Differed Opinions on the Patentability of Same Application
特許庁における審査官と審判官の判断が乖離する場合
弁理士 佐成 重範 Web検索 SANARI PATENT
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12.(承前2010-02-21記事)特許出願に対する拒絶査定への不服審判における審理の厳正化について考える。拒絶査定不服審判において請求成立(拒絶査定取消)とした審決の割合は、1996頃には9割弱であったが、2008には44.3%まで減少している。技術分野間の差は少ない。(SANARI PATENT考察: 拒絶を取消した割合が減少したとは言え、特許庁審査官が特許要件を充足しないとして特許付与を拒絶した出願の4割以上が、特許庁審判官により特許要件を充足するとして特許を付与されるのであるから、特許審査基準を緻密化して、審査官・審判官間の判断の相異を極限すべしとの意見が経済界などから出されるのは一見もっともなことのようであるが、特許要件充足性の認定の実務を知る者にとっては、4割強という率はむしろ「上出来」と見られよう)。
13. 拒絶査定に対する審判請求においては、補正をするのが8割で大多数であるが、審判請求時に補正をすると、法律上、前置審査に付されることとなり、審査官にもう一度審査させることになっている。前置審査の段階で半分は特許登録となり、残り半分については前置報告(対特許庁長官)という手続を行う。その内容は、審判請求時になされた補正を考慮しても依然として拒絶査定が維持されるべきであるというものが多い。
14. 審査・審判の判断の基準の乖離は縮小傾向にある。(SANARI PATENT考察:「判断の基準は」とあるが、単に「判断は」とすべきである。判断の基準はいずれにおいても「特許審査基準」であり、その解釈・適用の乖離が、判断の乖離をもたらしていると解すべきである。)すなわち、「出願審査段階で拒絶査定となったものが、審判段階では拒絶理由通知書を発することなく特許となったもの」(A)と「審判段階で拒絶理由を通知し、その後、特許になったもの」(B)の和(A+B)の割合が減少するほど、乖離が減少したことを示し、「審査段階で拒絶査定となったものが、審判段階でも、拒絶理由通知書を発することなく拒絶査定が維持されたもの」(C)と「拒絶理由を通知し、その後、拒絶査定となったもの」(D)の和(C+D)の割合が増加するほど、乖離が減少したことを意味する。2001にはA 25.1%、B 39.1%、C 20.2%、D 15.6%、2008にはA 17.0%、B 27.4%、C38.3%、D17.3% であるから、A+Bは64.2%から44.4%に減少し、C+Dは35.8%から55.6%に増加したことが示されている。(以下次回)
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ラベル: 出願審査 特許庁 特許審査基準
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