2011年9月30日金曜日

東芝の「電動機制御装置・制御方法」発明における積分制御、ほか

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次世代産業・生活における制御機構革新に対処し、微分制御(C Site2011-09-30ご参照)関連の発明が続出しているが、積分制御関連の特許庁公開発明件数も著増している。例えば(SANARI PATENT要約)、
(1) 出願人・株式会社東芝、発明の名称「電動機の制御装置および制御方法」(特許庁公開日2011-06-23)→ 1台のインバータで誘導電動機と同期電動機の双方を所望の速度に制御することを課題とし、誘導電動機速度制御器は、誘導電動機の回転速度指令値と、その回転速度との偏差から、比例積分制御等により、磁極方向電流指令値を演算するなどによる発明。
(2) 出願人・キャノン株式会社、発明の名称「撮像装置」(特許庁公開日2011-07-14)→ 部品干渉の発生しない状態で姿勢検知することによって、姿勢検出の誤検出を防止できる撮像装置の提供を課題とし、シフトレンズ、その駆動制御部、シフトレンズと他の部材との干渉を防止する干渉防止制御部を備え、シフトレンズ駆動制御部は撮像装置に加わる振れを検出し、その検出出力に応じてシフトレンズの移動目標位置を算出すると共に、シフトレンズの実位置を検出し、その実位置が移動目標位置に収束するよう帰還制御し、その帰還制御信号に基いてシフトレンズを駆動する発明。(SANARI PATENT考察: 帰還制御の内部演算情報を使用して撮像装置の姿勢を検出するが、積分制御と微分制御の2系、及び、その両用が考えられよう)。
(3) 出願人・株式会社マキタ、発明の名称「モータ制御装置、電動工具、及びプログラム」(特許庁公開日2011-08-18)→ 電動工具において、目標速度に対する回転速度の追随性を確保しつつ、回転速度の計測値が安定しなくても、回転速度を目標速度で安定させるため、回転速度と目標速度の偏差が、不感帯外の値であれば、比例制御と積分制御の双方を有効とし、不感帯内の値であれば、比例制御を無効とし、積分制御を有効にする発明。など。
SANARI PATENT所見
出力信号の比例要素・積分要素・微分要素に応ずる比例制御・積分制御・微分制御を組み合わせた比例・積分制御、比例微分制御、比例積分微分制御の3系によるイノベーションが進行する。
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2011年9月29日木曜日

原子力発電の維持と原子力空母の相関

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内閣府の原子力委員会が再開され、エネルギー政策が基本的に見直されるが、原子力発電緯持について賛否いずれの論を主張するにせよ、原子力発電緯持と原子力空母の防衛価値保持との関連を国際的視点として、検討項目から落としてはならないことが、長谷川慶太郎氏の「緊急出版・大局を読む」から読み取れるので、同氏の解説をSANARI PATENTが要約しておく。
(1) 米国が福島原子力発電所のデータを採りたいのは、国防力と関わっている。米国の国防力は、原子力抜きにはあり得ない。米国が保有する空母は11隻全てが原子力空母であって、通常のエンジンを付けている空母は無い。通常のエンジンの空母と原子力空母では、空母としての世代が全然違っている。
(2) 通常のガスタービン・ディゼル・蒸気、いずれのエンジンでも、原子力空母に匹敵する馬力が出ない。その結果、大きく異なるのが艦載機だ。原子力空母だと、大型の航続力の長い、破壊力の強い艦載機を積める。
(3) 米国の原子力空母の飛行甲板の蒸気カタパルトは、原子力エンジンの強い馬力で非常に高圧の蒸気噴射により、大型の長航続力、高破壊力の艦載機発進を可能にしている。
(4) 中国は現在、空母4隻を建造中だが、全て通常エンジンのカタパルトだから、米国の原子力空母が、現在は遥かに勝る。
(5) 米国では原子力発電産業だけでなく、原子力工学科を持つ大学もなくなっていったが、アナポリスに在る海軍兵学校だけは今なお原子力工学科を置いて、原子力炉の専門家を養成し続けている。米国海軍の戦力の中核である原子力空母、原子力潜水艦が原子力炉を原動力として動いているからだ。
(6) 日本の電力会社は、米国やロシアの原子力発電所事故の後も、原子力発電装置の発注を止めなかった。そこで日本には、日立・東芝・三菱重工という原子力発電メーカーが3社も残っている。
(7) 原子力炉には世界各国の国の利害が絡んでいる。米国でも、原子力炉を止めたら、米国海軍は原子力空母の緯持管理に事欠く。原子力発電を手掛けないで、原子力空母空母だけを続けることはできない。海外に全面依存することも軍事兵器として、できない。
SANARI PATENT所見
平露ともに、原子力発電と原子力空母を建造緯持する必然性が考えられるが、中国・インドなどの原子力発電推進国はどう考えているか。ドイツは海軍防衛力をどう考えるのか、上記論説を踏まえて考究すべきである。
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2011年9月28日水曜日

KLabの東証マザーズ市場上場(2011-09-27)、当日の活況

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日経平均株価が、やっと8600円台に回復した2011-09-27に、KLabが東証マザーズ市場に上場し、公開価格1700円に対して3970円(高値4070円)を付けたことは、Social GameないしSNS (Social Network Service)業界の発展可能性を評価する顕著な現象として注目されよう。
KLab株式会社は上場に際し、次のように報告している(SANARI PATENT要約)。
(1) KLabの2010-08月期売上高29億5300万円に対して2011-08期計画は56億1000万円と1.9倍を見込み、同営業利益は9億2600万円で6.16倍、経常利益は9億2200万円で7倍を計画している。
(2) KLabの事業環境は、主力事業であるSocial Gameの国内市場規模が、2011年度には1000億円超と予想され、特に、株式会社ディー・エヌ・エーのMobage、グリー株式会社のGREE、株式会社ミクシィのmixi、ヤフー株式会社のYahoo!Mobageなどと共に、益々活況を呈するものと予想される。
(3) このような事業環境下でKLabは、引続きSocial Applicationの企画開発を中心とするSocial事業を核とし、大手Contents Providerの受託開発を中心とするSI事業、Hosting ServiceとLicense Serviceを合わせた「Cloud and License事業」の3つの事業領域を中心に活動してきた。
(4) KLabが属する市場は、KLabの強みを活かした事業展開により、こんごの大きな成長が可能である。すなわち、公式コンテンツ・ビジネスモデルは終焉し、Social Gameの拡大とSmart Phoneの急速普及のもと、Androidケータイ増加によるGoogleの伸長、Apple、Facebookを含む覇権争いが激化する。
SANARI PATENT所見
KLabは、事業環境の変化に柔軟に対応し、事業規模の拡大を目指すとしているが、この「柔軟性」こそ「安定と挑戦のバランス」を保持しつつ発展する戦略の要であろう。
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2011年9月26日月曜日

プラグイン車両の充電制御等に関するデンソーの特許発明開発

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電気車両の普及は、次世代スマートエネルギー社会の構築に不可欠の要素だが、その的確な実現のためには、充電システムと関連技術の総合的整備開発が必須である。
この意味で、先日(2011-09-22)特許庁公開(SANARI PATENT要約)された株式会社デンソーによるプラグイン車両の充電制御装置発明等を考察する。
(1) 出願人・デンソー、発明の名称「プラグイン車両の充電制御装置」(特許庁公開日2011-09-22)→ 無駄な充電を実行した結果になることなく、しかも、次回走行に必要な電力量をなるべく安価に充電できる「プラグイン車両の充電制御装置」を提供すべく、カーナビによって、使用者が入力した翌日の到着時刻と目的地に基いて、次の走行時に必要となる電力量を求め、翌日の天気情報・日の出・日没時間に基いて、次の出発予定時刻まで、太陽光発電により最大限充電するスケジュールを作成し、そのスケジュールに従って、車載バッテリを制御する技術の発明である。
(2) 出願人・デンソー、発明の名称「プラグイン車両の充電制御装置及び車両用ナビゲーション装置」(特許庁公開日2011-09-22)→ 電力単価が最も安い太陽光発電を最大限利用して、バッテリを充電しながら、無駄な充電を実行することにならないようにするプラグイン車両の充電制御装置及び車両用ナビゲーション装置を提供するため、カーナビによって、使用者が入力した翌日の到着時刻と目的地に基いて、次の走行時に必要となる電力量を求め、翌日の天気情報・日の出・日没時間に基いて、次の出発予定時刻まで、太陽光発電により最大限充電するスケジュールを作成し、そのスケジュールに従って、車載バッテリを制御する技術の発明である。
SANARI PATENT所見
デンソーが所有する特許庁公開技術の件数は5万0436件(2011-09-26現在)に達し、2011-09-22に特許庁公開された技術件数のみでも、上記のほか、「電気自動車の緊急通知システム」「インバータの冷却装置」「電力変換システムの放電制御装置」「同名」「同名」「同名」「電力変換装置」「インバータの冷却装置」「電力変換回路の制御装置」「モータ制御方法、モータ制御装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置」「車両用発電機」「電流検出装置」「携帯型情報読取装置」「車両用回転電機」など10指に余る。これらは勿論、相互に関連する企業であり、総合考察してデンソーのSmart Energy世代における活躍に刮目すべきである。
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2011年9月25日日曜日

LED電球に対する家庭の選好と知財開発

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家庭用電球の寿命は、同一家庭内でも位置による使用条件の多様性に対応して多様であるし、LED電球の光源属性も未だ進化の過程にあるので、その製造コスト低減の可能性と共に、技術開発の過程にあると見られる。最近の特許庁公開特許発明技術にも、例えば、
(1) シャープ「LED電球」(特許庁公開日2011-08-18)→ 従来のLED電球は、筒状の基板の軸方向に沿った外側壁と、軸方向に直角な外側面にLEDを実装し、前記基板を覆うように透光性カバーを設けることにより、前記基板の軸に直角方向にも強い光を放射させることができ、照射範囲(配光領域)を広くすることができるが、製造工程が複雑となり、製造コストが高くなるという問題があることを解決する構造のLED電球を提供する。
(2) 東芝ライテック「LED点灯装置」(特許庁公開日2011-08-11)→ 商用交流電源に接続して点灯するLED電球のような比較的小電力のLED照明装置用として好適な小型化が可能なLED点灯装置を提供する。
(3) シャープ「LED電球」(特許庁公開日2011-07-21)→ 全周にわたって配光し、高出力かつ器具効率の高いLED電球を実現する。
(4) パナソニック「ランプ」(特許庁公開日2011-07-14)→ 筺体の軽量化・取扱性に優れた電球形ランプを提供する。
(5) 神戸製鋼「LED電球の放熱部の製造方法およびLED電球の放熱部(特許庁公開日2011-07-07)→ アルミニウム合金製ランプ材に絞り加工とローレット加工を施すことにより、LED電球の放熱部を製造することができ、製造コストを低減し、しかも、 アルミニウム合金ダイキャスト製の放熱部と比べて遜色のない放熱性を得ることができるLED電球の放熱部の製造方法およびLED電球の放熱部を提供する。など。
SANARI PATENT所見
上記各発明の配光性・放熱性・製造コスト等の解決課題に見るように、在来電球との価格対比において、消費者が納得できるLED電球の進歩が望まれる(R Site2011-09-25ご参照)。
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2011年9月24日土曜日

NTTファシリティーズが、対特許庁長官知財高裁訴訟で勝訴(09-20判決)

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本件原告・株式会社NTTファシリティーズ(本件訴訟代理人・志賀正武弁理士ほか)は、「TVプロテクタ」(標準文字)・指定商品「配電用又は制御用の機械器具、回転変流記、調相機、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその他の部品」について商標登録を出願したが拒絶査定を受けたので、不服審判を請求したが、特許庁は、「本件審判の請求は成り立たない」と審決したので、NTTファシリティーズは、特許庁長官を被告として、この審決の取消を知財高裁に訴求し、知財高裁は、NTTファシリティーズの請求を容認して上記審決を取消すと共に、訴訟費用は被告・特許庁長官の負担とすると判決した(平成23年行ケ10085号・審決取消請求事件:判決言渡2011-09-20)。
商標法第4条は、「次に掲げる商標については、商標登録を受けることができない」として、「その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」と定めている。
特許庁審決は、
(1) NTTファシリティーズの本願商標{TVプロテクタ}中、「TV」部分が大文字で、「プロテクタ」部分が片仮名文字で記され、視覚上、分離して看取される場合があること
(2) NTTファシリティーズのこの商標は、構成全体で何らかの特定の意味合いを看取させるものである等、これを常に一体不可分のものとして看取しなければならない特段の事情は認められないこと
(3) 「TV」の文字は、テレビジョンの略であって、本願商標の指定商品中の「テレビジョン受信機」を意味する語として認識されるから、指定商品「電気通信機械器具」に使用する場合、自他商品の識別標識としての機能を有するとは言えないこと、などを理由として、既に登録されている商標「PROTECTOR」(標準文字)・(指定商品:商品に取り付けた感知ラベルやタグを検知し警告する万引き防止装置及びそのセンサー、電気通信機械器具・商標権者:チェックポイント システムズ インコーポレーテッド)と対比して、呼称及び観念が類似し、登録できないと判断した。
知財高裁は上記判決において、「本件NTTファシリティーズの商標のような複数の構成部分を組合せてなる結合商標について、その一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して類否を判断することは、原則として許されない」と判示し、NTTファシリティーズの請求を認容して特許庁審決を取消した。
SANARI PATENT所見
上記知財高裁判示中「原則として」の例外場合を示した部分の適用を含めて、商標の経済価値がグローバルに発揮される時流に即して、今次知財高裁判決を考究すべきである。
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2011年9月23日金曜日

宝山鋼鉄股分有限公司(現・粗鋼世界2位)技術開発のコスト重点

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2012-10合併で発足する新日鉄住金が、世界粗鋼生産メーカー中の生産量第2位に上昇し、現第2位の中国・宝山鋼鉄股分有限公司と入れ替わることになるので、宝山鋼鉄股分有限公司の技術開発動向に対する関心も一層強まる。
特許庁最近の発明公開における宝山鋼鉄股分有限公司出願に係る事例としては、次のような発明が見られる(SANARI PATENT要約)。
(1) 発明の名称「新型構造とする冶金スラグポット及びその製造方法」(特許庁公開日2011-08-25)→ ポット口の口径がポットボトムの直径より大きい、溶融状の鋼(鉄)スラグを装うためのポット形容器であって、前記冶金スラグポットが鋼板により溶接されて成ることを特徴とする新型構造とする冶金スラグポットを提供する。→ 環境汚染の大幅減少、品質向上による使用寿命の大幅延長、生産現場の安全確保、製造コストの大幅低減を可能にする。
(2) 発明の名称「一回冷間圧延法による方向性珪素鋼の製造方法」(特許庁公開日2011-06-30)→ 精錬と連続鋳造で所定質量成分比の鋳造ピレットを得る精錬工程と、熱間圧延工程と、焼ならし焼鈍工程と、所定圧下率の一回冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程と、高温焼鈍工程と、熱平坦化焼鈍工程とを含む一回冷間圧延法による方向性珪素鋼の製造方法を提供する。→ 安定な二次再結晶組織を得るために有利である。
(3) 発明の名称「高電磁気性能の方向性珪素鋼の製造方法」(特許庁公開日2011-06-16)
(4) 発明の名称「効率的かつ省エネルギーな帯鋼連続鋳造法及び連続圧延プロセス」(特許庁公開日2010-09-30)
SANARI PATENT所見
2010年の粗鋼生産量3700万トンの宝山鋼鉄股分有限公司に対して、新日鉄住金は4830万トン廼規模をもって臨むこととなるが、宝山鋼鉄股分有限公司のコスト低減意欲を上回るコスト効果を今次新日鉄住金が齎すことを望む。
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2011年9月22日木曜日

ECビジネスの欧州拡大、楽天が英Play Holdings買収

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電子商取引(EC)の普及と高度化は、国民経済の水準をしめす重要な指標と考えるが、わが国におけるB to C ECの発展とイノベーションを推進してきた楽天が、米国・中国を始めアジア諸国と共に、フランス・ドイツと欧州中央に進出し、更にこのたび英国のEC大手Play Holdings Ltd.買収を発表(2011-09-21)したことに、大きく期待する。発表の内容(SANARI PATENT要約)は、
(1) 楽天は、日本におけるNo.1 Internet Shopping Mallである「楽天市場」等を運営する総合Internet Service事業で、B to C EC企業では売上高世界第2位である。「楽天市場」は、商品数8000万点を超える品揃えと、出店店舗に対して提供するEC Platform技術およびコンサルティング等の運営ノウハウにおいて、日本国内で圧倒的強みを保有している。
(2) 楽天は、ECを始め各種事業を米国・欧州・アジアの諸国で展開し、2010年にはフランスのEC事業者PRICE Minister SASを完全子会社化して業績順調であり、また先般、ドイツのEC事業者Tradoria GmgHを子会社化した。
(3) このたび、買収を合意した英国Play Holdingsは、英国においてEC Site・play.comを運営する企業グル-プを統括する持株会社で、1400万人の顧客基盤と700万点超の商品登録数を有し、英国で第4位のEC事業者である。
(4) Play Holdingsは、Site運営者事業体が売主となるFirst Party型と、楽天方式のMarket Place型の両ビジネスモデルを有し、良質な商品を低価格で顧客に提供する点、および幅広い品揃えに強みがある。
SANARI PATENT所見
中国・ブラジルなど新興国の所得向上で、グローバルなEC市場が、欧米と均質化しつつ展開すると考える。楽天が、上記(4)の両ビジネスモデルに練達して、世界市場に良質・低価格製品普及の生活者利便を浸透することを、わが国にとっての誇りとしたい。
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2011年9月21日水曜日

キャノン御手洗冨士夫会長・満76歳の壮健とサービス精神

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昨日(2011-09-20)のキャノン説明会についてはC Siteに既述したが、明後日満76歳に達する同社・御手洗冨士夫会長の若さ(発音明晰)とサービス精神(参加者にとって有用な資料を努めて提供し、質問にも率直に勘所を丁重に答弁する)に改めて感銘したので、その要点を以下に備忘する。なお、御手洗冨士夫会長は中央大学法科卒だが、内閣知財戦略本部本部員として実質的にその政策立案を主導し、キャノンにおいても丸島儀一弁理士ほかを重用して特許発明数17万件を超える知的財産企業に成長させるなど、キャノンでの米国勤務歴が知見を豊かにして、経団連会長から同名誉会長に至っているものと理解し、学歴に捉われない自己開発こそ人材輩出の決め手と、改めて痛感している。
(1) キャノンの強みは、「ものづくりで利益を出すこと」だが、生産の効率化は「セル生産方式」すなわち「少人数のチームが複数の工程を担当して一つの商品を完成する方式」を更に進化させ、「マンマシンセル方式」すなわち「独自の製造装置を創出してセルに組込み、人と設備を融合した生産方式」を活用したことによる(SANARI PATENT要約)。
(2) 更に全社体制としては、自社生産体制にこだわり、「内製化」で、コストダウン・製品の差別化・技術のブラックボックス化・フレキシブルな生産・リードタイム短縮・品質向上を、「自動化」で生産効率向上・消費地生産を、「マシンセル方式」で生産効率向上・設計からのコストダウン・リードタイム短縮を実現している。
(3) 2015年には、売上高5兆円以上、営業利益率20%以上、純利益率10%以上、株主資本比率75%以上とする。
(4) 世界著名企業の業歴年数を対比すると、米国DuPont・209年、P and G・174年、Eastman Kodak・131年、GE・119年、XEROX・105年、IBM・100年、TI・81年、欧州Siemens・164年、Nokia・145年、Philips・120年に対して、東芝107年、日立91年、パナソニック76年、キャノン74年で、わが国企業は、繁栄永続の体質と戦略を更に充実すべきである(SANARI PATENT要約)。
SANARI PATENT所見
キャノンは昨日(2011-09-20)、「地レジ対応テレビを活用したクラウド型情報配信サービスを試験運用し、地上デジタル放送と配信等を融合した新サービス・フレミクスTV」を発表したが、地デジとクラウドという当面の活用対象に融合機能を創出したことにも、御手洗会長由来サービス精神の発露を見る。
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2011年9月19日月曜日

韓国SAMSUNGのグローバル電子機器市場シェア拡大と特許活動

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情報機器・電子機器の分野で、韓国SAMSUNGの、米国始め諸国市場におけるプレゼンスは極めて強大だが、わが国特許庁に対する特許出願も益々活発で、最近の特許庁公開事例も次のほか多数である(内容は全てSANARI PATENT要約)。
なおSAMSUNGグル-プの社名で「サムソン」「サムスン」が両用されているが、最近の特許庁公開では「サムソン」であるから、知財専門家としては「サムソン」と標記するのが適切とも思うが、「サムスン」の方が韓国語の発音には近いから、適宜両用する。
(1) サムソンエレクトロニクスカンパニーリミテッド「改善された高周波特性を有する高周波送信モジュール」(特許庁公開日2011-09-15)→ 高域電力増幅部・低域電力増幅部・LC整合回路部・アンテナスイッチ回路を含むことができる高周波送信モジュールを提供する。
(2) サムソンエルイーディカンパニーリミテッド外1名「窒化物系発光素子及びその製造方法」(特許庁公開日2011-09-15)→ p型クラッド層と反射層との間に亜鉛・インジウム・スズのうちすくなくとも一つの金属または合金で形成された金属層を介在させるなどによる窒化物系発光素子及びその製造方法を提供する。
(3) サムソンエルイーディカンパニーリミテッド「マルチセルアレイを有する半導体発光装置、発光モジュール及び照明装置」(特許庁公開日2011-09-15)→ 複数の発光セルが配列された構造に関する。
(4) サムソンエレクトロメカニクスカンパニーリミテッド「LCDバックライトインバータ及びLCDバックライトインバータの動作方法」(特許庁公開日2011-09-15)→ LCDバックライトのランプを駆動するためのインバータに関する。
(5) サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド「メディア独立ハンドオーバー(MIH)プロトコルについての情報を伝達するアクセスポイント及び方法」(特許庁公開日2011-09-08)→隣接する異種のサブネットを管理するアクセスポイントが、メディア独立のハンドオーバーを行うことに関する情報伝達の方法を提供する。
(6) サムスンコーニング精密素材株式会社「太陽電池基板及びそれを含む太陽電池」(特許庁公開日2011-09-01)→ 高温において抵抗値の増加または光透過率の減少などの性能低下を発生しない耐熱性太陽電池基板及びそれを含む太陽電池を提供する。
(7) サムスンコーニング精密素材株式会社「太陽電池基板及びそれを含む太陽電池」(特許庁公開日2011-09-01)→ 長波長領域において優れた光透過率特性を有する太陽電池基板及びそれを含む太陽電池を提供する。
(8) サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド「平板表示装置」(特許庁公開日2011-09-01)→ 薄型化及び軽量化を図ることができる平板表示装置を提供する(導光手段と輝度向上手段)。
(9) サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド「薄膜トランジスタ表示板及びこれを含む液晶表示装置」(特許庁公開日2011-09-01)→ 画素電極とデータ線との間で発生する寄生容量が均一な薄膜トランジスタ表示板及びこれを含む液晶表示装置を提供する。
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2011年9月18日日曜日

ヤマハ発動機がベトナム向け現地製スクーター「Nozza」発売

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ヤマハ発動機の特許発明活動は益々盛んで、最近の特許庁公開事例を見ても、
(1) 発明の名称「船舶推進機用プロペラおよびこれを備える船舶推進機」(特許庁公開日2011-09-15)→ シフトショックなどの衝撃を抑制することができ、かつ、プロペラシャフトからの駆動力を羽根へ伝達することができ、かつ、岩礁領域を航行しているときの衝撃音を抑制することができる船舶推進機用プロペラおよびこれを備える船舶推進機を提供する。
(2) 発明の名称「船外機」(特許庁公開日2011-09-08)→ コンパクトな構成で、二重反転プロペラを備えた船外機の前後進切替機構を提供する。など。
これらの技術開発を基盤として、ヤマハ発動機の海外比率は約9割に達するが、今月(2011-09)下旬から「2012年ベトナム向けモデルNozzaの現地製造」について次のように発表した(2011-09-14)(SANARI PATENT要約)。
(1) ヤマハ発動機は、長期ビジョン「フロンティア2020」に基いて、「パーソナルモビリティ」「エンジン」の2領域に焦点を合わせ、「新興国市場への低価格二輪車投入」「アセアン二輪車における商品力収益力の向上」「次世代環境対応エンジン」「スマートパワー」の4分野を戦略の柱としている。
(2) 「アセアン二輪車における商品力収益力の向上」については、その取組の一環として今回、ベトナム向け現地製スクーターNozzaを2011秋から発売し、若い世代の女性を中心とする顧客ニーズに応えるスタイリッシュ・ハンディ・コンファタブルを具現する。
(3) ベトナム二輪市場は、300万台規模の年間需要があり(2010実績)、ヤマハ発動機は、この市場向けに専用開発した12インチ小径ホイールのオートマッチック車で、この市場を牽引する。
SANARI PATENT所見
丁度、ヤマハ発動機の業績報告(2011-04-01~06-30)が届いたが、船外機などの販売回復や構造改革によるコスト削減効果などにより、当初予想を上回る増益を示している。
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2011年9月16日金曜日

グリーの米国・中国・韓国展開

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デジタルコンテンツで知財戦略の国際優位を確保するとした内閣知財戦略本部のここ10年来ゲーム業界への期待は、コアゲームからソーシャルゲームへの発展と、わが国ゲーム企業のグローバル展開によって華々しく、かつ、国際競争熾烈化の様相をもって、今次東京ゲームショウに開示された。その開幕当日(2011-09-15)、朝日新聞は「主役はソーシャルゲーム」と見出したトップ記事の冒頭に、「ほぼ中央に、ソニーと同規模の構えでソーシャルゲームの存在感を顕在させたのはGREE(グリー)の展示だ。ソーシャルゲームは、高価なゲーム機やゲームソフトを買わなくても、ゲームを始められるのが特徴だ」(SANARI PATENT要約)と紹介し、同時点で発売された会社四季報最新号もグリーを、「ケータイ向け交流グリーサイト「GREE」を運営、業界大手、アイテム販売と広告が収益源」と特徴付け、更に「増益」と見出して、ケータイソーシャルゲームは積極的にタイトル拡充、他社人気タイトルが好調、自社タイトルも伸び、アイテム販売が更に拡大」と、グリーの大幅な増収増益基調を示している。数値では、売上高は2011-06月期の641億7800万円(前期比82.2%増)が2012-06期は900億円と、40.2%増、営業利益は311億3500万円(59%増)が400億円(28.5%増)と予想している。
SANARI PATENTが特に注目するのは会社四季報の前号にはグリーの「力点」について、「スマホ向けソーシャルゲーム基盤運営の米国オープンフェイント社買収、海外展開の核とし、また、KDDI等と共同でAndroid Application向けファンド設立」と記述(SANARI PATENT要約)していたのが、最新号では「中韓」と見出して、「中国テンセントと連携し、ゲーム会社の中国進出支援開始、北京に現法も設立、韓国SKテレコムとゲーム配信で提携、内外でゲーム開発会社への出資を進める」と解説していることである。2カ月間に、グリーについて注目の的となるその活動領域が、ゲームの内外全業界に及び、社会生活の態様も、遠隔地間交流の密接化によってイノベートする趨勢を、SANARI PATENTは直感する。
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2011年9月15日木曜日

ルミネ有楽町の来月開業に際し、株式会社ルミネの情報充実希望

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ルミネ有楽町の2011-10-28開業を目前にして、テレビ東京WBS(2011-09-14)が有楽町構想の革新性をつぶさに放映するなど、有楽町の「人の流れ」を変革し、ファッションと飲食の楽しさを結び付けるビジネスデザインが益々関心を高めているのだが、株式会社ルミネという事業体は、JR東日本の連結対象子会社111社(2011-09-15現在)の一つとして、表示の順序はその6番目と高位であるものの、経営や財務の状況は十分に開示されているとは言えず、ルミネ有楽町に満員する内外の顧客のためにも、この際、株式会社ルミネの開示情報充実をSANARI PATENTも希望する。
社会人も、レポート作成の学生諸君も、例によって先ずGoogleでWikipedia検索すると思うが、「ルミネ」の項は、「この記事は検証可能な出典が全く示されていないか不十分です」と念押しし、「出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください」と、逆に情報提供を求めている始末である。それでも流石にWikipediaで、「株式会社ルミネは、JR東日本グル-プの駅ビル型ショッピングセンターを運営する企業で、JR東日本の連結子会社」と示し、「ルミネとしてのオープンは、1976年にJR新宿駅南口の駅ビルとして開業した現・新宿ルミネ1が最初であること」、「その後、横浜駅や荻窪駅にもルミネビルが開業したが、駅ビル毎に独立した複数の会社であったのを、1991-04に合併して株式会社ルミネになったこと」、「改装やテナント政策を改善し、駅付帯の立地条件を活かして積極的なリーシング活動を半期毎に押し進めることで急成長し、主要百貨店と伍するほどの存在に台頭しつつあること」などを述べているが、SANARI PATENTは、「半期毎」「のテナント対策に特に注目すると共に、「主要百貨店と伍するほど」以上の流通イノベーションを齎しつつあるものと考察し、情報開示の充実を望む。
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2011年9月13日火曜日

ソニーがウォークマンとスマホを融合

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ソニーは今日(2011-09-13)、「高音質を結集し、Androidを搭載したZシリーズ新登場」と題し、ウォークマン3シリーズ12機種とドックスピーカー・ドックコンポ6機種を発売」と副題し、更に「ワイヤレス対応により、快適な操作性と音楽の新たな楽しみ方を提供」と再副題して、次のように発表した(SANARI PATENT要約)。
(1) ソニーは、ワイヤレス対応により操作性を高め、音楽をより快適に楽しめる「ウォークマン3シリーズ12機種と、ウォークマンの音楽を手軽に楽しめるドックスピーカー・ドックコンポ6機種を発売する。
(2) 今回の新商品ラインアップでは、ウォークマンのフラッグシップモデルとなるZシリーズが登場する。Zシリーズでは、ウォークマン独自の高音質技術を結集すると共に、Androidプラットフォーム上で、音楽プレヤーならではの機能・アプリケーションを搭載し、進化する楽しみを提供する。また、ウォークマンZ/A/S全シリーズおよびウォークマンドックスピーカー3機種でBluetoothに対応し、ワイヤレスで、快適なリスニングスタイルが可能になる。
(3) ソニーは、ウォークマンの豊富なラインアップを通じて、引続き音楽の新しい楽しみ方を提案していく。
(4) 更にウォークマンZシリーズ全3機種は、音楽・映像・多彩なアプリケーションを高品質で楽しめるAndroid搭載の新シリーズで、独自のフルデジタルアンプをモバイル機器向けに更に最適化したS-Master MXなどの高音質技術を進化させ、ウォークマン史上最高音質を実現すると共に、アルバムのジャケット写真を触りながら直感的な操作で選曲できる新アプリケーション「W.ミュージック」や、画面状態に関わらず、いつでも簡単にアクセスできるSelect Appなどを通じて、音楽から広がる新たな楽しみを提供する。
SANARI PATENT所見
「ウォークマン」はソニーの古典的ブランドとして全世界に普及し、その機能の革新が、ブランド名を緯持しつつ、ソニーのグローバルな展開を推進してきた。今次イノベーションは、ウォークマンとスマホの融合、音楽と他コンテンツとの高度融合、Androidのウォークマン形態での最高度活用など、多様な視点で捉え得るが、国際競争力の維持強化が緊急課題であるわが国IT業界の地歩確保開拓のためにも、ソニーの新たな発想の成功が期待される。
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2011年9月12日月曜日

コマツの成形金型の制御装置関連特許権無効の特許庁審決を知財高裁が取消

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原告コマツ(株式会社小松製作所・コマツ産機株式会社)(訴訟代理人・黒川 恵弁理士ほか)勝訴の今次知財高裁判決(2011-09-08)(平成22行ケ10404審決取消請求事件)は、コマツの成形金型の制御装置関連特許の無効審判を被告株式会社アマダが特許庁に請求し、特許庁はアマダの請求を認容して、上記コマツ特許の無効を審決し、コマツがこの審決の取消を知財高裁に訴求して、知財高裁の審決取消判決を得たという内容である。
知財高裁の今次判決により特許庁の審決を覆して有効と判決されたコマツの特許権は、発明の名称を「パンチプレス機における成形金型の制御装置」とし、「パンチおよびダイを備え、ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うと共に、打抜加工も可能なパンチプレス機における成形金型の制御装置」に関する発明である。
特許庁の審決は、コマツの上記発明は先行技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、この発明に係る特許付与は、特許法の「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、法定の先行技術に基いて容易に発明することができたときは、その発明については特許を受けることができない」という規定に違反し、従って、無効であるとしたものである。
今次訴訟において知財高裁は、コマツの発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、発明に作用効果、パンチプレス機について詳細に論究し、先行技術と対比して、特許庁審決における「容易想到性に係る判断の誤り」を究明した。すなわち、コマツの発明と先行技術との相異に関し、「特許庁審決がコマツの発明の成形位置の変更・補正に関する発明を、従来周知の技術であると認定したことは誤りである」などの判断を示し、「先行技術からコマツの本件発明を想到することは容易とはいえない」として、特許庁審決を取消す判決を示した。
SANARI PATENT所見
特許庁の出願審査においては、、コマツの本件発明は特許権付与適格とされ、特許庁審決がこれを覆し、知財高裁は特許庁審決を覆して、特許庁の当初査定による特許権付与が有効とされた事件であり、このように丁重な法的手続を経て「発明に対する特許権付与が確定していく」ところに、特許制度の貴重性が存在する。
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2011年9月10日土曜日

オムロンが、上海貝斯特電器製造有限公司の出資持分100%取得

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オムロンは血圧計などヘルスケア機器メーカーとして生活者にも馴染み深いが、「感知・制御技術を基盤とし、稼ぎ頭は制御機器で、リレーなど電子部品や車載部品を展開し、海外比率51%」と特色付けられるが(会社四季報による)、昨日(2011-09-09)「中国のパワーラッチングリレーメーカーを買収、リレー事業をさらに強化」と題して次のように発表した(SANARI PATENT要約)。なおパワーラッチングリレーは、一般のリレーがコイルへの通電により接点をオンオフするのに対して、駆動電圧が断たれた後も、反転への入力があるまで、セット状態またはリセット状態を保持できる機能を持つリレーである。
(1) オムロンは2011-09-08に、オムロンの中国地域統括会社であるOMRON(CHINA)CO.,Ltd.が、中国のパワーラッチングリレーメーカーである上海貝斯特電器製造有限公司の出資持分100%を取得する出資持分譲渡契約を締結した。
(2) 今後ニーズが急拡大するスマートグリッド市場において、スマートメータは送電網と電力需要者を結ぶインタフェイスとして中心的存在になるが、スマートメータの供給電力を直接入り切りする負荷開閉ユニット向けに、パワーラッチングリレーが使用されている。
(3) スマートメータの導入期である中国市場では(SANARI PATENT考察:  スマートメータ高機能化の程度にもよるが、「スマートメータの導入期である」ことについては、日本も同様)、スマートメータ向けパワーラッチングリレーは大きな成長が見込まれる。
(4) パワーラッチングリレーにおける上海貝斯特電器製造有限公司の中国市場占有率は約30%でトップシェアを有し、また、多品種少量生産とモジュール化による生産性向上によって競争優位を確保している。
SANARI PATENT所見
中国の電力需給規模と電源の多様化は急速に進んでいくから、オムロンが中国のスマートメータ市場に、このように強力な態様で参入したことの意義は、関連部門を含めて、極めて大きい。
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2011年9月9日金曜日

イオン電子マネーと地方公共団体連携

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生活者流通における硬貨使用の不便を脱却するために、電子マネーの流通促進が不可欠だが、イオンは、「埼玉県とイオンの包括的連携協定について」と題し、「連携第1弾として電子マネー「彩の国ハッピーアニマルWAON」発売」と副題して、次のように発表した(2011-09-07)(SANARI PATENT要約)。
(1) 埼玉県とイオン株式会社は、包括的連携協定の締結に合意した。その目的は、埼玉県とイオンの双方がもつ資源を有効に活用し、埼玉県の一層の活性化と、県民サービスの向上の協働することである。
(2) この協定により、埼玉県とイオンは、電子マネー「WAON」の活用や災害対策・県産品の販路拡大など、地産地消・観光振興など14項目について協力する。
(3) その第1弾として「彩の国ハッピーアニマルWAON」を来る2011-09-20から発行する。このカードがイオンの店舗始めファミリーマートやマクドナルド・吉野家など、全国11万5000箇所のWAON加盟店で利用された金額の一部を、埼玉県が行う人と動物が共生する社会を目指す活動に役立てていただく。
(4) 埼玉県とイオンは、この協定を契機として従来以上に、埼玉県の活性化や県民への新サービス創出に連繋して取組む。
(5) 「彩の国ハッピーアニマルWAON」は初年度5万枚を発行し発行手数料は1枚税込300円、チャージ可能金額の上限は5万円、一回当たりチャージ金額(SANARI PATENT注:その「上限」の意と解する)2万9000円である。
SANARI PATENT所見
イオンのWAONの現況は、2011-07-31時点で、累計発行枚数2060万枚、月間利用件数4740万件、月間利用単価1740円、利用可能箇所は自販機・ドライバー端末6万4000箇所を含めた11万5000箇所に達した模様だが、イオンの岡田元也社長の兄・岡田卓也前民主党幹事長などの政策立案にも反映して、生活者の利便と地域住民福祉が連携することも想像される。
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2011年9月7日水曜日

来週初、ワシントンでエネルギー効率グローバルパートナーシップWS会合

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経済産業省は、米国エネルギー省等との共催で、エネルギー効率に関するグローバルパートナーシップの第一回ワークショップを来る2011-09-12~13、ワシントンで開催する。
2010-07の第一回クリーンエネルギー大臣会合で、省エネに関する日米共同イニシアチブとして、この大臣会合および国際省エネ協力パートナーシップのもとに、「エネルギー効率に関するグローバルパートナーシップが設立されたが、このパートナーシップでは、国際的官民パートナーシップの枠組みとして、6つのWorking Groupが活動するが、わが国は、特に鉄鋼・セメント・電力についてセクター別のパートナーシップ活動の継続・拡大を進める。
このたび、上記6WGの今後の活動に向けた準備会合として、来る2011-09-12~13に、第一回Working Shopがワシントンで開催される。このWSには官民のリーダーが集まり、最新のプロジェクト・学術的研究成果の共有のもとに省エネ協力することを目的としていると解される
SANARI PATENT所見
関連略称としてCEM(Clean Energy Ministerial)=クリーンエネルギー大臣会合、IPEEC(International Partnership for Energy Efficiency Cooperation )=国際省エネ協力パートナーシップ、GSEP(Global Superior Energy Performance Partnership=エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ、APP(Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate)=クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップなどが今後頻用され、グローバルな課題であるエネルギー総合政策の「精確な知見に基づく策定」が早期に策定されることを、SANARI PATENTは期待する。
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2011年9月5日月曜日

蛋白質分析装置の革新、シャープ・熊本大学・科学技術振興機構共同発表


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シャープは今日(2011-09-05)、熊本大学・科学技術振興機構と共同して「蛋白質分析装置(2次元電気泳動の完全自動化)の開発に成功」と題し、次のように発表した(SANARI PATENT要約)。
(1) 科学技術振興機構の研究成果展開事業「先端計測分析技術・機器開発プログラム」の一環として、シャープの研究開発本部健康システム研究所と熊本大学大学院生命科学研究部の開発チームは、蛋白質分子の混合物を全自動で分離できる装置を開発した。
(2) この装置は、各蛋白質分子が有する物理的正室の相異を利用して分離する「蛋白質2次元電気泳動法の自動化に成功したものである。この装置の使用により、従来の手作業では2日間を要していた作業時間が、その10分の1、約100分に短縮できる。また、この装置の分析精度(分解能)は、従来法の5倍で、かつ、再現性に優れた結果をもたらす。
(3) この装置と検査用の専用チップは、医療研究分野向けにシャープマニュファクチャリングシステム株式会社が、本月(2011-09)から発売する。
(4) ヒト体内には、遺伝子により生成された数万種類の蛋白質がある(SANARI PATENT注: 分類の視点によって、組織別に例えば筋原線維を作るアクチン・ミオシン、作用別に酵素蛋白質・構造蛋白質・貯蔵蛋白質・収縮蛋白質・防御蛋白質・調節蛋白質・輸送蛋白質、正常蛋白質と異常蛋白質など)。体調変化や疾病などは、これら蛋白質の極めて僅かな変化が引き金になって発生する。近年、蛋白質の微細な変化を捉えて疾病予防に繋げる研究や、その成果をデータベース化する「プロテオミクス」と呼ばれる研究が進められ、全世界で注目されているが、この分野では従来の2次元電気泳動法の操作が非常に難しく、良好な再現性を得るためには、熟練者によっても、多くの日数を要した。
(5) シャープによる今次2次元電気泳動の完全自動化装置提供によって、多数の疾病関連蛋白質解析が行われ、例えば癌の悪性化(SANARI PATENT注: 正確には腫瘍の悪性化であろう。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、細胞増殖の規制が失われて増殖するのが悪性腫瘍であり、良性腫瘍から悪性腫瘍への変異を阻止することが癌の予防である)に関する知見が得られる。
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2011年9月4日日曜日

ヤクルト・プラスチック容器の立体商標、知財高裁で特許庁に勝訴後


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ヤクルト(商号はヤクルト本社)の海外比率は既に25%を超え、中国・台湾・米洲諸国始め31の国域で「飲料ヤクルト」のみでも毎日2208万本(2011-06実績)が販売されているだけに、「ヤクルトプラスチック容器の立体商標」問題の行方も知財専門家として大きな関心事だったが、ヤクルトの年次報告で、「これまでヤクルトプラスチック容器は、ロゴなしの容器について、立体商標の登録が認めらず、特許庁の拒絶査定に対するヤクルトの不服審判請求に対しても、特許庁審決はヤクルトの主張を認めなかったが、ヤクルトは知財高裁に特許庁審決の取消を訴求し、知財高裁はヤクルトの請求を認めた(2010-11-16)」と述べた(SANARI PATENT要約)。「海外で販売されているヤクルトでも同じ形状の容器が使用されており、既に米国・欧州諸国など多くの国域で立体商標登録が認められている」というから、わが国特許庁の過度慎重性(SANARI PATENT注:新型意匠権についても同様)にも再考の必要がある。特にヤクルトは米国において、カリフォルニア洲ファンデンバレー市で、米国初のヤクルト生産工場の建設準備を進めており、2012年に生産を開始するし、知的財産権問題が活発な中国では、天津市で中国3番目の工場を建設し2011年度中に製造販売を開始するから、知的財産権の確立にも十分な配意が必要である。欧州ではオランダで製造し、ベルギー・イギリス・ドイツ・オーストリア・イタリーなどで販売している。今後、経済の急成長が予想されるブラジル・メキシコでのヤクルト製造販売伸長も期待される。
ヤクルトの知的財産関連では、「基礎化粧品ブランド「ikitel」の化粧箱が2011日本パッケージングコンテストで化粧品包装部門賞を受賞したこと」(2011-08-31発表)、「オリゴ糖入り梅ドリンク新発売」(2011-08-11発表)などと共に、先端医薬品分野で、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株含有乳酸菌飲料の継続引用が、粘膜免疫の保持に有効であるとInternational Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism誌電子版に掲載されるなど、ヤクルトの事業関連情報に関心が持たれる。
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2011年9月2日金曜日

株式会社産業革新機構の「知財ファンド」設立など業績の追跡


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東芝・日立・ソニーのディスプレイ新会社設立を7割出資でリードする産業革新機構への関心が再び高まっているが(2011-09-01・C Siteご参照)、この際、これまでの産業革新機構出資事例を顧みて、業績を追跡すべきであろう。
(1) 知財ファンド「LSIP」(エルシップ)への投資→ 「ライフサイエンス系の知的財産を集約してライセンスする事業」を行っている。バイオマーカー、ES幹細胞、癌、アルツハイマーの4分野を対象に、大学・公的研究機関等の垣根を超えて知的財産を集約(ハンドリング)し、価値を高めた上でライセンスし、革新的な技術の実用化や、ベンチャーの創出を通じたライフサイエンス産業の発展に繋げようとしている。エルシップの運営は、大手製薬企業の知財戦略第一線で活躍してきた専門家を中心メンバーとする「知的財産戦略ネットワーク株式会社」(IPSN)が担当している。
(2) リチウムイオン電池先端企業への投資→ ラミネート式リチウムイオン電池のフロンティア企業である「エナックス株式会社」に出資した。エナックスは、現在ケータイや医療機器で普及している円筒型とは異なるラミネート式を中核技術とし、リチウムイオン電池の大型化を通じた大容量化が期待されている。また、多数メーカーとの共同開発を通じて、安全性・充放電性能を高めている。
(3) パワーデバイスメーカーへの投資→ 低炭素社会の実現に向けた電気エネルギーの効率的な利用の必須要素であるパワーデバイス領域の戦略的なオープンイノベーションを推進すべく、日本インター株式会社に出資した。日本インターは、国内では数少ないパワーデバイス専業メーカーの一つで、海外ビジネスに長じた経営体制のもとで、世界シェアが高い製品と最先端設備を有し、成長に向けたオープンイノベーションに積極的である。産業革新機構はこの投資を通じて、最先端設備の増強、製品ラインナップの拡充、先端技術製品の共同開発に必要な資金を供給すると共に、外部人材の活用を通じてマネジメント体制を強化し、国内外のパワーデバイスメーカーとの段階的再編を目指している。
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産業行政の在り方の一つとして極めて注目すべきであり、グローバルな国際競争力確立の国家戦略として成果を挙げることが切望される。
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2011年9月1日木曜日

イトーヨーカ堂の製造小売、イエナカ新ブランド、サイズ新標準・多機能性


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イトーヨーカ堂が衣料改革を推進するとして、「イトーヨーカ堂初のSPAモデル(SANARI PATENT注: 製造小売方式)を導入し、衣料改革を推進、デイリーカジュアルの新プライベートブランド誕生!」と題し、「グッデイ」(good day)の意匠を披露した(2011-08-31)。製造小売方式と言えば、衣料ではUNIQLO、家具等では良品計画(無印良品)の大成功例があるが、イトーヨーカ堂は、デイリーカジュアルすなわち普段着にファッション性を導入し、セミ外出着化すると共に、サイズの合理的な標準化によって購入の際の簡便さを増す意図と、SANARI PATENTは解する。勿論、イトーヨーカ堂が「衣料改革」と呼称する以上、ヒートテックやクールビズの素材材質革新と共に、カジュアル・フォーマルの中間領域の衣料革新や、下着と上着の一体化などの、衣生活イノベーションを、「ユニクロ型化」などという追随ではなく、独自創出の革新をもって実現すると見るべきである。
上記発表の内容(SANARI PATENT要約)は、
(1) イトーヨーカ堂は、カジュアルファッションの新プライベートブランド「good day(グッデイ)」を2011-09-01から、全国のイトーヨーカ堂約150店舗で販売する。
(2) グッデイは、20~40代を中心としたレディス・メンズを対象に、イエナカおよび、ちょっとした外出時のデイリーカジュアルとしての着用を想定したプライベートブランドである。
(3) 商品によって異なっていた従来のサイズ基準をレディス・メンズ等に規格統一し、素材や機能・着心地の良さと、豊富なカラーバリュエーションを揃えた。
(4) 2011年秋には、キッズ向け商品と肌着の発売も予定している。
(5) 商品開発においては、イトーヨーカ堂として始めて、商品の企画・製造から販売まで一貫して自社でコントロールし、また、トレンド情報に対するクイックレスポンス体制を構築した。
SANARI PATENT所見
スーパーマーケト業界に革新をもたらす意味でも、今次イトーヨーカ堂の発表は画期的意義を持つことが、今後明白になると予想する。
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