2009年1月23日金曜日

Public Opinion for Energy Supply Structure 

エネルギー供給政策・資源庁案にについてSANARI PATENT意見提出
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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 オバマ経済対策にも、「太陽光発電など新エネルギー開発・環境対策、インフラ公共事業による雇用創出」が、経済基盤充実を伴って計画されているが、新エネは知財開発が核心をなす分野であり、SANARI PATENTは次のように資源庁案に対する意見を同庁および内閣知財戦略本部に提出した。

平成21年1月23日
経済産業省資源エネルギー庁総合政策課パブリックコメント御担当御中
 総合資源エネルギー調査会総合部会報告書(案)(このサイト0111記事ご参照)に対する意見
意見
 該当箇所
「1.代エネ関連施策について」
 意見内容
「1.代エネ関連施策について」を「代エネ・新エネ関連施策について」と改め、その結びに下記のように付加することが適切と考える。
「これまでの政策を見直すに際しては、次の事項に重点を置くものとする。
(1)  代エネ・新エネの開発・活用のシステム構築を、エネルギー供給確保の公共インフラとして、太陽光発電など、国が主導する公共事業として展開すること
(2)  上記展開において、新エネの実用化に必須な特許技術開発にについて、優先出願審査などの促進対策を講じ、国際競争力の強化に資すること
(3)  消費エネルギーの形態を原則として電気エネルギーとするなど、エネルギー消費構造の変革と、これに対応ないしこれを必要とする社会システムの変革(例えば電化野菜工場による農業の変革)について、構想を示すこと。
(4)  バイオエネルギー開発と食料競合資源との需給調整、水力・地熱開発と自然・観光との調整、風力発電による低周波音による健康被害の防止など、環境と生活との相剋について、解決の技術的方策を示すこと。

 理由
1. 表題について
  代エネ・新エネ・再生エネの用語が、化石エネルギー源、特に原油に対して用いられているが、代エネ・新エネは再生エネと同義と解される。政策上、原子力・水力など既利用の非化石エネルギーを代エネ、新バイオエネルギー、メタンハイドレート、更には核融合エネルギーなどの未利用エネルギーを新エネルギーとして、両者を包含するエネルギー源多様化の政策を示すことが望まれる。

2.意見の各事項について
2-1 Obama政権が今次金融対策として掲げる事業規模は、2009~2010の2年間において8250億ドル、約80兆円で、うち2750億ドル、約27兆円が新エネ等のエネルギーインフラおよび環境整備事業に充てられ、300万人の雇用創出を担うものとされている。日本の今次金融危機対策事業規模は、2008年度補正予算と2009年度予算における計上額を合算して72兆円と説明されているから、金額規模からみれば遜色ないようにも見えるが、米国の場合、「太陽発電など新エネ事業によるインフラ整備による雇用創出のため」と先ず掲げられて、Green New Dealが顕在化しているのに比べて、わが国の雇用創出は「介護」が先ず掲げられ、雇用吸収を社会福祉に求めている印象が強い。
 一方、今次案は、「エネルギーの安定供給、国民経済の発展、生活の安定」のため化石エネルギー源への依存度を代エネによって軽減することを目的としているが、国の役割としては、「エネルギー供給構造高度化が実現するためには、エネルギー供給業者における相当の投資や取組が必要となることから、単にエネルギー供給業者に任せるのみでは実現困難な場合がある。従って、官民一体となって取組むべき必要のある課題と考えられることから、国や地方公共団体も一層の役割・責任を分担すべきである」と述べ、「目標・タイムフレームの設定」、「セクターを超えた取組」、「競争条件の公平性確保」などを例示するにとどまっている。
 しかし、この案作成時の状況は激変し、化石エネルギー源価格の急落はエネルギー節約志向を緩和すると共に、新エネ開発の目標コストを激減させ、計画中断の危機を招いている(産油国業者の中には、原油価格低落による一時的減収よりも、新エネ開発の断念を可とする業者もあるという評論も見受けられる)。

2-2 わが国で新エネ関係の特許公開件数が例えば、太陽光発電2290件、バイオマス1028件など(いずれも2009-01-20現在)活発であることに徴しても、エネルギー供給源の多様化に対する業界の熱意は高いが、ガソリン課税や二酸化炭素価格の高価誘導による新エネの相対的優位性現出の可能性と安定性は不確実と考えざるを得ない。

2-3 今次案は、「需給構造」と表裏両面構造ではなく、単に「供給構造」の面に偏した取組とした結果、エネルギーの需要と供給の相関構造を高度化の政策構築が欠落している。
 何故、今次案が「供給」構造に偏したか、その理由は、一次エネルギーである化石エネルギー源の比率が現在なお8割程度であるのを、いわゆる新エネ・代エネによって低減し、化石エネルギー資源の有限性、世界賦存分布の偏在、化石エネルギー資源の6割を占める原油の比率低減による排出ガスの削減など、エネルギー資源の多様化によるエネルギー供給の安定・確保と環境保全の政策に関心が集中しているからである。
 すなわち今次案は、「代エネ関連施策」「エネルギーをめぐる情勢と一次エネルギー源ごとの特性」の章に続いて、「今後目指すべきエネルギー需給構造の方向性」の章を設け、ここでは「需給構造」の語が掲げられているが、その内容は「長期エネルギー需給見通しである。最大導入ケース」と「エネルギー供給構造高度化への取組」の2節から成り、この前節においても、エネルギーの形態別需要構造に論及していない。
 従って、「エネルギーの使用者」については、案の末尾に「今般の措置は、その太宗がエネルギーの供給事業者のみが実施しうるものであるが、他方で、需要側の取組が重要な役割を果たす面も見られるようになってきている」と記述して、「エネルギー使用者の取組も促進することが望ましい」という付言的な結びに終わっている。
 しかし、高度情報社会システムの構築とその展開が、国民福祉の向上と産業の国際競争力強化のため必須であることから、需要者が使用するエネルギーの形態とその質および量を起点としてエネルギー政策を立案すべきである。具体的には、利用するエネルギーの形態を全て電気にシフトすることを原則として社会システムを構想し、これに対応するエネルギー供給の在り方を策定すべきである。例えば、新しい電池技術や電気自動車の普及は、電気エネルギーをリアルタイムな需要に応じて自由に流通させるための革新的デバイスとなり得る。電気自動車について見れば、それは既存の自動車の代替ではなく、新たな価値をもたらす情報家電ともなり得る。その効果を最大限に発揮するため、ニッケル水素電池の開発など、特許技術を基盤とする関連産業の発達、および、バイオマス発電・太陽光発電の最適立地などを政策目標とすべきである。同時に、生活用エネルギーの形態を電力・ガスの二元システムから全電化することにより、電力生産コストおよびエネルギー受給システムの単一化による合理性を実現できる。
 また例えば全電化野菜工場の大規模実用化により、輸送エネルギーや農業人口の消費エネルギー地域構造を変革できる。
 意見公募の趣旨にも、「エネルギーの安定供給の確保を図るため、エネルギーの供給部門における対策について、他のエネルギー政策との整合を図りつつ幅広く検討する必要」を述べており、「他のエネルギー政策」の最たるものとしても、エネルギー需要構造に関する政策が先行、少なくとも並進すべきである。

2-4 風力発電における低周波音被害の例のように、わが国の国土利用事情に起因する「生活とエネルギー供給の調和」を要する新事態も発生しているので、この面に対する措置も予め構想すべきである。(記事修正のご要求・ご意見は sanaripat@gmail.com に送信下さい)
Public Opinion、太陽光発電、新エネ、代エネ、資源庁、 風力発電

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