2008年4月25日金曜日

Decision based on Doctrine of Equivalents by IP High Court

Decision based on Doctrine of Equivalents by IP High Court (2008-4-23) :旭化成マリンテックに対する海洋建設の「不正競争行為差止等請求控訴」事件・知財高裁判決(海洋建設の控訴を棄却)
弁理士 佐成重範 Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog 今次特許法改正の国会審議(2008-4-24記事)

1. 均等論の再登場
  一昨日の知財高裁判決に均等論が再登場した。控訴人・海洋建設、被控訴人・旭化成マリンテックの「「不正競争行為差止等請求控訴事件」判決において知財高裁は海洋建設の控訴を棄却したが、主要な争点の一つが均等論適用の成否であって、その判断の在り方は「特許発明の技術的範囲」の認定に直結する。

2.均等論とプロパテント
  特許権の権利範囲、すなわち特許発明の技術的範囲は、明細書の「特許請求の範囲」の記載に基づいて定められ、特許請求の範囲に記載されていない発明は技術的範囲に属さず、これを実施しても特許権を侵害しないことなるが、均等論は、一定の要件のもとで、その特許発明と均等なものとして、特許権を侵害すると考えるものである。従って、均等論はプロパテント政策に適合すると考えられてきたが、プロパテント政策の考え方自体も変遷し、均等論にも均等を緩やかに認めるものと、厳しく判断するものとが拮抗してきた。

3.海洋建設の特許権
海洋建設は「人工魚礁の構築方法及び人工魚礁」(特許番号1943699)の特許権者であるが、旭化成マリンテックがこれを侵害すると主張し、旭化成マリンテックに対して損害賠償等を請求したが、原審(東京地裁)・知財高裁ともに、「ホタテ貝殻」と「カキ殻」とは均等物ではないなどの理由により、海洋建設の請求を棄却した。

4.今次判決における均等論
  今次判決の内容は多岐にわたり、関係業界のみの関心事が多いので、ここには特許権の本質に関する共通の重要事項として、均等論の適用についての説示を要約する。
4-1 特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、その特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分、換言すれば、おの部分が他の構成に置き換えられるならば、全体としてその特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解するのが相当である。
4-2 そして、対象製品との相違が特許発明における本質的部分に係るものであるかどうかを判断するに当たっては、単に特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に取り出すのではなく、特許発明を先行技術と対比して、課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか、それともこれとは異なる原理に属するものかという点から判断すべきである。
4-3 海洋建設の特許発明の効果は、単に魚礁の構造を「通水性ケースを壁や柱全体の構成部材とした」というだけでは得られず、その充填物をカキ殻としたことで得られるものであり、そのことが海洋建設の特許明細書に明記されている。カキ殻を穴のないホタテ貝殻に置き換えた場合に、カキ殻と同一の作用効果を発することができるものではない。単に貝殻という意味での共通性があったとしても、カキ殻とホタテ貝殻で効果が同じとはいえず、置換可能性および置換容易性は認められない。

5.SANARI PATENT所見
  今次知財高裁の判断には、「穴」(4-3)の語義について、「穴には、向こうまで突き抜けた所という意味のはかに、「くぼんだ所」という意味もあり、これと、カキ殻については、餌料となる生物が親和性を持ちやすく多数の居住穴を形成するとの、海洋建設の特許明細書の記載を総合考慮すれば、この多数の穴とは、多数のくぼんだ所という意味に解すべきであり、海洋建設が主張するような意味に解することはできない」など、語義論に及ぶ説示を行っており、その含意を精読すべきである。
(この記事について修正のご要求等は sanaripat@nifty.com にご送信ください)
Doctrine of Equivalents、旭化成マリンテック、海洋建設、均等論、知財高裁

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