2009年9月10日木曜日

Invalidation of Patent by Patent Office and/or the Courts 

特許無効審判と特許無効判決の競合と前後関係
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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73.(承前2009-09-07記事)無効審判で無効とされる確率が低い場合には、当事者は審判を請求しない。無効審判請求が成功する可能性がかなり高く、かつ、再審で敗訴判決を覆せるならば、何度も無効審判を請求するというのは合理的な行動である。無効になる確率は、判断基準のばらつきと、新たな証拠の出現に依存する。後者が大きく影響しているなら、それを制限するという案もある。特許の質に大きく影響する可能性も懸念されるが、一回の紛争処理手続の中で無効理由が出せなければ、無効理由に関する証拠の後出しは認めないという整理もあり得る。
74. 侵害訴訟判決確定後に、被告であった者が無効審判を請求することは日常的にあり得る。確定判決が後に覆る可能性があるということは、侵害訴訟が安心感の無い紛争解決手段であることを意味し、紛争解決モデルとして問題があることを意味するため、再審は制限されるべきである。
75. 日本の特許権は、侵害訴訟で勝っても、後に特許権が無効化され、権利行使の結果が覆えされる潜在的なリスクが高いというイメージから、日本での出願を見送るという国際的な動きもあると聞いている。無効審判を廃止すべきであるとまではいわないが、侵害訴訟で徹底的に争ったら、それで紛争解決は終結し、再審にはならないとす方が良い。

76. 無効審決の効果は遡及すると定める特許法125条11を改正し、将来効のみとする案はどうか。その場合であっても、過去に命じられた差止めが、将来にわたって継続するという問題が残るが、それを無効にするための法律上の手当を行えばよい。権利が無効になっても、過去に支払ったライセンス契約のロイヤルティの返還義務はないとするのが有力説であり(SANARI PATENT注:「無権利であるのに実施料を受領したのだから、不当利得として変換義務があるという説など)、すでに特許が無効になったときの効果を将来のみに及ばせる考え方は存在する。

SANARI PATENT所見
 特許性具備の有無の判断が、査定、審判、訴訟の各段階で結果を異にする場合があることは、特許制度の本質ね根ざしている。例えば、「当業者にとって容易に想到できる」かどうかは、どれだけの前提条件の具備が「想到」を可能にするかの判断に依存し、審査官たる当業者、審判官たる当業者、裁判官たる当業者の各心理機能が合理的に作用しても、「想到できるか、できないか」の判断は、心理判断の説得力に帰着する。
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