2011年10月31日月曜日

日本経済新聞刊「日本の優秀小売企業の底力」の問題点

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
日本を始め、内需の振興がグローバル経済の課題である現況下で、「優秀企業の底力」というテーマは極めて時宜に適している。矢作敏行商学博士編著の上記書は、「優秀小売企業」として「イズミ:地域密着型経営の徹底」「ヨークベニマル:全員参加型の店舗実行能力」「セブン・イレブン・ジャパン:単品管理に基づく連続的な業務革新」「コメリ:独自業態の開発・展開」「ニトリ:製・販・配統合型バリューチェーンの構築」「ヤマダ電機:機動的な出店戦略と後発の有位性」「ファーストリテイリング:スーパーセグメントを深耕する商品調達ネットワーク」「大丸松坂屋百貨店:店舗運営改革」「湖南平和堂:現場市場への適応化」の8優秀小売企業を実証研究した成果を収めている。「まえがき」にも、「現代小売企業の中から、主要分野の優秀企業を体系的に選び出し、小売事業システム全体の比較分析を行っていること、また、従来の小売業態論(市場戦略論)を超えた「市場戦略論+組織能力論」の観点から、持続的な競争優位性を示していることの2点が、類書にない特徴であると自負している」と述べていることにも同感する。
一方、実証研究の対象を上記8企業としたことから、体系的に、2つの重要な視点を、今後の発表における補完に待つことを、佐成重範弁理士は先ず指摘したい。
一つは、「店舗小売・通販小売併用の小売業態」「ネット(テレビ・ラジオ・SNSを含む)小売通販」を包含する「通信販売小売業」について、楽天のような企業を論述対象とすべきであること、他の一つは、「百貨店・スーパー・コンビニなど、複数小売業態を総合経営する業態について、イオンのような企業を論述対象とすべきであることである。更には、海外市場展開小売企業、異業種企業の子会社たる小売企業(ルミネなど)の業態に論究が及ぶことが、わが国当面の経済政策にとっても緊要である。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月30日日曜日

製品の世界シェア低下でも、部材の世界シェアは圧倒的に

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
液晶テレビも太陽電池も、日本製品の世界シェアは著減しているが、これら世界製品の主要部材の世界シェアは、極めて高率な日本産品も多いから、総合すれば失意と意欲が混在する現況である。例えばクラレは、液晶パネル向けPoly-Vinyl-Alcohol樹脂堅調で、世界シェア8割と目されるから、液晶テレビの世界総需要の増大は、クラレの業績向上に直結し得ることになる。東レの炭素繊維世界首位、帝人の同世界2位は、相携えて世界航空機・電気自動車の構造材料として遍在し、日本シェアを維持向上すると予想される。
翻ってクラレの動向を見れば先日(2011-10-05)、「偏光フィルム向け光学用ポバールフィルム生産設備の増設について」と題し、「業界初! 5000mmクラスの広幅タイプを生産」「大型液晶テレビの効率的な生産に貢献」と副題して、次のように述べている(SANARI PATENT要約)。
(1) 液晶ディスプレイ市場は、液晶テレビの世界的な普及に伴い着実に成長し続け、特に40inch以上の大型液晶テレビは、今後大きな伸びが見込まれる。
(2) クラレが今回増設する新系列では、大型液晶テレビ向け偏光フィルムの生産効率向上のため、業界初となる5000mmクラスの広幅タイプの生産を実現する。
(3) 増設場所は愛媛県西条市で、年産能力3200万m2、2013-06始動予定である。
佐成重範弁理士所見→ クラレの特許発明開発は益々活発で、特許庁公開発明件数も9465件(2011-10-30現在)に達するが、うち、今月(2011-10)公開のもののみでも49件に及ぶ。例えば(SANARI PATENT要約)、
(1) 「高分子トランスデューサ、高分子固体電解質及びその製造方法」(特許庁公開日2011-10-27)→ 軽量かつ柔軟で、水の無い環境においても安定的に機能し、可撓的にも優れた高分子固体電解質を具備し、耐衝撃性に優れ、変形センサとして使用した場合、大きな電圧信号が得られる高分子トランスデューサを提供する(SANARI PATENT注: トランスデューサ(変換器)は、情報転送などの目的で、物理量やエネルギーの種類を電気信号や他種エネルギーに変換する機器)。
(2) 「高周波回路基板」(特許庁公開日2011-10-27)→ 高周波用途における電気信号の伝送損失を低減すると共に、熱可塑性液晶ポリマと金属箔回路との密着性が高い、高周波回路基板を提供する。
(3) 「高分子電解質、高分子電解質膜、膜・電極接合体および燃料電池」(特許庁公開日2011-10-27)→ 新規な高分子電解質、この高分子電解質から成る高分子電解質膜、この高分子電解質膜を備える膜・電極接合体、および、この膜・電極接合体を備える、出力特性。湿潤時機械的耐性を両立した燃料電池を提供する。など。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月29日土曜日

「新製品新開発」と「旧製品新CM」の選択肢

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
知財立国の内閣知財戦略本部の戦略では、「新製品新開発」と「新製品新意匠・新コンテンツ」などを並進させ、新製品の新宣伝による内外市場拡大を継続すべきこととなるが、企業の立場では、新製品新開発は、とにかくコストが嵩む戦略であり、旧製品を新意匠・新コンテンツ(宣伝態様)で新拡販する方が遥かにコスト低減になる、という実例を、資生堂・末川久幸社長のインタビュー(東洋経済2011-09-10)応答で「成程」と思ったので、他業種でも参考にすべきかと考え、以下に、その応答部分を引用要約する。
(1) 2011期からは、新製品の品目を従来の半数に絞り、ロングセラーを育てる戦略に転換した。
(2) 早速その成果が出始めた。今春、主力ブランド「マキアージュ」では口紅の新製品開発を見送り、昨秋投入した「落ちにくいこと」が特長の口紅を再プロモーションした。
(3) 新製品の売上高は一般的に、発売後Ⅰ年経つとL字カーブで、発売当初売上高の2%にまで落ち込んでしまう。そこでこの口紅では、「どのように塗ったら落ちにくくなるか」の使用方法が分り易く伝わるよう、CMを見直して、「見せ方」を変えた。すると売上高は、販売当初よりも高くなり、V字回復となった。」
佐成重範弁理士所見→ 「新製品か新CMか」が課題であるのと同様、「店舗販売かネット販売か」も課題だが、この場合は、択一課題ではなく、いずれに傾斜または並進するかの傾斜課題であると共に、「ネット販売」を「資生堂製品ショッピングモール」として構えるか、「異業種企業も招く共同ショッピングモール」
として構えるか、の選択を要する。末川社長が後者を選択された理由も、上掲誌に詳しい。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月28日金曜日

小売業態の多様化に即応する店舗ブランド戦略

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
イオンは、その今次中間報告書で、「当中間期は国内小売業No.1の売上高を記録すると共に、大幅な増益を達成することができました」と述べているが、イオンの年間売上高2011-02期5兆0966億円、2012-02期5兆1050億円、セブンアイHDは2011-02期5兆1197億円、2012-02期4兆7500億円で(以上は会社四季報)、2011年度上半期は、イオン2兆5099億円、セブンアイ2兆3572億円の実績(以上は両社の各報告)だから、まさに「当中間期でイオン国内小売業売上高に首位に立った」のである。例えば三越伊勢丹HDの売上高が、通年でも2011年度1兆2160億円の規模に止まることと対比して、5兆円の規模は巨大である。(なお、ユニクロ・ファーストリテイリングの2011-08期売上高は8360億円)。
この規模を更に拡大すべく、イオンはブランド戦略の大展開を来る2011-11月に実施するが、その内容を考察すると、イオンという統一ブランドを強調するメリットと、小売業態の多様性に即応するブランドの個別性を、共に充足しようという店舗ブランド戦略を明確に察知できると、SANARI PATENTは考える。
すなわちイオンは、基本理念「地域」を掲げ、「地域の暮らしに根ざし、地域社会に貢献し続ける企業集団である」としており、地域特性に適応すると共に、「経済のアジアシフト」「人口の都市シフト」「人口のシニアシフト」という3つのメガトレンドに同時即応しようというのであるから、アジア・大都市・シニアの各市場に適応することを明示する市場特異的ブランドを揃えることも必須の戦略である。「イオン」「イオンタウン」「まいばすけっと」「オトナギコレクション」「カジタク」(家事サービスの宅配)、「イオンバイク」等々、地域・サービスの多様性に即応する店舗であると共に、イオン傘下であることの信用性を明示する「特徴ブランド」の選択を、イオンは今や強力に展開しようとしていると、佐成重範弁理士は刮目している。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月27日木曜日

「小さい車はエコ」標榜のダイハツ工業、海外生産好調、特許発明活発

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
ダイハツ工業のHPは「「小さい車はエコ」で始まるが、グローバルなエコ時代を反映して、国内不調のダイハツ工業も最近、海外で軽自動車販売が好調と報告した(2011-10-26)。すなわち、2011-09の海外生産合計が3万4059台で、前年9月比170.2%と著増した。国内生産が5万9248台で89.8%に減少したが、9月のグローバル生産合計は9万3307台、前年9月比108.5%を示した。なお、国内海外とも、生産台数はOEM(SANARI PATENT注:発注元ブランドでの受託生産で、富士重向け。今秋からトヨタ向けも)を含む。国内生産は、東日本大震災により減産だが、海外生産はインドネシア・マレーシアで大幅増加し、2年連続で前年同期実績を上回ると共に、4~9月度としては過去最大台数になったと、ダイハツ工業はコメントしている。
従って会社四季報も、「ダイハツ工業はトヨタ自動車グル-プで軽自動車首位。海外29%。生産は6月に正常化。2011-09に投入の新型軽自動車「イース」は低燃費と低価格両立」と評価している。
特許発明の開発も活発で、最近の特許庁公開事例としては(SANARI PATENT要約)、
(1) トヨタほか1と共同出願で、「ソフトスイッチングコンバータ」(特許庁公開日2011-10-20)→ ソフトスイッチングコンバータにおいて、サージ電圧によるスイッチ素子の耐圧破壊を抑制する。
(2) ダイハツ工業ほか1「カソード触媒およびその製造方法、および、燃料電池」酸素側電極(カソード)における酸素還元反応を活性化させ、発電性能を向上するカソード触媒およびその製造方法、および、燃料電池を提供する。
(3) ダイハツ工業「車両衝突シミュレーション方法」(特許庁公開日2011-10-20)→ 車両の衝突時において、スラックを有する状態でシートベルトに拘束された搭乗者の胸部の減速度特性をシミュレーションする技術を提供する。
(4) ダイハツ工業「運転支援方法および運転支援装置」(特許庁公開日2011-10-20)→ 自車両や車車間通信の通信相手の他の車両の位置を車車間通信を行う全ての車両において、より高い精度で推定できる技術を提供する。など。
佐成重範弁理士所見→ 特許発明、いずれも即実用的である。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月26日水曜日

ITの業態多様化、テクマトリックスのNTT等連携拡大と技術開発

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
次世代ITへの展開、内外産業環境の変動によって、IT諸企業の業態は益々多様化するが、昨日(2011-10-25)、業績予想の大幅上向き修正を発表したテクマトリックスは、「情報基盤事業とアプリケーション事業との2本柱」「クラウド型ビジネス強化」「楽天と事業提携」で特色付けられるが(会社四季報)、提携先拡大と独自技術開発の並進に、SANARI PATENTはその特色を見出す。
先ず2011-04-01~09-30の半期業績は、売上高75億円(前回予想比10.3%増)、営業利益4億6000万円(1.84倍)、純利益2億1000万円(1.91倍)と大幅修正されたが、注目されるその理由は、次のように述べられた(SANARI PATENT要約)。
(1) 大震災の影響による厳しい経営環境を懸念していたが、諸企業は震災後、事業継続計画や、システム障害の最小限への抑制と予防のためのインフラ関連IT投資を増加した。
(2) また、災害対策の一環として、クラウド関連需要が喚起された。
(3) 更に、対大手企業・対政府のサイバー攻撃発生により、セキュリティ関連製品の需要も増加した。
(4) 特に情報基盤事業では、主力の負荷分散装置が、クラウド関連やデータセンタ向け需要増により持ち直した。アプリケーション・サービス事業では、医療分野やCRM(SANARI PATENT注:Customer Relation Management: 顧客関係化管理)分野のクラウド・サービスが順調に業績を伸ばした。
企業間提携関係では先日(2011-10-13)、株式会社インターネットインシアティブとのクラウド型ストレージサービスに関する業務提携契約締結を発表した。仮想化技術の構築・サポートを含む。既に2011-07-12には、イーソル株式会社とのソフトウェアアーキテクチャ分析ツール利用のサービス提供についての連携契約を発表している。また,2011-06-01にはケンコーコム株式会社ドロップシップサービスの業務効率化についての業務提携を発表している。ドロップシップサービスとは、ネットショップで注文が入った時点で、それをメーカーや卸売業者から購買者に直送させるネットショップの運営形態である、とテクマトリックスは解説している。
NTTデータとのクラウド関連連携や、ケンコーコムとのネットショップ関連の連携は、既に開始している。
これらの企業提携と共に、テクマトリックス独自の技術開発も活発で、最近の特許庁公開・テクマトリックス特許出願の発明としては、「遠隔読映システムおよび読映管理装置」(特許庁公開日2011-05-19)、「コール管理システム、コール管理装置、コール管理方法およびプログラム」(特許庁公開日2011-03-24)などが見られる。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月25日火曜日

工業用ミシン世界1位、海外比率8割超のJUKI動向

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
国際経済情勢が不透明な現況下、JUKIは「工業用ミシン世界1位、海外比率8割超、業績増勢」(会社四季報)と評されているが、「家庭用は3位だが訪問販売撤退で縮小」(同)と評される家庭用ミシンについても、「JUKI工業用ミシンの技術を取り入れた家庭用中級コンピュータミシンを2011-10新発売」など、流通経路を合理化しつつ、内外に展開すると、SANARI PATENTは予想する。JUKIは、「このミシンは、ミシンキルターや洋裁の上級者など、ソーイングレベルの高い層にもご満足いただける縫い性能や使い易い高級シリーズの基本性能を継承しつつ、縫い目の種類や機能を絞り、よりシンプルで購入し易い価格にした新シリーズです」と解説している(2011-09-29)が、機能を選択集中して低価格化すべき国際時流に、まさに適合する方向と、佐成重範弁理士は考える。
特に工業用家庭用とも需要増必至の中国市場について、「中国上海市での合弁製造会社設立」を発表(2011-09-21)したが、その内容(SANARI PATENT要約)は、「JUKIは、工業用ミシン製造子会社である「重機(上海)工業有限公司」の電子工場を、シークス株式会社(大阪市)と合弁で設立する新会社に譲渡し、工業用ミシン等で使用している電子回路基板実装品や電装ボックスの製造を委託の上、コストダウンを推進すると共に、電子部品の効率的かつ安定的な調達を推進します」という目的で、2012-01創業開始予定だが、現下グローバルな課題とされるサプライチェイン確保とコストダウンの同時達成を目指すものと、SANARI PATENTは評価する。
JUKIのグローバル提携については、会社四季報が「台湾ミシン大手と提携、手薄だったニット用製品のOEM受託開始、縫製パターンを大量記憶できる高性能ミシン発売、縫製作業の機械化進むアジアで拡販」と、適切に要約しているが、上記機能選択と高機能化の両面を、仕向け先対応で並進するところに、JUKIの発展性が見られる。「JUKI、円高圧迫でも営業益上振れ」(会社四季報)という元気度に注目する。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月23日日曜日

プラスチック成型品向け高光沢・高復元性塗料を長瀬産業開発

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
わが国産業の国際競争力強化の視点は数多いが、遍在するプラスチック成型品の美観を向上し維持する塗装の質が、その一つであることには疑問の余地がない。この意味で、「塗料・合成樹脂等の化学品専門商社首位の長瀬産業」(会社四季報)の特許庁公開発明「塗料組成物および皮膜」(特許庁公開日2011-10-20)も注目される。その「課題」は、「プラスチック成型品の表面に塗膜を形成した場合に、高光沢で外観良好な塗膜を与えることができ、かつ、擦り傷をつけた場合に元の状態に戻る復元性を有する塗料組成物を提供すること」とし、解決手段として「所定の重量平均分子量を有するアクリルポイオール等、所定物質を含有する塗料組成物」を示している。
同様に合成樹脂製品の美観と機能性を共に高める発明として、「樹脂着色剤および樹脂組成物」(特許庁公開日2011-10-20)も注目される。その「課題」は、「耐熱性・耐候性に優れ、連続ショット時の金型の汚染を抑制し、かつ、高い漆黒性を提供できる樹脂着色剤、および、それを用いる樹脂組成物を提供すること」とし、解決手段として、「カーボンナノチューブを主成分として含有するなどの組成による樹脂着色剤」を示している。
遡って、発明の名称「ランプリフレクタ成形体」(特許庁公開日2011-04-14)も、その「課題」は、「耐熱性と剛性を備えながら、表面平滑性に優れるランプリフレクタ成形体を提供すること」とし、解決手段として、「固定金型部と可動金型部から成る金型を、金型締め工程、該金型キャビティ内で熱可塑性樹脂を成形する工程などと、含有すべき樹脂の質量と含有率を示している。
佐成重範弁理士所見→ 合成樹脂成型品の機能性と美観を共に高め、金型汚染抑制などの合理化効果を伴う発明は、国際競争力激化の環境において極めて重要である。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください

ラベル:

2011年10月22日土曜日

新日鐵の経営環境と、オープンイノベーション進展、その効果

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
新日鐵の業務ニュースが届いたが、「東アジアの鉄鋼需給が悪化する懸念もあり、国内は、民間需要が回復に転じ、持ち直しに向かうと考えられるが、足下の国内鋼材在庫は極めて高い水準にあり、国内外ともに鋼材需給動向を注視する必要がある」として、「実需に見合った生産対応、コスト低減により、2100年度上半期経常利益1100億円、通期2300億円と示している。
広義のオープンイノベーションに当たると思うが、他社との技術協力が活発で、本年度開始来、
(1) 米国エクソンモビールから、高強度ラインパイプ用鋼管の敷設溶接技術のライセンス供与を、世界で初めて受けた(SANARI PATENTリライト)。→ 一般的ガスパイプラインでの使用製品の1.5倍の強度で、高圧・大径輸送による経済性に優れたパイプラインの敷設を可能にし、遠隔地ガス田開発に大きく寄与する。
(2) 東邦チタニウムと共同で、チタン薄板用直接鋳造チタンスラブの量産工業化技術の開発に、世界で初めて成功した。→ 電子ビーム溶解法により製造工程を省略し、工期を短縮し、省エネする。
(3) 新日鐵とブラジル・ウジミナスウニガルとの合弁会社ウニガルが設備増強→ 自動車用鋼板を中心とする高級鋼を安定供給する。
(4) 新日鐵と日本郵船が世界で初めて開発した原油タンカー用高耐食性厚鋼板の製造と基準認証→ 防食が義務付けられる原油タンカー・貨物タンクに対して、正式に塗装レスで使用可能化。
(5) 新日鐵とJFE、双日、天然ガス金属鉱物資源機構と、韓国の国民年金基金が構成する日韓連合は、ニオブ生産量世界トップのブラジルミネラソンの株式の15%を取得した。→ ニオブは高級鋼材の生産に不可欠なレアメタルで、その安定供給に資する。
(6) 新日鐵化学と昭和電工は、スチレンモノマー製造会社を設立した。→ アジア市場への輸出競争力向上。
佐成重範弁理士所見→ 来年10月の住金との合併により、新日鐵技術のオープンイノベーションが更に画期的に展開すると予想する。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月21日金曜日

日本触媒の光記録媒体用光重合性樹脂組成物発明等

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
来月(2011-11)上旬に入ると、主要各社の2011-04~09上半期の業績発表で、産業動向が示されるが、nikkei webは、これに先立ち「日本触媒、4~9月営業利益3割増の180億円で予想以上の過去最高、高吸水性樹脂好調」など先行報道し、大勢と共に各業種各企業の方向性を機敏に考察する必要を示している。
60年も前、1952年には佐成重範弁理士は通産省軽工業局有機化学課の総務班長を務めていたが、有機合成工業の基礎物質・無水フタール酸と言えば、日本で1941年に始めて、その工業化に成功したのが日本触媒で、1950年代からのわが国石油化学工業創成時代には、日本触媒の独自触媒技術が日本産業の急成長を起動したことを回想する。
日本触媒の特許発明で特許庁公開件数は6540件(2011-10-21現在)に達するが、最近の開発状況も次の公開事例に見るように活発である(SANARI PATENT要約)。
(1) 発明の名称「固体酸化物形燃料電池用電解質シートおよびその製造方法、並びにそれを用いた固体酸化物形燃料電池用セル」(特許庁公開日2011-10-20)→ シール性に優れ、電極などを高密着性で接合でき、発電特性を保持する電解質シートを提供する。
(2) 発明の名称「光記録媒体用光重合性樹脂組成物、硬化物及び光記録媒体」(特許庁公開日2011-10-20)→ 硬化性・離型性に優れ、青色レーザ光により記録・再生する光記録媒体の対候性を著しく向上でき、より高信頼性の記録・再生を実現できる光記録媒体用光重合性樹脂組成物、その硬化物及び光記録媒体を提供する。
(3) 発明の名称「位相差フィルムと、これを備える画像表示装置」(特許庁公開日2011-10-20)→ 波長分散性の調整に、重合体以外の材料を用いることにより、設計の自由度を向上させた負の位相差フィルムを提供する。
(4) 発明の名称「水溶性重合体の連続的製造方法、及び、水溶性重合体」(特許庁公開日2011-10-20)→ 無機物の分散性等に優れ、十分な経時的分散性を示すカルボキシル基含有重合体を提供する。
(5) 発明の名称「重合体の分子量の制御方法」(特許庁公開日2011-10-20)→ 単量体成分を重合させる際に、得られる重合体の分子量を容易に制御できる、重合体分子量の制御方法、および、分子量が制御された重合体を容易に製造できる製造方法を提供する。
佐成重範弁理士所見→ 高吸水性樹脂のほかアクリル酸エステルが好調であり、自動車塗料向けを拡充すると共に、現・海外比率約5割を、韓国LGとの合弁順調や、インドネシア工場増設を基盤として、更に拡大すると予想する。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月20日木曜日

Du Pont (デュポン)発明の特許庁公開件数、今月既に20件

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
特許出願人としては、「イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー」と表記されているが、E.I. du Pont de Nemours and Company だから、以下「デュポン」と呼ぶ。Wikipediaには、「米国の化学会社、規模は世界第3位、米国で2位。創業1802年。フランス革命で同国から国外逃亡した人々すなわちユグノー出身者のE.I. Du Pontが創業。 現在は、メロン・ロックフェラーと並ぶ三大財閥の一」と紹介されている。HP冒頭に「Together, we can solve the world’s greatest challenges, see what we’re doing」と意欲旺盛で、今朝(2100-10-20)のNews and Eventsにも、「Du Pont Successfully Completes Yender Offer for Danisco」始め、活発な企業行動が列記されている。
わが国特許庁によるデュポン発明の公開件数も、公開日2011-10-01~19のみで20件を数える。例えば(SANARI PATENT要約)、
(1) 出願人:イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー「可撓性ポリマー基板と原子層蒸着され、気体透過バリアとを含む物品」(特許庁公開日2011-10-13)→ プラスチックまたはガラス基板と、原子層蒸着によって製造された大気透過バリアを含んで成る物品を提供する。
(2) 出願人:帝人デュポンフィルム株式会社「ポリエステルフィルムおよびそれを用いたデータストレージ」(特許庁公開日2011-10-13)→ 記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージのベースフィルムに用いても、優れた電磁変換特性を発現できるポリエステルフィルムおよびそれを用いたデータストレージを提供する。
(3) 出願人:帝人デュポンフィルム株式会社「ハードコートフィルム」(特許庁公開日2011-10-13)→ 低ヘイズでギラツキが少なく、かつ、良好なニュートリング防止性を具備するハードコートフィルムを提供する。
(4) 出願人:デュポン神東・オートモティブ・システムズ株式会社ほか1「カチオン性電着塗料組成物の塗装方法」→ 鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含有せず、限界の防錆性および無処理鋼板上での防錆性において、優れた塗膜を形成するカチオン性電着塗料組成物の塗装方法を提供する。
(5) 出願人:三井・デュポンポリケミカル株式会社(特許庁公開日2011-10-13)「複合容器」→ 外側の透明樹脂外装体を介して内部の樹脂中空成形体を視認した場合に、樹脂中空成形体の外形・輪郭などを明瞭に識別でき、これにより樹脂中空成形体による意匠性を十分発揮できると共に、樹脂中空成形体と外側の透明樹脂外装体との組合せによる意匠性をも発揮できる複合容器を提供する。
佐成重範弁理士所見→ 上記のほか、本月13日特許権公開は、「帯電防止離型性ポリエステルフィルム」「離型フィルム」「電気絶縁用二軸配向ポリエステルフィルム」など。6日付けでは「シート状太陽電池封止材」「液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物」など、先端分野の間断ないイノベーションを覚知させる。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月19日水曜日

クラウドに関する特許発明開発の活況

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
クラウド利用の消費者への浸透もマスコミされる状況となり(R Site 2011-10-19ご参照)、クラウドの定義を確かめたくもなるが、それはC Site 2011-10-19に譲り、ここではクラウドに関する発明の特許庁公開の活況ぶりを考察する。
(1) キャノン「情報処理装置、帳票データ作成方法、及びコンピュータプログラム」(特許庁公開日011-10-13)→ 管理サーバーへの帳票データのアップロードリクェストをユ-ザ装置から受けた場合に、帳票データのサイズがアップロード可能なサイズを超えるときであっても、帳票データをユ-ザ装置に提供できる情報処理装置を提供する。(佐成重範弁理士考察→ 帳票データのサイズが閾値以下の場合には帳票データをクラウドプタッロフォームにアップロードし、閾値を超える場合には、クライアント装置に対して帳票データのダウンロードを促すという、閾値該当性判断とこれに基く処理機能の発明と解する)。
(2) NTTデータ「リソース連携システム及びリソース連携方法」(特許庁公開日2011-09-22)→ あるクラウドにおいて実行されているサービスを、他のクラウドのリソースを利用して提供する。(佐成重範弁理士考察→ 極めて実用的な発明と考える。クラウド連携管理装置の構成に関する発明である。)
(3) KDDI研究所「クラウドサービス提供システム」(特許庁公開日2011-09-15)→ SDPにクラウドサービスもしくはSPD外にクラウド選択支援サーバを配置し、クラウドサービス群と連携することにより、ユ-ザを煩雑な手続や操作から開放し、無線リソースの利用を図り、ユ-ザ無線の処理付加を軽減し、複数のユ-ザがクラウドサービスを簡単に共有できるクラウドサービス提供システムを提供する。(佐成重範弁理士考察→ SDPは、Session Description Protocol。クラウド支援サーバがSession Initiation Protocolのアプリケーションサーバとして動作する構成)。
(4) 日立ソリューションズ「データ連携システム及びデータ連携方法」(特許庁公開日2011-09-08)→ 連携元システムとクラウドシステムとの間のデータ連携のためのインタフェース、データ変換プログラムの開発工数を低減するデータ連携システム及びデータ連携方法を提供する。(佐成重範弁理士考察→ Enterprise Application Integration、すなわち、複数の業務アプリケーションを統合して一つのシステムとして活用するツールにより、クラウドシステムと連携元システムを接続して構成する発明である。)
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月18日火曜日

住金から、新日鐵住金社発足に伴う世界最高技術水準構想等の通知

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
住金から、新日鐵住金株式会社への統合に伴って「統合新会社発足時に、住金株式1株に対して新日鐵株式0.735株を割当て、統合新会社株式として交付します」などの通知も含み、あと1年足らずで世界第2位の鉄鋼メーカー(しかし住金の通知では断然「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」)として新日鐵住金が出現することへの期待を新たにする。新日鐵住金は、「グローバル展開を加速する」「世界最高水準の技術力を発揮する」「製鉄以外の分野での事業基盤を強化する」「企業価値を最大化して、株式・資本市場の評価を高める」「両社の力を結集して、目標を早期に実現する」の6項目を掲げているが、知財専門家において先ず関心が深い「世界最高水準の技術力を発揮する」ことについては、次の5項目を掲げている。「研究組織を一体化し、開発力を高める」「顧客ニーズへの提案力を強める」「プロセス革新を含む新製造技術を開発する」「省エネ・省CO2など、環境技術で世界をリードする」「劣質原料の使用技術を開発する」。
佐成重範弁理士所見→ 翻って新日鐵・住金の特許庁公開発明件数を見ると、2011-10-18現在で、新日鐵3万9055件、住金1万6366件に達する。最近の公開事例は、
(1) 住金について、
(1-1) 編成車両における各車両機器の動作情報出力方法(特許庁公開日2011-10-13)
(1-2) 管端部のねじ要素測定方法(同)
(1-3) 超音波探傷装置及び超音波探傷方法(同)
(1-4) 鉄道車両用歯車装置における温度測定方法」(同)
(1-5) 鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板ならびにそれらの製造方法(同)、など
(2) 新日鐵について
(2-1) 機械設備の異常診断方法、装置及びプログラム(特許庁公開日2011-10-13)
(2-2) 金属の欠陥検出方法(同)
(2-3) スラグ微粒子の識別方法及び炭酸化処理装置(同)
(2-4) スラグ微粒子の識別方法(同)
(2-5) 微粒子の明度識別方法(同)、などが見られる。
住金・新日鐵の両社に製品分野の特色は従来から見られたが、新会社において特許発明の相乗効果も顕著に発揮されると考える。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月16日日曜日

ダイオード利用平滑回路を用いる発明公開の近況

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
ダイオードの応用は広汎な分野にわたるが、ダイオードによる平滑回路を用いる発明の、特許庁公開が最近も続出しているので、この9月以降に公開された技術を以下例示する(SANARI PATENT要約)。
(1) サンケン電気「スイッチモジュール及びそれを用いた共振型コンバータ装置」(特許庁公開日2011-10-13)→ アクティブクランプ回路で問題であったクランプコンデンサの電圧上昇を解決する。
(2) パナソニック電工「スイッチング電源装置及びそれを用いた照明器具」(特許庁公開日2011-10-06)→ DC-DCコンバータのトランス2次巻線から演算回路の電源電圧を供給するスイッチング電源装置において、出力が小さいときでも、演算回路の電源電圧を確保する。
(3) アイホン「スイッチング電源装置」(特許庁公開日2011-10-06)→ 過電流の発生時におけるコンデンサの放電機能を速やかに能動として、負荷に接続する端子に過電流が残ることを防止し、定格出力電圧が高い場合であっても、安全規格への適合を容易とする。
(4) リコー「クロックリカバリ回路」(特許庁公開日2011-10-06)→ データ信号に長期間エッジが存在しない場合でも、データ受信の耐性を失わず、一定のループゲインを保つクロックリカバリ回路を提供する。
(5) シチズンHD「LED駆動回路」(特許庁公開日2011-10-06)→ 複数のLEDブロックをスイッチングにより切替駆動する場合に、複数のLEDブロックに含まれるLEDの順電圧のバラツキの影響の抑制が可能なLED駆動回路を提供する。
(6) ミツトヨ「整流平滑回路及びこれを使用した変位検出装置」(特許庁公開日2011-10-06)→ 整流平滑回路や変位検出装置において、復調回路にハイパスフィルタと減算器を用いることにより、脈動除去用の低域フィルタを不要としつつ、回路構成を簡素化し、低価格化を図りつつ、高速な整流平滑回路及びこれを使用した変位検出装置を提供する。
(7) パナソニック「電気給湯機の制御装置」(特許庁公開日2011-10-06)→ 従来の突入電流低減回路は、電源が投入されている間、リレー接点を接続するためのリレーコイルに電流が供給、24時間電源を切らない電気給湯機のような機器では、負荷が動作していない待機時にもリレーの電力が長時間無駄に消費されたのをなくする電気給湯機制御装置を提供する。
佐成重範弁理士所見→ 平滑回路利用技術に関する特許庁公開件数は4203件に達するが(2011-10-16現在)、今月に入っても多様な目的をもって続出しており、ダイオード利用平滑回路によるイノベーションは更に展開される。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月14日金曜日

電力需給の変革と利用の高度化に伴う新回路構成の開発

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
Smart Meter やSmart Gridを中核とするSmart Communityの構築は、電気回路構成の新たな創出を基盤として進められる。ここには、特許発明公開が最近頻発しているカレントミラー回路をその例として概観する(SANARI PATENT要約)。
(1) 東芝「電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路」(特許庁公開日2011-10-13)→ カレントミラー回路を用い、電源電圧依存性が小さい電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路(SANARI PATENT注: Phase Locked Loop:位相同期回路)を提供する。
(2) 富士通セミコンダクター「差動増幅器」(特許庁公開日2011-10-06)→ 負荷側に出力を電流で受け渡すカレントミラー回路を備える差動増幅器の動作を高速化する。
(3) エルピーダメモリ「増幅器および半導体記憶装置」(特許庁公開日2011-09-29)→ カレントミラー回路を用いて、容量素子の値をより小さくして、チップサイズの増大を抑制する。
(4) ルネサスエレクトロニクス「基準電流生成回路」(特許庁公開日2011-09-22)→ カレントミラー回路を用いて、PN接合ダイオードを必要とせず、回路電流の温度依存性が概略零となる電流生成回路を提供する。
(5) 新電元工業「低電圧検出回路」(特許庁公開日2011-09-22)→ カレントミラー回路を用いて、電源投入時および通常動作時において、信頼性の高い精確な低電圧検出を可能にすると共に、ICにチップサイズの小さい低電圧検出回路を提供する。など。
佐成重範弁理士考察→ 同一特性のAトランジスタのベースとBトランジスタのベースを並列接続することにより、Bのコレクタ電流がAのコレクタ電流と同一になる回路を、カレントミラー回路(電流鏡回路)と呼ぶが、並列にn個の同一特性トランジスタを接続すれば、基準電流のn倍の電流を流すことができる。この効果を利用する目的によって、カレントミラー回路応用の様々な回路構成が発明されており、上記のように特許庁公開も続出している。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月13日木曜日

「炭都饅頭」の商標出願、知財高裁で出願人が対特許庁長官勝訴

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
商標権は、創作権としての特許権に対して識別子権に分類され、ブランドの核心として、自他識別と出所明示の、企業利益・消費者等保護の極めて重要な機能を有し、知的財産権価値が極めて高く評価される場合も多い。従って、商標権の付与適格性が、個別案件について争われる場合も多いが、「炭都饅頭」の商標登録出願をめぐって、特許庁の拒絶査定に対して出願人が不服審判請求し、特許庁が「請求不成立」と審決したため、出願人は知財高裁にこの審決の取消を訴求し、知財高裁は、出願人の請求を認容して、特許庁の審決を取消すと共に、訴訟費用は、被告・特許庁長官の負担とすると判決した(2011-10-11:平成23行ケ10174審決取消請求事件)。
原告(訴訟代理人・三浦誠一弁理士)の名は、裁判所HPでは「X」と表示しているが、特許庁HPでは江戸健二郎氏(福岡県大牟田市)と明記されている。
特許庁は、出願商標「炭都饅頭」と引用商標(既存商標)「TANTO タント」(両商標の表示はR Site2011-10-13をご参照)を対比して、出願商標が引用商標に類似すると判断し、登録拒絶の査定・審決を行ったが、知財高裁は「類似」判断を否定して、審決を取消した。類否の両者理論を考究することは、商標権の取得・維持のため重要である。本件知財高裁判断(SANARI PATENT要約)は、
(1) 本願商標は、漢字である「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行に、まとまりよく記して成る外観を有し、一方、引用商標は大文字の英文字である「TANTO」の5文字と、片仮名である「タント」の3文字とを、ゴシック体ないしこれに類する書体で、横2段書きして成る外観を有するから、両商標の外観は大きく異なる。
(2) 特許庁は「本願商標の文字の書体は、ありふれたもので、取引者や需要者は、筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる」と主張するが、江戸文字は、骨太で威勢の良い江戸歌舞伎の感性を意匠化すべく考案され、通常の筆書きより強い印象を与える。
(3) 「炭都饅頭」の構成のうち「饅頭」の部分は、和菓子の一種を示す普通名称であって、「饅頭」の文字だけでは自他商品識別力が希薄だが、本願商標からは先ず、「タントマンジュウ」との呼称が生じると言うべきである。「炭都」の部分が要部となるとすることはできない。
(4) 引用商標は「沢山の」という観念を生じさせるもので、本願商標から生じる観念と、明らかに異なる。
佐成重範弁理士所見→ 商標の識別機能において、聴覚識別と視覚識別が併存するが、「タントマンジュウ」が普及していた場合に、「炭都饅頭」が出現したような場合を仮想すれば、「タントマンジュウ」の漢字表記と誤認される惧れも考えられるかも知れない。今次知財高裁判決は、諸般の場合を広く検討して判断している。なお、表意文字の国と表音文字の国では、視聴覚の各識別に留意しないと、日本のカタカナ商標が、同発音の表意文字商標で模擬される。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月11日火曜日

(2) 世界トップのセラミックコンデンサ村田製作所がFinlandのVTI社買収

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
海外比率84%で、世界トップのセラミックコンデンサ・村田製作所が今日(2011-10-11)、「フィンランドVTI Technologies Oyの買収について」と題して次のように発表した(SANARI PATENT要約)。
(1) 株式会社村田製作所はこのたび、VTI Technologies Oy(本社:フィンランド ヴァンタ)の全発行済株式を村田製作所の完全子会社Murata Electronics Europe B.V.が取得することについて、VTI社の全株式保有者との間で、2011-10-10(現地時間)付けで株式売買契約を締結した。
(2) VTIは、1991年に創業した、Micro Electro Mechanical Systemsを基盤とするセンサメーカーで、独自の3D MEMS技術を使った自動車産業向け、医療機器向けシリコンベースの容量センサを開発‣製造しており、その製品は加速度、傾斜、衝撃、振動、角速度、圧力の測定に利用されている。特に、自動車産業用低G加速度センサとCardiac Rhythm Management(心調律管理)における世界トップメーカーである。
(3) MEMSは、デバイスの小型化、高精度化、高信頼性、超寿命化、高強度化、低価格化、低消費電力化等を実現するキーデバイスとして、広汎な分野で市場が拡大している。
佐成重範弁理士所見→ MEMSが、現下諸情勢において最も希求される機能を具備するデバイスであることは明らかであり、村田製作所のグローバルな貢献が今次買収により加速拡大することが期待される。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

KDDI解説スマートハウス、経産省予算スマートコミュニティ

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
KDDIの「TIME and SPACE」最新号が届き、スマートハウスとスマートグリッドの連携による「エネルギー供給・利用の高度情報化」と「エネルギー新時代」実現の構図を、太陽光発電・電気自動車・蓄電池・スマート家電を含む明快な解説が、広く周知されることを願った。大震災関連で、福島県知事と米国先端企業の社長が握手して、広域太陽光発電・集合住宅・工場農作を一体化したコミュニティ復興(復旧でなく)に意気投合している映像が繰り返しマスコミされたのを見ると、KDDIの上記解説も更に、スマートコミュニティ構築との連携のもとで展開されることが望まれる。
一方、経済産業省の24年度予算要求項目としては、新規140億円要求で、「住宅・建築物のネットゼロエネルギー促進事業を掲げている。既存の住宅をネットゼロエネルギーハウスに改修するなどの事業に、事業費の一定割合を補助するものだが、上記スマートコミュニティに直接関連しては、国内4地域におけるスマートコミュニティ実証のため「次世代エネルギー・社会システム実証事業費」として126億円を要求している。「大量の再生可能エネルギーを安定的に受け入れるためには、蓄電池、家電等を活用して、需給を調整するエネルギーマネジメントシステムが必要であり、このようなエネルギーマネジメントシステムを基礎とするスマートコミュニティの構築を目指し、横浜・豊田・京阪奈・北九州で実証する」。なおスマートコミュニティ関連の技術実証事業費として。ほかに28億円を要求している。
佐成重範弁理士所見→ 経済産業省の24年度予算要求から見れば、「送配電系統安定化のための大規模蓄電池開発」(新エネルギー系統対策蓄電システム技術開発20億円)、「太陽光発電等の大量導入と系統安定化の両立のため、系統状況に応じた需要側の最適制御、配電系統の電圧制御についてを開発・実証3億円」、「電力系統のエネルギー損失を低減し大容量送電が可能となる高温超電導ケーブルを、実際の変電所および事業所間に接続して総合的な信頼性実証10億円」が掲げられ、これら全ての整合性のもとに、KDDI解説のスマートハウスも、次世代機能を発揮するものと考える。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月9日日曜日

知財高裁で海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司が、対特許庁勝訴

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
中国企業から日本特許庁への特許出願が著増し、特許要件である進歩性存在の判断が訴訟上で争われる場合も増加が予想されるが、日中の技術交流・相互利益の基盤形成過程として、積極的にそれらの考究に取組むべきである。
今次・原告海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司、被告・特許庁長官「審決取消請求事件」(判決言渡2011-10-04:平成22行ケ10298)は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司が、発明の名称を「逆転洗濯方法および伝動機」とする発明について特許出願したが拒絶査定を受けたので不服審判を請求したが、「請求不成立」と審決されたので、この審決の取消を知財高裁に訴求し、知財高裁は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司(本件訴訟代理人:池内寛幸弁理士・乕丘圭司弁理士)の請求を認容して、上記特許庁審決を取消すと共に、訴訟費用は被告・特許庁長官の負担とすると判決した事件である。
本件発明
(SANARI PATENT要約)は、「下記を特徴とする伝動機構」である。
(1) 駆動力入力端と2つの駆動力出力端を含み、この駆動力出力端の一方が撹拌器軸に接続されていて、この軸をある方向に回転させ、他方は、中空の内槽軸に接続されていて、この軸を別の方向に回転させ、駆動力入力を2つの駆動力出力に変換する歯車箱を含む、双方向駆動を生じさせるための洗濯機での使用に適する伝動機構である。
(2) この歯車箱は、その上端壁および下端壁にそれぞれ軸孔を備え、中空の内槽軸が、前記上端壁に設けられた前記軸孔を通って延在し、かつ、この歯車箱内に回転可能に設置され、二対の歯車軸が、歯車箱の上端壁および下端壁にそれぞれ形成された歯車軸孔に設置され、二対の歯車部がこの二対の歯車軸にそれぞれ設置され、互いに噛み合っている。
(3) 撹拌器軸は、中空の内槽軸の内側に中心を共有して設置され、その中で回転し、撹拌器軸の下端は、前記中空の内槽軸の下端を超えて延在する。
(4) 撹拌器軸の下端に設置された外歯車が前記二対の歯車部の一方と噛み合い、他の外歯車が前記二対の歯車部の他方と噛み合う。
(5) 主駆動軸が、前記歯車箱の内側に設置され、その下端が歯車箱の下端壁の前記軸穴を貫通し、下方・外側に延在する。
(6) 主駆動軸の上端に設置された外歯車が、前記二対の歯車部の前記一方と噛み合っている。
主たる争点は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司のこの発明が「先行技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるか否か」であって、特許庁の査定および審決は、「想到容易」と判断し、特許性を否定したが、知財高裁は、「特許庁が引用する先行機技術と、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司の本件発明とは、技術分野が相異し、設計思想も大きく異なり、想到容易性の判断は慎重でなければならず、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司の発明における組合せの動機付けの存在を主張する特許庁の論も明確でない」等の判断を詳述し、特許庁の主張は採用することができない、と判断した。
佐成重範弁理士所見→ 24ページに及ぶ知財高裁判決文であって、特に「当裁判所の判断」の記述は、想到容易性・進歩性判断の在り方について、重要な示唆を含んでいる。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月8日土曜日

東電がどうなるか、枝野経済産業大臣の対記者応答

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
東電が今後どのように在るか、産業にも生活にも直結する企業だから、関心が極めて深い。2011-10-04(最終更新日10-06)の枝野経済産業大臣の対記者応答(SANARI PATENT要約)は、次のように述べている。
Q1: 「3月時点では、東電は債務超過ではないので、債権放棄を(銀行等に)要求することは困難と、第三者委員会は述べているが、どう受け止めるか。
A1: 専門家諸子の分析結果だから、それを踏まえて対応する。
Q2: 3月時点ではなく、もっと近い時点の状況に基いて特別事業計画を作るべきだが。
A2: 正に、その時点、その時点の財務状況把握により、認可の判断をする。
Q3: その場合、事業計画を立てるに当たり、債務超過であると判断されれば、債権放棄の要請もあり得るということか。
A3: 具体的な可能性について、現段階で述べるべきでないと思うが、様々な法的・経済的ルールに基いて、先ずは運営委員会において、明確な便席と意見が示されると思う。
Q4: 総合資源エネルギー調査会基本問題委員会(2011-10-03)で枝野経済産業大臣は、「この委員会では、妥協点を探るのではなくて、しっかりした事実関係の根拠を確認して、地に足のついた議論をお願いしたい」と言われたが、この委員会の目的は、結論を求めることではなく、事実関係を確認することだと判断してよいか。
A4: この調査会は決定機関ではなく、私がエネルギー基本計画を決定するに当たって、意見を聴く場である。
Q5: 東電には現在、経済産業省の天下り在籍はないと思うが、天下りによる電力会社との不適切な関係が続いているということになれば、他の電力会社にいる天下り者に、退職を求めるなどの対応を考えているか。
A5: 私が経済産業大臣在任中は、経済産業省退職に当たり電力会社に最就職することがないよう、強く求める。
Q6:(SANARI PATENT注: 質問対象が前に戻って)東電の第三者委員会報告書に基いて、原価項目について寄付金の扱いといった項目の見直しの観点の検討となるのか、総括原価方式という制度そのものの見直しをするのか。
A6: 短期的には現行枠組みの下での項目等の見直し、更に、総括原価方式そのもの、発送電分離などについては、一定の時間を要する。
佐成重範弁理士所見→ 上記のほか、東電などの監督企業に、経済産業省の幹部の子女が就職していることについて、ルールや規定を設ける考えはないのか、という記者質問があり、「それぞれ独立した人格に関する問題でもあり、一律一義的にルールのよな形はできないと思うが、疑念を持たれることがないよう、幹部は努力する必要がある」と応答されたことは、適切と思う。
(コメントは sanaripat@gmail.com 送信ください)

ラベル:

2011年10月7日金曜日

(2) 原告サッポロビール被告サントリーHD、特許権訴訟の知財高裁判決

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
本件原告サッポロビールは、本件被告サントリーHDが特許権者である「麦芽発酵飲料」特許(4367790)の請求項1~9について無効審判を請求し、「本件請求不成立」と審決されたので、この審決の取消を知財高裁に訴求した。知財高裁はサッポロビールの請求を認容し、特許庁の上記審決取消を判決した(判決言渡2011-10-04:平成22行ケ10350)。要するに、サントリーHDの本件「麦芽発酵飲料」特許を無効とするサッポロビール(本件訴訟代理人・須磨光夫弁理士ほか)の請求が、知財高裁で認容され、サントリーHDの本件特許権を有効とする特許庁の審決が取消された。
知財高裁における本件争点は、明確性要件違反、実施可能要件違反、新規性・進歩性の有無、審決の判断遺脱の有無である。
本件サントリーHD特許権に請求項1(SANARI PATENT要約)は、「A成分として、麦を原料の一部に使用して発酵させて得た麦芽比率・分が所定値のアルコール含有物」、および、「B成分として、少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得られたアルコール分が所定値のアルコール含有蒸留液」から成り、「A成分とB成分とを混合して成るアルコール分が所定値である麦芽発酵飲料であって、A成分のアルコール含有物由来のアルコール分:B成分のアルコール含有の蒸留液由来のアルコール分の率が所定の比率であることを特徴とする麦芽発酵飲料」である。請求項2以下は、請求項1から、いわば誘導された内容と解する。
上記争点に関する訴訟当事者の主張は、知財高裁の32ページに及ぶ判決文に詳述されているが、知財高裁は、争点の一部について被告サントリーHDの主張を認めたが、新規性・進歩性の有無については、「本件発明のA成分に該当するビールのような麦芽飲料と、B成分に該当する焼酎・ウイスキー・ジンなどの蒸留酒を混ぜ合わせて飲料とすることは、周知のことと認められる」が、「特許庁の審決においては、このことに基く新規性・進歩性の有無に関して判断の遺脱がある」とし、「よってこの審決(サントリーHDの本件特許権を有効とする)は取消されるべきものであるから、原告サッポロビールの請求を容認することとする」と判決した。
佐成重範弁理士所見
この知財高裁判決には、「ドックス・ノーズ」という名称のカクテルが、ドライジンとビールとを特定の割合(オールド・ニュー別)で混合した飲料であること、「ボイラーメーカー」という名称のカクテルがウイスキーをショットグラスに入れ、ビア・マグに沈めるもので、混合処方が開示されていることなどが示され、知財高裁判決文にあまり馴染まない向きにも興味があるかと思うが、発酵酒と蒸留酒の混合という周知の考案に対して、所定値により特許性を充足するため、どのような創作が必要であるかを、この判決から知るべきである。パラメータ発明の類型が想起されるが、パラメータ発明においては一般に、閾値の意味、(その値の内外における効果の差異)が重要であることも考え合わせるべきである。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

日東電工が対特許庁勝訴:重畳フィルム等発明の特許性、知財高裁判決

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
日東電工は、テープ類から総合材料メーカーに発展し、液晶用光学フィルムで成長、ニッチ商品で首位多数である(会社四季報)。日東電工は、その発明「液晶表示装置用重畳フィルムの製造方法、液晶表示装置用重畳フィルム及び液晶表示装置」について特許出願したが拒絶査定されたので、特許庁に対して不服審判請求したが、「請求項不成立」の審決をされ、この審決の取消を知財高裁に訴求し、知財高裁は日東電工(本件訴訟代理人・山丸光一郎弁理士ほか)の請求を認容し、上記特許庁審決を取消した(判決言渡2011-10-04:平成22行ケ10235審決取消請求事件)。
本件発明の特許請求の範囲(SANARI PATENT要約)は、
(1) 「長尺のポリマーフィルムから成り、軸方向に吸収軸を有する偏光フィルムの製造工程」「同じく、長さ方向に遅相軸を有する縦一軸延伸位相差フィルムを準備する工程」「この偏光フィルムと位相差フィルムの積層工程」を含む、
(2) この偏光フィルム製造工程において、前記長尺のポリマーフィルムに軸方向の延伸処理と二色性物質の染色処理を施す、
(3) 上記(1)の積層工程において、前記偏光フィルム・位相差フィルムを、長尺のポリマーフィルムの長さ方向を対応させ、接着層または粘着層により直接接着または粘着して積層させる、
液晶表示装置用重畳フィルムの製造方法。である。
特許庁がこの発明について特許性を否定した理由は、この発明が、先行発明・先行文献に記載された事項を組合せることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、進歩性を欠くことである。
知財高裁は、「先行技術文献には、長尺のポリマーフィルムを横方向(幅方向)に延伸して偏光フィルムを作製する一方、位相差フィルムは縦方向(長手方向)に延伸して作製する工程についても記載されていると見ることは困難である」等と認め、先行技術には日東電工のこの発明を示唆するものを欠くから、当業者が、先行技術により日東電工発明内容の創意工夫を容易になし得たかは極めて疑問であるなどの判断を示し、日東電工の本件発明の特許性を認めて、特許庁審決を取消した。
SANARI PATENT所見
特許性の認定について、特許庁の判断と知財高裁の判断が相異する判決が続出しているから、論点を精緻に学習すべきである。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月6日木曜日

平成24年度資源エネルギー予算要求額増大と「事項要求」の必然性

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
年末にかけて平成24年度予算案の編成が本格化するが、経済産業省は基本的な考え方として、「わが国の最優先課題である東日本大震災からの復旧復興と原子力災害の速やかな収束に加えて、「石油危機以来のエネルギー不安」「後戻りできない空洞化」「世界の成長からの脱落」といった危機を克服すべく、「原子力事故・震災からの立ち直り」「これまでのエネルギー政策の反省・聖域なき見直し」「急激な円高・空洞化への対応」「内需活発化・グローバル化・イノベーションによる新たな成長」の4本の柱に、予算を重点配分するとしている。
従って、資源エネルギー関係の予算要求額増大は必然的であると共に、事項要求の提出も必然的であるが、ここに「事項要求」とは、「省庁から財務省への概算要求において、政策の中身が要求時点で具体化するに至っていない場合に、金額を示さずに項目のみを盛り込む要求方式であって、年末の政府予算案決定時点までに金額を定める方式」であるが、佐成重範弁理士が経済産業省在勤中の「国内石炭年産5000万トン」時代や「石油ボイラ規制法による石炭から石油への徐行転換」時代や「石炭合理化促進法による炭鉱閉鎖」時代のように路線が予定された当時は用いられなかったが、現在のように内外の産業経済情勢の変動が著しい時代には必須の方法であろう。
さらに、平成24年度予算案の編成と3次補正が同時一体化しているが、経済産業省は先ず事項要求として「円滑な原子力損害賠償に必要な交付国債発行枠の確保」「震災対応のための新技術の実証・複合リスクの調査とデータベース構築」を掲げており、この「新技術実証」は、特許発明と深く関わるものと佐成重範弁理士は考える。
敷衍すれば経済産業省は、「これまでのエネルギー政策を反省し、聖域なく見直す。企業や国民の信頼を取り戻す」として次のように述べているが(SANARI PATENT要約)、「取り戻す」ということは「信頼が失われたこと」を率直に認識したものと評価する。
(1) 最優先事項として、電力供給不足への対応に万全を期す。中長期的には、原子力政策の見直し、電力システムの改革、資源・エネルギー安定供給体制の抜本的強化や、持続可能な省エネの実現に向けた取組や再生可能エネルギーの導入を進めると共に、最適エネルギー管理を行うSmart Communityを進め、安全性・安定供給・経済効率性・環境適合の新たなベストミックスを構成する。
SANARI PATENT所見
上記のベストミックスが、エネルギー関連知財のベストミックスと表裏一体をなしている。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月5日水曜日

次世代自動車向け高効率モータ用磁性材料技術開発の新規予算等

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
一次エネルギー源の多様化とエネルギー生産性の向上、及び、スマートエネルギー社会の実現は、いずれも知財開発と表裏一体をなして総合的に進められなければならないから、この意味で、資源エネルギー庁の平成24年度予算要求における新規計上項目の内容が、知財開発の方向性を定める見地からも注目される。以下、その内容(SANARI PATENT要約)を掲げる。
(1) 次世代自動車向け高効率モータ用磁性材料技術開発→新規40億円→ジスプロシウム等のレアアースを使用せず、従来以上に強力な磁性体を開発し、電力消費の半ばを占めるモータについて、エネルギー損失を25%削減する高性能モータを設計・試作する。
(2) IT機器の省電力のための光エレクトロニクス実装システム技術開発→新規60億円→高屈折率・低減衰率の微細な光導波路を形成する光配線や、小型で低損失な光変調器・受光器等の光素子を開発し、エレクトロニクスとフォトヌクスを融合した光エレクトロニクスの実装システム技術を実現することにより、今後電力消費の急増が予想されるサーバ等の電子機器の消費電力を大幅に削減する(佐成重範弁理士考察・ クラウドコンピューティングの規模・機能の急速な拡大・高度化に伴って、そのサーバが大型化し、冷却用電力の消費が急増することなど、この課題は喫緊の重要性を持つ)。
(3) 石炭ガス化燃料電池複合発電技術の開発→新規14億円→石炭ガス化技術と燃料電池とCO2分離回収を組合せた、究極の高効率発電技術実現のため、基盤技術である酸素吹石炭ガス化技術に関する実証試験に加えて、燃料電池とCO2分離回収を併設した実証設備の開発を開始する(佐成重範弁理士考察・ 一次エネルギーとして石炭の可採埋蔵量は石油よりも遥かに多いと見られているが、固体エネルギー源として流動性を欠くため、その液化やガス化は恒久的な難課題とされてきた)。
(4) 石油ガス基地の出荷機能強化→新規8億円→LPガス輸入基地のうち、特に重要な拠点の災害時対応能力を高め、輸入基地が地震や津波等により被災した際に、その基地に代わって被災地域にLPガスを供給できる体制を整備する。など。(その他、C Site2011-10-05ご参照)
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月3日月曜日

今日、経済産業省総合資源エネルギー調査会が議論開始

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
今後のエネルギー総合対策がどのようにあるべきか、国際政治経済との関連もあって、国内経済産業官庁の策定案が決定的になるわけでは勿論ないが、エネルギー行政官庁としての知見の集積を踏まえた議論が、重要な基礎資料となることは疑いない。
その意味で今日(2011-10-03)開催された経済産業省総合エネルギー調査会基本問題委員会第1回会合の中身に関心が持たれる。
先ず委員長は、新日鉄の三村明夫会長、産業界委員は、三井物産・槍田松瑩会長、東レ・榊原定征会長、富士通総研・高橋 洋主任研究員らである。
第1回草々、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長が、「この審議会の「正統性」に対して、一定の留保をいたします」として、次のように述べたことが先ず注目される(SANARI PATENT要約)。
(1) 東電福島原発事故を招いた、原発への過剰な傾斜政策、独占的な電力市場の放置と、天下りなどの癒着、公開ヒアリングでの「やらせ問題」、再稼働への先走りなどで、現状のエネルギー政策体制は、国民からの信頼がないと理解すべきである。
(2) 本来であれば、政治主導によって、審議会の統廃合や所管省庁を変更して、人心一新した場で、新しいエネルギー計画を審議検討すべきところ、未だに、誰も責任を取らず、そうした抜本的な組織改編の動きも見られないことは、国民感覚として理解し難いところがある。
(3) それにも拘わらず、旧来のエネルギー基本計画を作成した体制をそのままにして、若干のメンバーを追加した程度では、本来的な「正統性」を担保できるとは、到底考えにくい。
(4) 従って、私(飯田委員)の参加に当たっては、この審議会の正統性に関して。一定の留保があることを表明し、具体的には、今後のエネルギー政策体制の在り方についても、審議アジェンダに乗せることを提案する。
(5) 今後、複数のシナリオやエネルギー戦略を議論するとしても、大前提もしくはデフォルトが、「脱原発依存」「再生可能エネルギーの飛躍的な普及」「電力市場の抜本的改革」の3点であることを確認したい。
SANARI PATENT所見
この調査会は、今月(2011-10)中旬以降、数回開催し、年末に「ベストミックス等の基本的考え方」を議論し、来春目途に「ベストミックス」の選択肢案を議論し、来夏目途に「新しいエネルギー基本計画案」を議論して、内閣のエネルギー・環境会議の「革新的エネルギー・環境戦略」策定と、予定を連携する。SANARI PATENTの所見としては、上記(5)で言う3前提の内容そのものを議論することから、緊急に力走すべきである。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

「未来開拓技術実現プロジェクト」推進の経済産業省新規予算要求

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
平成24年度予算要求要求の新規項目を見ると、現時点における各省庁の知恵の出しぶりが窺われるが、経済産業省は「未来開拓技術実現プロジェクトの推進」について先ず、次のように述べている。
「かつてない空洞化の危機と、わが国が抱えるエネルギー・環境制約等といった構造的課題を克服し、将来の成長の姿を描くために、既存技術の延長線上にない、夢のある「未来開拓技術」によって日本再生を果たすべく、国が研究開発で新たな道を切り開くべき分野を絞り込み、研究開発投資を重点化する。」
具体的には、新規予算要求として、
(1) 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発(新規40億円要求)→ ジスプロシウム等のレアアースを使用せず、従来以上に強力な磁性体の開発等を行い、電力消費の半分を占めているモーターについて、設計及び施策を行い、エネルギー損失を25%削減できる高性能モーターを実現する。
(2) 超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発(新規60億円要求)→ 光配線、光素子を開発し、電子機器の省電力、高速、小型化が可能となる光エレクトロニクス技術を実現することにより、今後電力消費が急増すると予想される電子機器の消費電力を大幅に(サーバーの場合は3割)削減する。
(3) 革新的バイオマテリアル実現のための人工遺伝子合成技術開発(新規20億円要求)→ 微生物内の遺伝子反応全体をシミュレートし、人工的な遺伝子合成、および、それを微生物に組み入れる技術を開発することにより、革新的バイオ技術による、新材料、医薬品、水素等の高効率生産を実現する。
(4) 先進未来開拓技術基盤整備事業(新規53億2000万円要求)→ 新たな未来開拓技術を生み出す先進的な研究開発に取組み、光回線と電子回路の融合による電子機器の飛躍的な大容量化・省電力化・小型化や、革新触媒とCO2や窒素等の活用による機能性化学品の更なる用途拡大を目指す。
(5) 革新的製造プロセス技術開発(ミニマルファブ)(新規25億円要求)→ 多品種少量生産の半導体製造において、エネルギーコストや設備投資を大幅に削減することが可能な小型製造装置(ミニマルファブ)の開発・実証を行う。
(6) 戦略的国際標準化加速事業(新規13億3000万円要求)→ 実証データの収集等による国際規格原案の開発や、高度な知見を有する人材の活用等を支援すると共に、業界団体等の内部でのコンセンサス形成を必須としない新たな国際標準提案制度(トップスタンダード制度)を活用する企業の国際標準提案に係る取組を促進する。
SANARI PATENT所見
上記(6)の国際標準化戦略関連技術開発は、デジュールスタンダードとデファクトスタンダードの両面から、国際競争力ある特許権取得の必要性を強調してきたSANARI PATENTの主張に合致するものと考える。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

2011年10月2日日曜日

韓国Hyundai Motor Co.(現代自動車)生産方式の優位性と特許出願

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
世界自動車市場における現代自動車の優位化が相次いでマスコミされ、例えばREUTERS PRESIDENTは、「現代自動車は、これまで、トヨタを始めとする日本車の廉価な代替品と見做されてきたが、近頃は品質の面でもトヨタに追いついてきたとされており、2011-01の米自動車販売は、トヨタの16%減に対して24%増加した」と、今次大震災発生前(2011-02-16)に既に報じていた。
従って、例えば東洋経済誌(2011-06-04)も、「トヨタが恐れる「現代」、米中市場で席巻」と題し、「いつの間にか世界3位に躍り出ようとする韓国・現代自動車、いまやトヨタが最も意識している相手だ」と副題したが、「意識」どころか、「世界販売台数が2011年においてトヨタを抜く公算が出てきた」とも報じている。特に注目すべきは、「現代自動車が「廉価」のみでなく「品質」確保を重視し、かつ、そのための方策においてトヨタの「カイゼン」を否定し、「ライン長く作業も単純化」と解説していることである。トヨタ生産方式は、労使協調や長期雇用というトヨタの雇用慣行の上に成り立つシステムだが、現代自動車では、個々の作業者の熟練度を高めて同時に複数の作業をこなせる多能工育成ではなく、生産ラインの作用者の賃金を時間給とし、熟練度の向上よろも指示された仕事の量的完遂のみ求め、カイゼン専門の担当者にエリート人材を別途採用している」と解説したことである。
SANARI PATENT所見
「カイゼン」すること自体は当然必要で、その方法についてトヨタ方式に対する現代自動車方式を打ち出したと見る。両社の労働環境にも依存する選択肢だが、一方、技術革新は両社共に活発である。特許庁公開件数を見ても、トヨタ自動車9万4952件(2011-10-02現在)のうち、今年9月に入ってからの公開件数のみで554件(2011-09-01~10-02)に及んでいる。例えば(SANARI PATENT要約)、
(1) 出願人・トヨタ自動車株式会社「電圧変換システムの制御装置」(特許庁公開日2011-09-29)→ リチウム電池と電圧変換器を含む電圧変換システムの制御において、動作条件の変動があっても安定に動作することを可能にする。
(2) 出願人・トヨタ自動車ほか1「回転電機の冷却構造」(特許庁公開日2011-09-29)→ 冷却液供給管に供給される冷却液の圧力を、簡単な構成によって調整することができ、回転電機の冷却性能を向上させることができる回転電機の冷却構造を提供する。
(3) 出願人・トヨタ自動車株式会社「車両」(特許庁公開日2011-09-29)→ 電磁場 の共鳴を利用して、車両外部に設けられた送電コイルから電力を充電可能な充電コイルが底面に配置された車両において、送電コイルを簡単に位置合わせすることができる車両を提供する。
一方、現代自動車の日本特許庁に対する出願についても、例えば(SANARI PATENT要約)、
(1) 出願人・現代自動車株式会社ほか1「ハイブリッド車両用駆動モータの集中コイルの結合構造物」(特許庁公開日2011-09-29)→ ハイブリッド車両用駆動モータのうち、集中巻方式にてコイルが巻線されるモータであって、導体板とコイルの堅固な結合力を維持し、作業性及び耐久性が優れたハイブリッド車両用駆動モータの集中コイルの結合構造物を提供する。
(2) 出願人・現代自動車株式会社ほか1「高電圧バッテリーの高電圧安全装置」(特許庁公開日2011-06-16)→費用上昇を招来するインターロックを適用することなく、意図しない高電圧カバーの脱去を防ぐことができるHEV高電圧バッテリーの高電圧部に対する確実な安全性確保によって、消費者感性指数の増大と消費者信頼性を高める高電圧バッテリーの高電圧安全装置を提供する。などが見られる。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル:

2011年10月1日土曜日

シーケンス制御のイノベーションを産業・社会の全分野で希求

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
今次原発事故の大規模化がトラブル発生への対応におけるシーケンス制御システムの欠陥に起因したと認識され、産業と社会の全分野でシーケンス制御のイノベーションが必須であると改めて確認された。
シーケンス制御は、シークエンス(sequence)制御で、「自動制御で、予め定められた動作の順序に従い、制御の各段階を逐次進めていく制御」だから、「順序制御」「条件制御」「時間制御」の各系を含むが、特許庁の発明公開でも「シーケンス制御」の語が用いられているので、先ず最近におけるシーケンス制御技術の開発動向を特許庁公開の内容(SANARI PATENT要約)について見ることにする。
(1) 出願人・オムロン株式会社、発明の名称「コントローラサポート装置、制御プログラムのシミュレーション方法、コントローラのサポートプログラムおよびコントローラのサポートプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体」(特許庁公開日2011-09-29)→ モーション制御を含む制御プログラムをシミュレーション実行する場合に、実行の開始から終了までの間の途中の制御周期からの再実行を可能にするコントローラサポート装置を提供する。
(2) 出願人・三菱電機株式会社、発明の名称「プラント監視制御システム」(特許庁公開日2011-09-22)→ 汎用パソコンで、監視制御装置本体から送信された画面データを閲覧でき、また、汎用プリンタで、画面のハードコピーを得ることができるプラント監視制御システムを提供する。
(3) 出願人・株式会社テクノスジャパン、発明の名称「点滴異常報知装置」(特許庁公開日2011-09-22)→ 従来の点滴報知装置や点滴監視装置は、点滴終了または点滴の停止等を監視して報知するものであり、患者等による点滴針の抜針、点滴用チューブの取り外し等による点滴中の異常を監視して報知する装置が無かったので、この欠落を補完する装置を提供する。
(4) 出願人・ルネサスエレクトロニクス株式会社、発明の名称「情報処理装置、デバック装置、デバック方法」(特許庁公開日2011-09-01)→ デバック機能のパフォーマンスを最適に保つように、通信内容に適合する速度で通信不整合を起こすことなくデータを送信できる装置を提供する。
SANARI PATENT所見
出願会社の事業分野も、シーケンス制御の適用分野も多岐にわたり、シーケンス制御イノベーションが経済社会に及ぼす影響の広汎性を示している。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください) 

ラベル: