2009年8月23日日曜日

Compulsion of Patent License is Difficult to Make Work 

特許庁長官の裁定によるライセンスの強制設定の問題点
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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14.(承前2009-08-20記事)裁定とは、経済産業大臣や特許庁長官が特許権者に強制的にライセンスさせる制度である。侵害事件において、侵害したとされる者は、裁定を求めて特許権者とライセンスすることにより問題を解決してはどうかとの考えもある。しかしながら、これは機能しにくいと思われる。そもそも裁定を求めるということは、侵害を認めたということになるので、侵害をしたとされる者は裁定をもとめにくい。裁定を求めつつ裁判も行っていれば、どちらの判断が先に出るのかも、また、どのような結果が出るのかも分からない。
15. 差止めの在り方は古くから議論されていた。例えば昭和22年に独占禁止法を制定する際にも、「特許権を使用したいとの申し出がなされたときは、その特許権を有する者は必ず応じなければならない」との規定を独占禁止法に導入してはどうかとの議論があった。
16. 2006年の米国連邦最高裁の判決(eBay判決)における差止めを認めるかどうかの考え方は、非常にバランスがとれており、イノベーション促進の観点からも、そのままわが国に導入すべきである。
17. 日米の制度の違いは、日本は原則として差止めも損害賠償も認められるのに対して、米国では権利侵害に対する救済は懲罰賠償も含み得る損害賠償が原則で、差止めは裁判官の裁量による例外的措置であることである。
18. eBay判決は、米国における一般原則を特許権侵害に当てはめたものに過ぎない。日本の制度および実務の違い、差止めを制限した場合の悪影響を考えて、慎重に対処すべきである。

SANARI PATENT所見
 わが国では裁定による実施権の設定事例が、現在まで皆無である。鳥インフルエンザについての抗ウイルス剤(特に経口投与錠剤)の特許製品の途上国における強制実施権依拠生産が、現実の問題である。
 米国のeBay事件は、米国On Line Auction 大手のeBay社の「Buy it Now」機能に対するMerc Exchange社提起の特許侵害訴訟で、特許権の有効性が争われた。CAFC(実質的にわが国の知財高裁)の逆転判決や、米国最高裁の差し戻し判決があり、特許性および差止め認容の要件が示された。
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