Nippon Steel Chemical Co.’s Patent Dispute
Nippon Steel Chemical Co.’s Patent Dispute: 新日鐵化学株式会社のフェノール性化合物およびその製造方法特許無効審決を知財高裁が支持(20080703)
弁理士 佐成 重範 Google検索 SANARI PATENT
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新日鐵化学が有する「フェノール性化合物およびその製造方法」特許権の無効審決の取消を、新日鐵化学が知財高裁に請求したが、知財高裁は新日鐵化学の請求を棄却した(20080703判決:平成19行ケ10160審決取消請求事件)。
知財高裁における被告エア・ウォータ株式会社の勝訴判決であるが、特許庁の本件特許無効理由「新日鐵化学の本件発明には、特許付与要件としての進歩性・新規性が認められない」ことを、知財高裁が支持した判決である。
新日鐵化学・エア・ウォータ間、特許付与・特許取消間の、進歩性・新規性判断の相違に対して、知財高裁の判断を見る(SANARI PATENT要約)
1.「少量成分」の規定の不備について
本件新日鐵化学特許明細書において、「所定フェノール性化合物を少量成分として含有するフェノール性化合物」と規定しているが、この「少量成分」について、主成分であるn=0体よりも少量であることのほかに、n 1体の含有量を規定する記載がない。
2.「少量成分」の技術的意義の記載の不備について
新日鐵化学は、本件特許明細書実施例において得られたエポキシ樹脂が、従来のものに比べて優れた性質を有することが、「少量成分」が実質的な量存在することによる効果であり、少量成分の技術的意義は、本件訂正明細書に記載されていると主張する。いかしながら、その比較対象から見て、エポキシ樹脂の特性改善に有意な量を含有する必要があることを示すものではない。
3.「非結晶性であることの技術的意義の記載不備」について
新日鐵化学は、n 1体の含有量における有意な量とは、具体的には「生成物たるフェノール性化合物が非結晶の樹脂の状態を維持する量」であるということができる」と主張するが、「実質的な量を含有すること」を「非結晶性であること」に置き換えたとしても、その技術的意義が明細書に記載されていないことは同様である。
4.エポキシ樹脂・フェノール樹脂の技術分野における技術常識の存否
新日鐵化学が主張しているような技術常識が存在していたとは認められない。
5.異性体混合物であるか否かについて
新日鐵化学の主張は、本件発明の主成分であるフェノール性化合物が特定の異性体混合物であることを前提としているが、この主張は採用できない。
6.進歩性・新規性の認定
上記各判断に基づいて知財高裁は、「新日鐵化学の本件発明に進歩性・新規性が認められない(従来技術から容易に相当できる)」という特許庁の特許取消審決に誤りがないと判断し、新日鐵化学の請求を棄却する。
7.SANARI PATENT所見
明細書記載の戦略性を示す判決である。記載内容の認定が「想到容易性の判断」に直結する。
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Patent Dispute、新日鐵化学、フェノール性化合物、エア・ウォータ、知財高裁、特許無効
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