2012年1月21日土曜日

特許庁の審決を知財高裁が取消判決(気泡シート関連)

弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
C Site http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog
R Site http://plaza.rakuten.co.jp/manepat
Twitter http://twitter.com/sanaripat
合成樹脂を原料とする気泡シートは、工業用にも生活用にも用途が広汎であり、多様な機能も開発されて、重要な資材であるだけに、特許発明も活発であり、その特許性に関する紛争も多発し易い。特許庁の特許査定が特許庁の審決によって覆されたり、特許庁の審決が知財高裁によって覆されたりすることは、それ自体は、法定安定性が揺らぐ現象として好ましくないが、特許性の有無を精確に判断することの重要性は、特許制度の根幹を堅持するための必須要件であり、再審・三審制度はこの意味で不可欠である。
標題の平成24年行ケ10130号審決取消請求事件(2012-01-16判決言渡)も、この範疇に属する。すなわち、本件原告・酒井化学工業(訴訟代理人・稲葉良幸弁理士ほか)は、名称を「気泡シートおよびその製造方法」とする発明について特許権を付与されたが、本件被告・川上産業は、この特許は特許性を欠き無効であるとして。その無効審判を特許庁に請求した。特許庁は、本件被告・川上産業の請求を認容して上記酒井化学工業の発明についての特許を無効と審決したので、酒井化学工業は、この審決の取消を知財高裁に訴求し、知財高裁は川上産業の請求を認容して、特許庁の審決を取消した。すなわち、酒井化学工業の本件特許権は有効と判示された。争点は進歩性の有無であって、本件被告・川上産業は酒井化学工業の本件特許権を無効と主張し、特許庁審判は無効と審決したが、知財高裁は特許庁の当初査定と本件原告の主張通り、本件特許を有効と判断した。進歩性の判断は、従来技術と出願発明との異同を審査し、相違点がある場合にも、それが従来技術から容易に想到できると判断される場合は進歩性を否定される。
佐成重範弁理士所見→発明すなわち技術的思想の創作は、それが先端分野であるだけに文章表現も創作的であり、同一内容が多様に表現される場合もあり得る。従って、従来技術の表現と訴訟対象発明の表現とを、精細に対比し、異同の有無と相違の内容を解明する作業を経て、審査基準による判断が行われるが、審査基準は行政庁の内部基準であり、裁判所がその改正を実質的に触発する場合も見受けられる。
(コメントは sanaripat@gmail.com にご送信ください)

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム