2008年2月19日火曜日

Quality of Patent

Quality of Patent:東京大学・渡部 俊也教授意見の「特許の質を高める」ことに関する意見の考察
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATEN
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1. 内閣知財戦略本部・「知的財産による競争力強化専門調査会」
1-1  今月5日の会議において、「オ-プン・イノベ-ションと知的財産を巡る現状等について」と題する資料に基づく検討等を行っているが、同日提出された標記資料の内容は、知財関係者が熟読すべき貴重なものであり、SANARI PATENTが敢えてここに、ご意見の要約を試みつつ、考察する。
1-1-1 要約1
  イノベ-ションに資する知財戦略の要検討項目として先ず、「特許の質を高める」ことを掲げる。
企業や大学の特許の質を高める努力を行う必要がある。特許の活用を技術情報の漏洩リスクとのバランスを厳密に評価しながら出願することが求められているが、その特許の技術的価値が高いにもかかわらず、法的な質が低く、結局特許が認められなかったり、特許になっても無効になってしまうという事態を極力避けなければならない。その点、現在企業あるいは大学から出願されている特許の質はバラツキが大きく、向上する必要がある。
 考察1
「特許の質」の意味は、「進歩性(米国特許法の用語では非自明性)が低度か高度かによってその程度が判断されるという意味における特許の質」、「特許の法的有効性に関して、明細書等の記述における訴訟力具備の強弱によってその程度が判断されるという意味における特許の質」、および、「特許が休眠して、イノベ-ションに寄与しないと看做される経済的致命度によってその程度が判断されるという意味における特許の質」に、3大別される。
  
  イノベ-ションは、「技術進歩の累積」または「技術革新の跳躍」によって実現するが、前者の「累積」が高速である場合を含めて、両者共にイノベ-ションに寄与することの可能性自体は否定できない。そこで、累積と跳躍の中間に位置する「低度の進歩性」「中度の進歩性」「高度の進歩性」に、全て特許性を認めるべきか否かが、特許政策の課題になる。
  中度ないし高度の進歩性にのみ特許性を認めるべきであるという意見は、わが国で現に、プログラム特許について論じられているし、米国では、低度の進歩性(米国の「非自明性」)に特許性を認めることが、パテントトロ-ルやパテント促進業者の弊害面を誘発している、と論じられ、先般のKSR米国最高裁判決も、実質的に米国特許商標庁審査官の拒絶査定を裁量的に緩和したと、SANARI PATENTは解する。

  上記の点は、「プロパテント」との関係で検討を尽くす必要がある。最近、特許庁の資料に「プロパテントの強化」という見出しがあったが、特許庁の「イノベ-ションと知財政策に関する研究会」(2008-1-23)においては、米国のアンチパテント時代の事項として、「天才のひらめきを要求する米国最高裁判決、非自明性判断の4基準明示(同)、有用性の証明なき化合物の製造法特許否認(同)、数学的アルゴリズムの特許性否認(同)」が例示され、プロパテント時代の事項として、「人工微生物に特許性認容(同)、ソフトウェア関連発明に特許性認容(同)、ビジネス方法に特許性認容(同)」が例示され、プロパテント政策適正化方向の事例として、「均等論適用の厳格化(同)、侵害差止判断の厳格化(同)、KSR(上記)」が例示されているから、プロ・アンチ・適正化との関連において、「特許の質」を先ず検討すべきであるとSANARI PATENTは考える。
(以下、
関連記事http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 2008-2-19 特許の法的安定性
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Quality of Patent、KSR、米国特許商標庁、特許庁、渡部俊也、パテント

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