2011年10月9日日曜日

知財高裁で海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司が、対特許庁勝訴

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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中国企業から日本特許庁への特許出願が著増し、特許要件である進歩性存在の判断が訴訟上で争われる場合も増加が予想されるが、日中の技術交流・相互利益の基盤形成過程として、積極的にそれらの考究に取組むべきである。
今次・原告海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司、被告・特許庁長官「審決取消請求事件」(判決言渡2011-10-04:平成22行ケ10298)は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司が、発明の名称を「逆転洗濯方法および伝動機」とする発明について特許出願したが拒絶査定を受けたので不服審判を請求したが、「請求不成立」と審決されたので、この審決の取消を知財高裁に訴求し、知財高裁は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司(本件訴訟代理人:池内寛幸弁理士・乕丘圭司弁理士)の請求を認容して、上記特許庁審決を取消すと共に、訴訟費用は被告・特許庁長官の負担とすると判決した事件である。
本件発明
(SANARI PATENT要約)は、「下記を特徴とする伝動機構」である。
(1) 駆動力入力端と2つの駆動力出力端を含み、この駆動力出力端の一方が撹拌器軸に接続されていて、この軸をある方向に回転させ、他方は、中空の内槽軸に接続されていて、この軸を別の方向に回転させ、駆動力入力を2つの駆動力出力に変換する歯車箱を含む、双方向駆動を生じさせるための洗濯機での使用に適する伝動機構である。
(2) この歯車箱は、その上端壁および下端壁にそれぞれ軸孔を備え、中空の内槽軸が、前記上端壁に設けられた前記軸孔を通って延在し、かつ、この歯車箱内に回転可能に設置され、二対の歯車軸が、歯車箱の上端壁および下端壁にそれぞれ形成された歯車軸孔に設置され、二対の歯車部がこの二対の歯車軸にそれぞれ設置され、互いに噛み合っている。
(3) 撹拌器軸は、中空の内槽軸の内側に中心を共有して設置され、その中で回転し、撹拌器軸の下端は、前記中空の内槽軸の下端を超えて延在する。
(4) 撹拌器軸の下端に設置された外歯車が前記二対の歯車部の一方と噛み合い、他の外歯車が前記二対の歯車部の他方と噛み合う。
(5) 主駆動軸が、前記歯車箱の内側に設置され、その下端が歯車箱の下端壁の前記軸穴を貫通し、下方・外側に延在する。
(6) 主駆動軸の上端に設置された外歯車が、前記二対の歯車部の前記一方と噛み合っている。
主たる争点は、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司のこの発明が「先行技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるか否か」であって、特許庁の査定および審決は、「想到容易」と判断し、特許性を否定したが、知財高裁は、「特許庁が引用する先行機技術と、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司の本件発明とは、技術分野が相異し、設計思想も大きく異なり、想到容易性の判断は慎重でなければならず、海尓集団公司・海尓電器国際股份有限公司の発明における組合せの動機付けの存在を主張する特許庁の論も明確でない」等の判断を詳述し、特許庁の主張は採用することができない、と判断した。
佐成重範弁理士所見→ 24ページに及ぶ知財高裁判決文であって、特に「当裁判所の判断」の記述は、想到容易性・進歩性判断の在り方について、重要な示唆を含んでいる。
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