2008年5月3日土曜日

Orphan Works Problem in USA

Orphan Works Problem in USA: 米国における著作者不明著作物対策
弁理士 佐成重範 Google検索SANARI PATENT
別サイト http://d.hatena.ne.jp/SANARI/ 高島屋の新ビジネスモデル展開(2008-5-1記事)
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog SANARI PATENTの対内閣知財戦略本部要望提出(2008-5-1記事)

 来週9日には、「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」(内閣知財戦略本部)の第2回会議が開催されるが、内閣知財戦略本部事務局が用意した著作権制度の各国比較は貴重な労作であり、先ずここには「米国における著作者不明著作物」を要約・考察する。

1. 上記資料の内容(SANARI PATENT要約)
1-1 米国では、著作権保護期間の延長を背景として、著作者不明著作物(Orphan
Works)に対処する新たな制度が検討されている。著作権当局により法案が提示されたが、業界団体の反対意見もあり、成案に至っていない。
1-2 米国の現行法においても、著作者不明著作物関連の問題については、幾つかの対応制度は存在する。
1-2-1 図書館・文書資料館による利用:米国著作権法108(h)条
1-2-2 一定の場合の強制使用許諾:米国著作権法115条
1-2-3 善意侵害に対する法定賠償の減免:米国著作権法504©(2)条
1-3 しかし、1998年の著作権保護期間延長が合憲であると判示した米国最高裁Eldred判決(2003年)を背景として、著作者不明著作物侵害への懸念や、利用者の過大な負担への意識が高まり、1-2の諸規定では、著作者不明著作物問題解決に限界があると認識されるに至った。
1-4 このような趨勢のもとで2005年に、米国上院法務委員会のHatch議員およびLeathy議員の依頼により米国著作権局が調査を開始し、「著作者不明著作物に関する著作権局長報告書」(Report on Orphan Works)を提出した(2006-1)。
1-5 この報告書は、次のように述べている。
1-5-1 著作者不明著作物は現実の問題である。
1-5-2 著作者不明著作物問題を計量化し包括的に説明することは困難である。
1-5-3 現行著作権法では対応不可能な多くの問題がある。
1-5-4 現在の問題に効果ある対応をするためには、新たな立法が必要である。
1-5-5 米国著作権法第5章を改正し、「真摯に調査したが著作権者の所在を特定できな場合、かつ、可能な限り適切に著作者・著作権者を表示したことを利用者が証明した場合には、著作権者が後に出現して著作権侵害に係る訴求をしても、損害賠償等の金銭救済手段を制限する」と定めるべきである。
1-5-6 著作者不明著作物法案(Orphan Works Act of 2006 H.R.5439,109 Cong)および著作権現代化法案(Copyright Modernization Act of 2006 H.R.6052, 109 Cong)が提出されたが、業界団体の反対のため取り下げられている。なおその内容は、1-5-1の規定に加えて、「真摯な調査」の要件、合理的な補償金の算定基準等である。

2. SANARI PATENT所見
わが国著作権法第67条(著作者不明等の場合における著作物の利用)は、「公表された著作権物について、相当の努力をしても著作権者と連絡できない 場合、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料額を供託すれば、その著作物を利用できる」趣旨を定めているが、デジタルコンテンツ流通の現実に即しないことは明白と考える。
(記事修正のご要求・ご意見は sanaripat@gmail.com に送信下さい)
Orphan Copyright、米国著作権法、著作者不明著作物、著作権、デジタル・ネット時代

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