2008年5月21日水曜日

Patent Policy for Stem Cell

Patent Policy for Stem Cell: 内閣知財戦略本部は、iPs特許政策にどのように対処するか
弁理士 佐成重範 Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog 産総研・三菱商事・トッキ株式会社の緑色太陽電池(2008-5-20記事)

(Induced Pluripotent Stem Cell=誘導多性能性幹細胞=体細胞由来多分化可能性細胞→いわゆる「万能細胞」)の再生医療応用が、全世界で期待の的となり、特許戦略が国家利益の側面を伴って、政官民の緊急課題とされている。

内閣知財戦略本部の2008年度・知的財産推進計画は、遅くとも来月には決定されるはずであるが、検討の過程が見えない。従って、SANARI PATENTとしては、最近の現象について幾つかの疑問を提起するにとどめる。

1. 内閣の「新健康フロンティア戦略賢人会議」はどうなったか。
1-1  この会議は、医学会や医師のほか、トヨタ自動車:張富士夫会長、東芝・土井美知子研究開発センター技監らで構成され、2006-11-29に総理大臣ほか経済産業・文部科学・厚生労働・イノベーション特命大臣等が出席して発足した。
1-2  「人間活動領域の拡張分科会」、「働き盛りと高齢者の健康安心分化会」などを設け、平成20年度の「新健康フロンティア戦略」予算案を策定(2007-2-28)したが、2754億円(前年度2665億円)の規模で、再生医療技術の研究開発、その臨床研究や治験の実用化、医療技術のイノベーションなどを行うとしている。
1-3  上記案が策定されたのは京都大学のiPS発表と同時点で、具体的な対象には未だなっていないが、その後この会議は開催されていないようである。

2. 京都大学の「iPS細胞特許活用会社設立と、同大学TLOの関係はどうなるか。
2-1 京都大学は、大和証券グル-プ本社と三井住友銀行、および両系列のベンチャーキャピタルから計2億円の出資を得て標記会社を設立すると発表した(2008-5-16:同日asahi.com報)。出資総額は1~2年で12億円に増資する。本年6月に事業を本格化し、iPSの応用研究を加速する。
2-2 上記発表および報道によれば(SANARI PATENT要約)、
2-2-1 様々な臓器の細胞になり得るiPS細胞(SANARI PATENT注:iPs=Induced Pluripotent Stem Cell=誘導多性能性幹細胞=体細胞由来多分化可能性細胞→いわゆる「万能細胞」)は、再生医療などへの応用が期待されるが、特許取得競争が国際的に激化し、特許の管理・活用(特許の戦略的組合わせなど)も課題である。
2-2-2 このため京都大学は、「多額の資金は出しても口は出さない」形で企業と大学が知的財産権管理専門の会社を作るが、文部科学省ではそのような事例を知らない。
2-2-3 新会社は、京都大学のiPS関連特許を独占的に使用する権利を持ち、希望する企業とライセンス契約を結ぶ。将来は、共同研究をしている他大学などの特許の管理窓口としても活用されることを期待する。
2-2-4 京都大学は5月初め、新会社設立準備のための中間法人を登記したが、6月に上記「知的財産権管理活用会社」設立後、新会社が出資を受ける。金融各社は無議決権株主となり、京都大学が中間法人を通じて主導する。

3. SANARI PATENT所見
  内閣知財戦略本部の医療関係専門調査会は再開されるに至らず、経済産業省の産業構造審議会のライフサイエンス関係部会は「特許関係の企業秘密」を理由として審議内容を示さない。
 上記2の新会社についても、内閣知財戦略本部が推進してきた大学TLO(技術移転機構)との関係、国費補助と特許権帰属の関係、全日本関係学界協力構想と果実配分の関係など、想定質疑事項に対して先行的に明示すべきであると考える。
(記事修正のご要求・ご意見は sanaripat@gmail.com に送信下さい)
iPS、Stem Cell、トヨタ、東芝、京都大学、再生医療、三井住友銀行

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