2009年2月1日日曜日

Robot Control: Yasukawa Elec. vs. Kawasaki Heavy/ Toyota Auto 

原告・安川電機、被告・川崎重工業・トヨタ自動車の実用新案訴訟において知財高裁が特許庁審決を取消
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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 安川電機が川崎重工業・トヨタ自動車の「スポット溶接ロボット用制御装置」実用新案登録について、無効審判を請求したが、請求項が成り立たないと審決されたので、安川電機がその取消を訴求した。知財高裁は安川電機の請求を認容して特許庁の審決を取消した(2009-01-29判決)。(下注)以下、知財高裁の判断内容(SANARI PATENT要約)を、その基礎とする考え方を認識しつつ考察する。
 主たる争点は、進歩性・容易想到性の有無の判断である。

1. 技術文献から進歩性判断の前提となる引用例を認定するに当たっては、
その技術文献に接した当業者が、その技術文献にどのような技術的思想が開示されていると理解することができるかという、当業者の客観的理解に基づいて行うべきである。

2. 甲技術文献に、発明者Aが装置Xを自らの考案として特定・記載しているといえるにしても、甲技術文献に装置X~Zが記載されていると客観的に理解し得ることに変わりはないから、当業者が甲技術文献に開示されていると理解することができる技術的思想が装置Xに限定されることになるわけではない。前後の文脈に照らせば、特定の要望を有するユーザーに対して、発明者Aが装置Xを提供することを述べているに過ぎないから、そもそも川崎重工業・トヨタ自動車が主張するように、発明者Aが装置Xを。自らの考案として特定・記載していると理解することは困難である。

3. 無効審判における進歩性判断の前提として、無効審判の対象とする発明と対比すべき引用例を技術文献から認定する場合には、その発明との対比に必要かつ十分な限度でその技術文献に開示された技術的思想を認定すれば足りるのであり、その技術文献に開示された技術事項であっても、対比に必要でないものであれば、引用例として認定する必要はないと解される。

4. スポット溶接ガンのチップを駆動する機構として、周知の送りネジ機構を用いることは、当業者が適宜なし得た程度のことであり、その際にチップに位置を検出するため、周知の技術であるモータまたは送りネジの回転角検出器を備えるようにすることも、当業者が適宜なし得た程度のことに過ぎない。

SANARI PATENT所見
 発明が既存の技術に基づいてなされることは当然であるが、既存技術の単なる寄せ集めには進歩性がなく、既存技術を結びつけたところに特別な効果があれば、進歩性が認められる。なお、進歩性の「高度」という法文の用語には「格別の意味はない」と特許庁が示しているが、これは実用新案と特許の区別に関する示しである(特許審査基準ご参照)。
(注)平成19年(行ケ)10386審決取消請求事件
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Robot、安川電機、川崎重工業、トヨタ、実用新案

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