自明である。

3. 原告の主張
4-1 審決には、本件発明および先願発明の各基本構成の認定に誤りがある。(「両持状態」と「片持状態」とは、基本的に技術的意義を異にするなど)
4-2 審決には、相違点に係る認定判断の誤りがある。審決の認定は、先願発明の範囲を上位概念に置き換えてなされたものである。

4. 被告の反論
5-1 原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
5-2 「両持状態」の構成にするか、「片持状態」の構成にするかは、当業者の技術常識の範囲内において適宜決定される設計事項である。先願発明と本件発明とは技術的意義が異なるという原告の主張は理由がない。

5. 知財高裁の判断
6-1 先願明細書の記載からは、その整畦機に「回転軸の一端側に回転伝達機構を連接し、その回転軸の他端側に回転整畦機を設けるようにした配置構成を備えるもの」が含まれるということはできない。
6-2 本件発明の作用効果には、先願明細書に記載されていないものがある。
6-3 従って、「本件発明は先願発明と実質的に同一である」とした審決の判断は誤りである。

6. SANARI PATENT所見
  実施的同一性の判断については、特許審査基準においても結局、主要判決の例示に依存しており、今後、その判断基準の一層の明確化を判決の集積にまつが、「特許付与の段階」と「審決および知財高裁判決の段階」で、判断がそれぞれ相違する場合が発生することは、特許制度の本来の趣旨に適合するものであることを、SANARI PATENTは従来から指摘している。
(この記事修正のご要求やご意見は、sanaripat@nifty.com に、ご記名ご送信ください)
IP High Court、知財高裁、特許庁、審決、特許無効

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム