2008年2月5日火曜日

Public Comment for JPO Innovation IP Policy

Public Comment for JPO Innovation IP Policy:JPO「イノベ-ションと知財政策に関する検討課題に対する意見」
弁理士 佐成 重範 sanaripat@nifty.com  Google検索SANARI PATENT
別サイト http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/ 2008-2-4 JPO Expects
Public Opinion

特許庁は、「経済のグロ-バル化は、知財システムのグロ-バル化を求める」、「米国を中心として特許権の訴訟リスクが増加している」、「イノベ-ションの高度化に伴い新知財ビジネスが現れる」などの趨勢に対処し、「イノベ-ションと知財政策に関する検討課題」(2008-1-23 :特許庁)に対する意見を公募している。       SANARI PATENTは、下記の意見を提出した。

 なお、3のKSR米国最高裁判決は、非自明性(進歩性)の判断において、先行文献・先行技術による教示・示唆・動機付け(TSM)テストを用いる場合の厳格性を緩和し、特許拒絶査定を容易にして、進歩性要件を高度化する方向性を有すると、SANARI PATENTは解する。
               
            記
 貴庁「イノベ-ションと知財政策に関する研究会 検討資料」(平成20年1月23日)に示されました検討課題のうち、「Ⅱ 透明性と予見性の高いメカニズムの構築」の「検討課題1 特許制度・運用の見直しの在り方」について

(意見)
  下記理由の内容を、標記検討課題に付加されますよう、要望申しあげます。
(理由)
1.「不確実な特許によるビジネスリスクの低減」については、「不確実」の意義、従って、「確実」の意義が明示されていないけれども、「付与された特許権が、審判・訴訟により無効とされる可能性」を「不確実」と称するとすれば、そのような「不確実」によるビジネスリスクは、原則として全て権利者が負担すべきものであること、および、そのような「不確実性」は、特許制度に本質的に内在するものであることを、権利者が十分に認識して権利を取得すべきことを、周知させる行政が先ず必要である。

2.すなわち、特許権は「発明の進歩性」を要件として付与されるが、進歩性には低度、中度、高度の段階差があり、これらが累積してイノベ-ション(高度の技術革新による社会経済の顕著な高度化)を実現する機能を有し、この機能の着想と公開を、独占権の付与により奨励する制度であることには、異議がないと考える。

3.そこで、「低度・中度の進歩性」に対しても特許性を認めるか、「高度の進歩性」に限定して認めるかの政策選択肢が課題となる。貴庁資料「米国特許政策・判例の歴史」が、アンチパテント時代のCuno最高裁判決が非自明性、すなわち、進歩性の要件を厳格化し、天才の閃きを要求したこと、Brenner最高裁判決が有用性の証明がない化合物の製造方法特許は認めないとしたこと、Benson最高裁判決が数学的アルゴリズムに特許性を認めないとしたことが列挙されており、またプロパテント政策適正化の現在(2006~2007)に向かって、Festo最高裁判決が均等論の適用を厳格化したこと、eBAY最高裁判決が侵害差止判断を厳格化したこと、KSR最高裁判決が進歩性判断を適正化したことが列挙されており、上記進歩性の程度に対する特許性付与の選択肢が、アンチパテント時代において高度化し、現在のプロパテント適正化時代においても、低中度から高度への指向が見られる。

4.一方、低度の進歩性に対しても特許性を認めることは、個人や中小・ベンチャ-企業の特許取得の機会を多くし、特許権の流通を活発化する契機となる反面、いわゆるパテントトロ-ルやパテントプロモ-タの、必ずしも適正といえない行動を惹起する。

5.更に、仮想的世界特許庁を指向して特許の制度と運用の調和を図る過程においては、貴庁資料指摘の「南北問題」が伏在し、上記3の選択肢の選択が各国の国益により左右される可能性が多い。

6.わが国を含めて、先進諸国においても、「審査・審判・裁判」の判断が相違する場合があることは、特許性の判断を主として「当業者」という仮想人格の判断に委ねる特許制度の本質に起因し、審査基準を更に緻密・論理的に構成しても「着想」という発明心理の構造を100%論理式化することは不可能である。審級別に「当業者」の判断が異なり得るところに、真の意味での「プロパテント制度」が存在すると考えるべきである。

7.日米ともに、「特許の質の向上」という指向が示されているが、「特許の質の向上」の意味は、「進歩性要件の厳格化」、すなわち、「高度の進歩性」に対してのみ、イノベ-ションへの直結的機能に鑑みて、特許を付与し奨励するものであることを明示すれば、明確に肯定できる。ただし、南北問題との調整は別論となる。
JPO、Public Opinion、innovation、アンチパテント、eBay

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