2012年1月20日金曜日

武田薬品工業のM and A 収支計算に見る定数的評価

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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およそ評価には定性的評価と定数的評価とがあって、定性的評価は抽象的主観的評価になり易く、定数的評価は算式因数の設定値に仮設を含む場合(例えば回帰方程式における将来発生利益額の現価還元利率)が多く、いわば一長一短だが、算式がなくても定数評価することが必要な場合もあり、鑑定や競争入札がその手法とされる。いずれにせよ、評価、特に知財評価を含む企業評価が適切を要求されることは、今次オリンパス事件で広く再確認されるに至った。
流石に武田薬品工業の場合は、M and Aを活発化しつつも、その経済効果を計数的に明示し、しかも契約の各過程においてその開示を行っているので、極めて透明である。今次発表(2012-01-18)「スイスNycomed社の買収」についても既に2011-05-19の段階で、「グローバルでの更なる成長に向けて」と副題し、「対価95億ユーロ(株式価値+純負債)で買収が、両社で完全一致議決されたこと」(SANARI PATENT考察: 従って、この発表当時はユーロレート110円超で約1兆1000億円と報道されたが、現時点で約9200億円)、「この買収によって、武田薬品工業が高プレゼンスを有する日米の事業に、Nycomed社の欧州・各新興国の事業基盤が加わること」「将来成長の源泉となり得る慢性閉塞性肺疾患治療薬Daxasを獲得すること」を述べている。
今次武田薬品工業の発表では、「Nycomed社の買収を完了し、真のグローバル製薬企業となるために、事業運営体制とガバナンスの更なる強化を目的として、米国イリノイ州に研究開発拠点、スイス・チューリッヒに営業拠点を設置したこと」、「これら施策の実施による合理化費用として、2011年度から2015年度まで累計約700億円を見込むが、一方、重複する機能・拠点の統廃合によるコスト削減効果を、同期間に累計約2000億円を見込むこと」などを述べている。
佐成重範弁理士所見→武田薬品工業が、M and Aについて、透明度の高い、定数的効果表示を段階ごとに行っていることを高評価したい。

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