2009年5月21日木曜日

Intellectual Property System as Global Infrastructure 

第2回多国間特許審査ハイウェイ実務者会合の結果発表(経済産業省2009-05-20)
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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 世界人口が過去百年間に倍増して60億人を超え、更に毎年7000万人の増加を続ける趨勢にあることを認識し、地球環境の変化に対応しつつ、人類共通の福祉を増進するためには、イノベーション促進のインフラストラクチャーとして、持続可能なグローバルパテントシステムの実現が必要である。

 5月18日、19日に東京で開催された多国間特許審査ハイウェイ会合は、この目的に沿うものとして、日本を始め、米国、韓国、英国など世界特許行政上主要な15の国・地域の知的財産庁・機関の実務者等が参加し、特許審査ハイウェイの要件と手続の標準化に向けた取組を検討した旨、経済産業省(特許庁)が発表した(2009-05-20)。その内容(SANARI PATENT要約)を考察する。

1. 要約: 今次会合により、特許審査ハイウェイ申請様式の共通化、関連情報をワンストップで入手できるポータルサイトの構築や、機械翻訳等の特許審査ハイウェイ要件の標準化について基本的な合意が得られ、多国間特許審査ハイウェイの基本的枠組みの整備に向けて大きく前進した。
2. 背景: 経済のグローバル化を背景に、一つの発明を複数国に出願する重複出願が増加しており、世界の各特許庁において、審査負担の増加が大きな課題になっている。このような状況に対処してわが国は、二国間において一方の国で特許付与された出願について、他国でその審査結果を参照しながら、早期審査を行う枠組みである特許審査ハイウェイの取組を、各国と共に進めてきた。
3. 今次会合: 現在、特許審査ハイウェイにおける要件、および、手続の各国間での共通化など、特許審査ハイウェイの利用性を更に向上させる取組を検討する段階に入っているので、今年2月に開催された長官級会合の決定に基いて、今次実務者会合が開催された。
4. オブザーバ: 今次会合には、中国、ブラジル等がオブザーバとして参加しており、特許審査ハイウェイに対する国際的関心が高まっている。
5. 今次会合の内容
5-1 参加国・地域・機関: 日本、カナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、韓国、ロシア、シンガポール、英国、米国、欧州特許庁(EPO)
5-2 オブザーバ参加: ブラジル、ハンガリー、中国、世界知的所有権機関(WIPO)
5-3 上記の通り、全15の国・地域・機関が参加した。
6. 今次会合の成果
6-1 全世界の年間特許出願件数176万件のうち、参加した国・地域(SANARI PATENT考察: 「参加」にはオブザーバ参加を含むと解する)の知的財産庁への出願件数は155万件で、世界全体の約90%に達する。
6-2 次の項目について合意された。
6-1-1 複数の国の特許審査ハイウェイ申請に利用できる共通申請様式を、日本国特許庁(JPO)の提案に基づいて作成する。
6-1-2 各特許審査ハイウェイのガイドラインや統計情報等をワンストップで取得できるポータルサイトをJPOが構築する。
6-1-3 特許審査ハイウェイ申請時に提出が必要な拒絶理由通知等のオフィスアクションの翻訳に関し、機械翻訳を容認する。

SANARI PATENT所見
 上記6-1に示されたように、今次参加国・地域の特許出願における比重が9割に達し、また、世界の科学技術人材の中核をなす知的財産権設定要員のワークシェアリングが実現することは、グローバルなイノベーション促進のため、極めて注目すべき成果である。
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